竹の加工技術の事例モデル

対象国
ミャンマー(アジア)
実施年
令和2年度
課題・原状

ミャンマーは世界第3位の速度で森林が減少しており、早急な対策が必要である。タケは森林周辺で育成されており、その栽培管理は住民参加型森林管理制度(コミュニティーフォレストリ―)との相性が良いと言われている。そのため、竹を利用したビジネスを展開することにより周辺住民の生計向上につながれば、森林の過度な利用圧が低減し、森林保全のインセンティブ強化につながるものと思われる。

ミャンマーの竹林面積はインド、中国に次いで世界第3位といわれ、豊富な竹資源に恵まれている。ミャンマーには約100種の竹が生育しているが、そのうちBambusa polymorpha Munro(現地名 Kyathaung-wa)やCephalostachyum pergracile Munro(現地名 Tin-wa)など18種が有用種とされる(FRI 2016)。また日常的に竹製品が利用され、地域毎に竹加工の技術をもつものが多い。

ミャンマー政府は、コミュニティフォレストリー制度下における参加住民向けに、竹の植林、管理、採集の技術トレーニング等を実施してきた。しかし、収穫した竹材の市場性の検討や支援までは十分になされておらず、実用的な日用品の製作にとどまっている。カゴ、ザル、ゴザ類の編組品の生産地は全国各地にあるが、その多くは、村落内や地域内の消費に向けたものである。「ものを入れる、載せる」といった最低限の機能があればよいとの認識で、品質基準等も存在しない。また、生産性が低いために生産コストを下げらない。

竹製品の生産過程で手間のかかる作業の一つは、竹ヒゴ作りである。竹は自然素材なので、個体によってサイズや形状がバラバラなうえ、中が空洞で加工部位が薄いため、機械化するのは容易ではない。ミャンマー国内の主要産地においては、竹製品の加工はすべて家内工業を主体とした手作業であり、世帯の男性が竹ヒゴを作り、女性が編組を行うというように、分担しながら並行して作業を行なっている。

また竹製品は虫害に遭いやすく、カビや腐敗により劣化しやすい。しかし、ミャンマーでは特段の対策はなされておらず、これも竹製品の品質が低い理由として挙げられる。

日本のナレッジを適用し生産性と品質の向上により、より収益性が高く、海外市場でも評価されるような製品の創出が可能と考えられる。ナレッジモデルとして、以下の3点を提示する。

使用した日本のナレッジ

  1. 竹工機械(竹剥ぎ機)の技術-竹かごの作りの効率化-
    日本の竹製品産業では、太平洋戦争の戦時下で徴兵による作り手不足が深刻となり、その解決策として手間のかかる竹ヒゴ作りの工程の機械化が行われた。丸竹分割機や竹割機、竹剥ぎ機などの竹工機械が開発され、その後、改良され実用化が進み所有する竹加工業者は多い。最近は需要が減って受注生産できる会社はごく限られている。竹工機械原理は比較的単純であり、途上国の機械技術でも対応可能と考えられる。
  2. 竹材の湿式法油抜き加工-竹工芸品の輝きー
    伐採した竹はそのままではカビや害虫によるダメージを受けやすく、時間や直射日光により褪色と劣化が進む。そこで、竹に含まれる油分(ワックス成分を油分と呼ぶ)を取り除き、耐久性を高める技術が油抜きである。油抜きは油分を完全に除去するのではなく、竹表面の汚れを落とし、布等で磨くことでツヤが増し、製品加工後に美しさが長持ちする効果もある。
  3. 竹材の防虫技術ー竹の耐久性をあげる-
    虫害、カビ、割れは「竹の三悪」とされる。竹材の防虫・防カビ技術は、伐採してから成形加工するまでの保管・輸送段階における生物劣化被害を低減し、さらに竹製品の寿命も延び、品質向上には重要な技術として探究されてきた。防虫・防カビ対策に係る知見は文化財保存にも適用され、産業界や文化・芸術分野においても研究が重ねられてきた。防虫・防かび技術は竹の収穫時期の調整、薬剤、熱処理などがあるが、目的によって使い分ける必要がある。
ナレッジ活用の効果
  • 手間のかかる竹ヒゴ作りが機械化され、竹細工の生産性が向上する。
  • 油抜きにより竹細工の材料の竹の表面が美しくよりなり(白竹という)、さらに耐久性が向上し、付加価値の高い製品を生産できる。
  • 防虫・防カビ対策により竹細工が長持ちする。
森林・住民への貢献・効果等
  • 途上国では生産性の低さが生産者の収益を高められない一因となっている例が多くみられる。竹工機械の導入により生産性が高まると、より収益性の高い森林ビジネスとして成長し、住民の生計が向上するとともに、森林の保全インセンティブにつながるものと考えられる。
  • 途上国の竹製品は実用性重視で美的センスに乏しいものが多い。そのため、国内富裕層向けや外国人観光客向けあるいは海外輸出といった付加価値が高い市場への参入は難しい。油抜き加工を導入すると、高い品質の素材を使った製品生産が可能となり、収益性が向上する可能性がある。
  • 防虫・防カビ技術を導入し、耐久性のある製品の生産につながり、海外への輸送時の劣化が避けられる。
ナレッジ適用の注意事項
  • 竹の種類判定や特性把握、現地での利用状況などが必要である。
  • 竹の稈(かん:幹の部分)の収穫は重労働で多くの地域で男性の仕事になっている。
  • 竹製品の種類によって油抜きの必要性や竹ひごの規格が異なることに留意する。
  • 竹は自然素材なので竹の種類や大きさにより素材の性質が異なる。各ナレッジを使いこなすには試行錯誤の経験も重要。
関連リンク
参考文献
Forest Research Institute(2016)Presentation at ASEAN Regional Workshop on Bamboo Utilization
調査・報告
特定非営利活動法人アジアクラフトリンク

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