シナモン未利用枝葉材の堆肥化による持続可能なシナモン林経営モデルの構築

対象国
ベトナム(東南アジア)
実施年
令和5年度
課題・原状

ベトナムの森林率は近年42%に回復し、そのうち人工林面積は31%を占め、人工林の時代といわれている。人工林はアカシアなどの短伐期早生樹によるもので日本にも輸出されている。ベトナム北部の山地では近年、省政府がシナモン植林に注力するようになった。

一般に森林経営では保育期間中の収入確保が課題となるが、シナモンは若齢林のころから間伐木や枝打ちによる枝葉からシナモンオイルが抽出できるので、貴重な現金収入源となっている。シナモン林の主伐は10数年周期で行われ、材は建材や支柱、樹皮はシナモン香辛料、枝葉はオイルとして全木捨てるところがない。山村の住民にとって農地ほど手間がかからず、必要な時に現金化できるシナモンは地域の重要な林産物と期待されている。ただし、シナモン林経営は短伐期の全木集材である。シナモン生産が繰り返されると、地力低下による二代目以降の収穫量の減少が懸念されている。

使用した日本のナレッジ

バーク堆肥 ~林業残渣から堆肥を造る~

製材工場からでる樹皮や鋸くずなどの比較的分解しにくい木質有機物に鶏糞などの窒素資材を混合し、切り返しながら発酵を促し堆肥化するものである。日本では品質確保のための業界基準が用意され、農家や造園業、ホームセンターに流通している。最近の有機農業への関心の高まりのほか、土壌への炭素固定の効果からも注目されている。

ナレッジ活用型

シナモン林から幹、枝葉まで全体を収奪的に利用する林地管理方式から、シナモンオイル抽出後の未利用残渣によって作られたバーク堆肥を林地に還元することで、養分循環型の持続可能な経営に変えことができる。

森林・住民への貢献・効果等

林地土壌を保全しつつ低コストで堆肥を林地に還元する手法の検討などを進めつつ、持続可能なシナモン林経営を軌道に乗せることにより、天然林の保全にも貢献すると予想される。

バーク堆肥製造により住民の生計安定化を図るとともに、土地の荒廃を防ぎ、天然林への開発圧力を低下させることが期待される。

ナレッジ適用の注意事項

オイル抽出の未利用残渣に加えて灰を混ぜて堆肥化した。灰はミネラル分の還元となるが、必ずしも入れる必要はない。

堆肥化には窒素源を加えて炭素に対する窒素の比率(C/N)を高めることが必須である。窒素源は現地で入手できる安価素材がよい。今回は魚粉や牛糞等を混合した。

堆肥化が完了するには、切り返しと十分は熟成が必要で、日本では1年以上、熱帯でも数か月は必要である。

関連リンク
引用・参考文献
  1. 特定非営利活動法人 日本バーク堆肥協会 https://www.bark-compost.com/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%AF%E5%A0%86%E8%82%A5%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%BE%E3%81%A7
  2. バーク堆肥生産の変遷と現状.野瀬,光弘 森林研究 70: 69-76 https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030582517.pdf
調査・報告

日本森林技術協会

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