熱帯早生材の楽器への利用事業の事例モデル

対象国
タンザニア(アフリカ)
実施年
令和3年度
課題・原状

タンザニアは国土面積94.5百万 haで、そのうち約38%が森林と言われる。オープンエリアと呼ばれる森林保護区以外の森林(非保護区)は、地域住民による薪や木材の採取、農地開墾が自由に行われている。対象地のあるリンディ州ではゴマやカシューナッツなどの農業が盛んで、特にゴマは近年の価格高騰により従事世帯が急激に増えている。対象地のナンジリンジ村住民の収入はその大部分が農業によるものである。開墾地を求めた違法伐採も頻発し、オープンエリアの耕作地が慢性的に減少傾向にあり、地域産業と森林保全のバランスが崩れかねない状況と考えられる。

南部(リンディ州キルワ県を中心)にはFSC認証森林(コミュニティ森林がベース)があり、現地NGOによりアフリカン・ブラックウッド(ABW)を中心に持続的な森林管理とFSC認証材の取引が行われ、コミュニティが公的収益を上げる仕組みが成り立っている。しかし認証費用は高額で、その維持が課題である。またABWはクラリネットの原材であるが、その提供国は主にタンザニアを含む2国に限定され、将来にわたる継続的な入手は世界的な課題でもある。一方、対象地の住民とって、ABWは植林しても成長に長い年数がかかるため早期の収入が得にくい。このため、ABWを中心とした収益構造を変える、もしくは短期間で収入が得られる新たな有用樹種の導入が必要と考えられる。

アコースティックギターはアジアを中心に大きなシェアを獲得しており、インドネシア工場で生産するものは年間約100万本規模で出荷される。ギターのネック部材は、製品状態での高い寸法安定性が要求されるマホガニーの厚物材が使われ、近年は調達が課題となっている。ネック部材は取引材積が大きいため、継続的に材が供給できるサプライチェーンの構築が求められている。一方、熱帯産早生樹(トゥーナやニーム等)は世界各地で植林され、成長が早く、安定的に供給できる可能性があるが、楽器材として性能特性を満たすかは不明な点が多い。

ナレッジ活用型
  • 日本のナレッジを活用して、熱帯産早生材の諸課題が解決し、現行楽器(アコースティックギター等)の部材として利用できるようになる。
  • 新たな有用樹種の導入をすることで、住民はこれまでのABWを中心とした長期的なサイクルの収益構造に加えて、早生材による短中期的な収入を得て生計が向上する。
  • 住民の収入が安定することにより持続的な森林管理につながるとともに、世界的な楽器ニーズにも応えることができる。
森林・住民への貢献・効果等
  • 日本のナレッジを活用して熱帯産早生材のサプライチェーンが新たに構築されることにより、対象地住民は早生樹を育成するようになり、森林面積と資源が増加する。
  • 早生材を楽器材料により新たな収入源を得て生計が向上する。それにより農地への開拓圧が下げられ、森林の維持に資する。
関連リンク
調査・報告
ヤマハ

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