ごあいさつ

20世紀中盤以降に起こった大規模かつ急速な熱帯林の劣化・消失は,地球規模での環境や生物種の保全に重大なインパクト及ぼしているばかりでなく、森林に依存し森林と共に暮らす人々の生活を脅かす深刻な問題となっています。そしてこの問題はまた、天然林から得られる木材・その他産物だけでなく熱帯林を転換して造成されたプランテーションや放牧地で生産される様々な農畜林産物を日々消費する人々にも倫理的な問いを投げかけています。

熱帯林を取り巻く状況が急速に変貌する現代にあって、保全すべき森林を保全する一方で、利用すべき森林を適切に管理し持続的に利用していくことは,熱帯林に直接関わるステークホルダーばかりでなく一般消費者にとっても避けて通る事ができない、人類共通の課題であると言えます。この事は取りも直さず、人類が直面する様々な現代的課題に対処するため2015年の国連サミットで合意された「SDGs=持続可能な開発目標」を達成することに他なりません。

当センターは、こうした地球的目標の実現に直結するこれら課題に取り組み、緑豊かな地球を、熱帯林と熱帯林が生み出す様々な「恵や富」を、世代を超えて引き継いでゆく事を基本理念として1991年に財団法人として設立されました。2012年からは公益財団法人として、一貫して、熱帯林の保全・再生に関する多くの調査・研究を行い、様々な技術・知見を蓄積、発信する共に、各種テキストの発行ならびに人材養成を積極的に進めまいりました。また、民間企業・団体がCSR/ESG活動の一環とし実施する植林事業にも積極的に取り組み、その植林実績は東南アジアを中心に約9,000ヘクタールに及んでいます。

一方で近年、森林の劣化・消失のホットスポットは熱帯雨林から乾燥や過湿がストレスとなる或いは苛烈な土壌条件が生物生産を制限する季節林やサバナ、湿地林あるいは砂質・岩石質土壌地帯などへ拡大移行しています。そして、こうした地域にあっても森林・樹木は住民の生計とその環境変動に対するレジリエンス、そして環境にとって欠くことのできない資源であり、その保全・再生の重要性に世界が注目しています。また、開発途上国における森林問題は貧困と深く結びついていることが多く、森林とその周辺で生産・採集される産物をどのように「富」に変換し、住民の生計向上に繋げることができるかという視点もまた森林の保全・再生の鍵である事が広く認識されるようになっています。

「樹木を植え森を育てるための現地適用可能な新たな技術開発」と、「森林関連産品から新たな富を生み出し地域住民に還元するためのバリューチェーン構築」の2つを調和的に実現させることで初めて森林問題の核心に迫ることができるといえます。

当センターは、時代と共に変化し続ける世界の森林問題の本質を理解し、その解決に向けた新しい取り組みを通じ、地域・地球規模での環境保全、地域住民の貧困撲滅への貢献を目指します。森林と共に暮らす人々、森林からの恵みを享受する人々が笑顔で繋がっていく世界が実現するよう、熱帯林問題のプロフェッショナル集団として、より一層力を尽くして行きたいと思います。