サチャインチの利用促進事例モデル

対象国
ペルー(南米)
実施年
令和3年度
課題・原状

ペルーの国土の約56%(約7,200万ha)は森林が占め、ペルー側のアマゾン盆地は、ブラジルに次いで第2位、世界でも第4位の熱帯林面積である(森林気候変動に関する国家戦略(ENBCC), 2016)。森林減少率は比較的低いといわれてきたが、近年の経済成長の結果、森林減少の脅威は急速に高まっている。農地や家畜放牧地への土地転用、非伝統的な焼畑農業、違法伐採、都市圏の拡大、森林管理能力の低さ等の原因により、2001 年から 2014 年までに約165万ha の森林が減少し、年平均約12万ha の森林減少が続いている。対象地のサンマルティン州はアマゾン地域の森林地帯にあり森林減少が著しい。

サンマルティン州のあるアマゾン地域とクスコ県のある山岳地帯は、雇用先が限定され、貧困層の割合が高い。地域の電力、上下水道などの基礎インフラは十分に整備されておらず、近年の経済発展の恩恵を受けられていない。原生林の違法伐採等で生計を立てる住民も多く存在する。砂金精錬で水銀を使用するので、健康被害や土壌・河川の汚染につながり、犯罪の増加といった社会不安も起きている。これらに替わる合法な生計手段の確保や地域で算出する産品の付加価値を高めるなどのビジネス展開が必要であり、森林の保全に向けた社会システムの構築が急務である。

アマゾンの熱帯雨林が原産のサチャインチの種子から搾るオイルは、オメガ3脂肪酸が多く抗酸化力が高いと近年健康食品として注目され、輸出量が増加している。現地ではアグロフォレストリーによる栽培も奨励され、植林とサチャインチなどの作物との混植により森林資源を確保し、二次林の皆伐による牧草地化を抑制することが期待されている。また、オイルを搾った粕はタンパク質が豊富な食材になるが、認知度が低く、利用が進んでいない。

ナレッジ活用型
  • 従来食品利用が芳しくなかったサチャインチのオイル搾り粕に、日本のナレッジを活用して、より使いやすい付加価値の高い食材を開発。これにより搾り粕の用途が拡大し、利用促進されるようになる。
森林・住民への貢献・効果等
  • サチャインチの付加価値が高まり、また、利用しやすくなると、需要が拡大し、新たにサチャインチ生産を始めるインセンティブとなる。アグロフォレストリーによる住民の収入が向上すると生活が安定し、違法伐採や水銀採掘なども減少すると期待される。
  • 日本のナレッジを活用して開発したサチャインチ食材・食品を観光客の集まるクスコなどで販売することで、サチャインチの流通が促進され、貧困率の高い生産地・販売地双方の住民の生計が向上につながる。これにより適正に管理されたアグロフォレストリーと過度な森林資源への依存が下がり、森林保全につながる。
関連リンク
調査・報告
オリエンタル・コンサルタンツ・グローバル

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