荒廃地における森林回復
過去数十年間にわたり、発展途上国を中心として森林の劣化・減少が続いています。国連食糧農業機関(FAO)の世界森林資源評価(FRA)2015によれば、2010年~2015年の5年間に毎年760万ヘクタールの森林が土地利用転換や山火事等の自然災害等によって減少したと報告されています。一方、植林や天然力により、毎年約430万haの森林が回復していますが、毎年約330万haの森林が純減少しているのが現状です。
森林が農地へ転換された後、適切に農地として持続的に利用管理されればよいのですが、森林が失われた後に問題土壌が発生し、耕作不可能地となってしまい、放置され荒廃地化する場合も多いのが現状です。また、乾燥気候下で森林が失われ、農業や牧畜業が行われると、土地の生産性が低下し、放置され荒廃地化する場合もあります。一方、鉱業によって消失する森林も問題となっています。
このように、増大する人口圧に起因する非持続的な農地開発等の結果、荒廃地が急増し、生物多様性喪失の危険性や水源涵養機能低下による洪水多発等の災害発生リスクも高まっています。このような荒廃地において、いかにして森林を回復するかが途上国のみならず地球規模での課題となっています。
また、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書、第3作業部会(気候変動緩和)によれば、最も費用対効果が高い緩和選択肢には、森林分野では植林、持続可能な森林経営及び森林減少の抑制があげられています。このため、気候変動緩和策としても荒廃地の森林回復は喫緊の課題となっています。