- 対象国
- カンボジア(東南アジア)
- 実施年
- 令和4年度
- 課題・原状
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森林減少
森林面積は1975 年に国土の73%を占めたが、2018 年には46.84%に縮小した20。その面積は1990 年の62.3%より、2020 年には45.7%と減少した(世界銀行)。2016 年時点での森林被覆は874 万ha、すなわち国土面積1,816 万ha の約48%であった。
薪炭利用と木材資源の利用圧
薪・炭への依存率は74.8%(2014年)と高く(2019~2023国家戦略開発計画(NSDP :National Strategic Development Plan)。薪はカンボジアで年間に260万トン、炭は350万トン消費される(UNDP)。
薪が縫製業やレンガ製造では大量にエネルギー源に使われていると分かった。縫製品は国の主力輸出産業であるが、縫製業はアイロンや洗濯等のために大量の熱(蒸気)を要する。レンガは建築用に5 億個以上の生産を要すが、レンガの焼成には850℃以上の熱が一般的に必要とされ、かなりのエネルギー消費を伴う。
また、60.9%の世帯が薪に依存して調理をしており、農村部に限ると薪を主な調理用燃料として利用する世帯は78.8%に上る。コンポントム州における調査でもガスが普及しておらず、住民は煮炊きを薪炭に依存せざるを得ないと確認した。
森林減少に加えて劣化が進むと、住民は生活に使用する薪を遠くまで探しに行く必要が生じ探す時間が増えたり、場合によっては薪や炭を購入して対処しなければならなくなる。また、コミュニティフォレスト内で違法に木が伐採され盗まれているという事態が発生しており、パトロールなどの対策が実施されているが難航している。
使用した日本のナレッジ
- ナレッジ活用型
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グラインドミルを導入してブリケットを流通させる
現地の企業や政府などのプロジェクト等で、グラインドミルを使い、製材所等でたくさん発生し処分を要するおがくずと、精米所で大量に発生して不要になるもみ殻を、50%ずつ混ぜ入れ固形燃料(以下、「ブリケット」と記載)を製造する。
本ブリケットは、薪相当の機能を有するが、大きさを一定に製造できるため薪よりも燃焼時間の管理がしやすい。また薪のようにぱちぱちと火の粉が出ないため、安全でかつ、薪のように熱量が一気に下がらずにとろ火の状態で数時間持続することで、投入量の削減が可能である。また木の伐採を伴うことなく作ることができる。
製造したブリケットは、企業などが自己消費に使用したり、付加価値のある商品としてかつビジネスが持続的になるように市場に流通させる。さらにブリケットに固める前の、投入バイオマスをすり潰した資源も家畜用のベッド利用等に販売できる。またグラインドミルはおがくずに限らず他の有機物資源を使って燃料を成型することも可能であるため、別の不要資源の混入によるブリケット製造も展開の余地がある。
- 森林・住民への貢献・効果等
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薪材利用圧の低減
薪ユーザーが薪をブリケットで代替あるいは併用する事で薪の必要・利用量を減らす。特に薪を多く消費する縫製工場やレンガ工場などの事業者がブリケット利用にシフトすることで薪材の利用圧が低減し、森林保全に資する。
住民の生計向上
薪の需要が低減することで、薪材調達のためにかけていた時間を低減することができる。また、薪への依存度が下がれば薪材採取のための違法伐採も減少することが期待され、パトロール等の負担も軽減される。こうして空いた時間をその他の生計活動に充てることが可能となり、生計向上が見込まれる。
- 関連リンク
- 調査・報告
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- JIFPRO
- 株式会社トロムソ
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