ナレッジ名称:木酢液-木炭製造の副産物を活用する-

ナレッジ概要

木酢液は木炭の製造時に発生する煙の一部を冷却してえられる液体である。木材を熱で分解する時に発生する酢酸などの有機酸、アルコール類やフェノール類を含んでいる。有機農業では農薬の代替または成長促進につかわれたり、民間療法として健康増進用などにも用いられてきた。製炭過程の副産物として比較的簡便に作ることができるが、製炭の方法や煙の採取時期により成分が大きく異なるので、製品にばらつきが生じやすい。日本ではかつては殺菌用農薬として登録されていたが、現在は失効しており、法律上、農薬としては販売できない。

背景(歴史・発展)

空気を遮断した状態で木材を加熱し分解することを乾溜(かんりゅう)といいう。この時に発生するガス成分を冷却した液体には酢酸などの有機酸類、フェノール類、アルコール類が含まれている。これが木酢液である。

木炭の製造は窯の入り口をふさぎ空気を遮断して炭化する。すなわち、炭焼きの煙には水蒸気と熱分解した成分が含まれている。煙を捕集し、冷却して液体になったものを集める。竹による竹炭製造でも同様に竹酢液が製造できる。木炭製造の副産物として比較的簡便に製造できるため、林産物の付加価値向上、副収入と期待され、道の駅などで販売されていることがある。

木酢液は植物の成長を促進する効果があると報告されている。また、消臭材や入浴剤としても販売されている。害虫忌避や殺菌効果もあり、かつては殺菌剤として正式に農薬登録されていた。しかし1979年に登録が失効しており、その後、登録は継続されず、現在は農薬取締法により農薬としては販売できない。

木酢液の製造は簡単であるが、注意すべき点がある。それは煙を捕集するタイミングである。炭を焼く過程で発生する有機成分は時間とともに変化する。それは木材の種類や焼き窯の形等の製造方法も影響する。適切なタイミングで捕集する必要があり、品質の良い木酢液を作るには工夫が必要である。

具体的技術(製法、作業方法、実施方法等の具体的なナレッジの方法)

伐採後2か月以内の広葉樹を炭窯に入れ、製炭初期に窯の煙突からでる煙を集め冷却して採取する。広葉樹1トンから200kg程度の木酢液が採取できる。冷却用の管は酸で腐食しないステンレスパイプがよいが、竹や木で代用できる。液の収集も耐酸性のあるホーロー容器や樹脂容器(ポリタンク)を使う。木炭製造の窯はいろいろあるので、方法にあわせて木酢液採取方法を工夫する必要がある。

煙の温度が80℃~150℃の定温で木酢液を採取することが推奨されている。窯が高温になるとリグニンが分解してベンツピレンなど発がん性成分が含まれる可能性があるので、煙を採取する温度に注意する。集めた粗木酢液を3~12月間静置すると、油分が上面に浮かび、溶解タール分が容器の底に沈むので分離しやすい。上部10%、下部10%を目安に残し、液の中間部分より無色の木酢液が得られる。

日本木酢液協会HP(https://www.nihonmokusaku.jp/faq/)より引用

ナレッジ活用事例

  1. 燻液:木酢液を蒸留精製した液を10~100倍に薄めて使う。食品添加物として認められており、食品の保存、酸化防止、殺菌、燻製食品の製造などに利用される。
  2. 消臭剤:木酢液は数十倍から数百倍に希釈して噴霧し、ゴミ捨て場、下水、トイレ等の悪臭防止に利用される。
  3. 畜産飼料配合:養豚、養鶏、養牛の餌に1%程度混合し、家畜の健康管理と肉質の向上につながるという報告がある。
  4. 病害虫対策:数十倍から百倍程度に希釈した液を土壌に散布しセンチュウを防除したり、葉面に散布しうどん粉病や葉ダニ類を防除する方法として使われている。ただし、製法によっては有害物質を含むことがある。現在、日本では農薬取締法に登録されておらず農薬としては販売できない。
  5. 入浴剤・美容:入浴剤やスキンケア商品として市販されている。
  6. 染料:鉄分が溶けた木酢液は天然染料として利用できる。

木酢液はさまざまな用途が提案されている。ただし、その中には科学的な根拠に乏しいものがあるので注意する。

日本における位置づけ・特徴

木酢液は国内の木炭の製造者が副産物として製造している。古い資料(2000年)であるが、日本国内の用途をみると、農業用が65%、続いて食品用14%である。

日本木炭新用途協議会による調査結果を基に作成

ナレッジの所有者・継承者および連絡先

日本木酢液協会

関連URL

日本木酢液協会 https://www.nihonmokusaku.jp/

引用・参考文献

  1. 炭やきの会(1991) 環境を守る炭と木酢液. 家の光協会
  2. 内村悦三・谷田貝光克・細川健次(1999) 竹炭・竹酢液の利用事典.創林社
  3. 農林水産省(2005) 農業資材審議会農薬分科会特定農薬小委員会及び中央環境審議会土壌農薬部会農薬専門委員会 第6回合同会合 配布資料 https://www.maff.go.jp/j/council/sizai/tokutei_noyaku/06/

その他

炭窯で炭を作っているなら個人でも始められる事業である。ただし、安定した効果を発揮させるには、製炭方法に合わせた煙の採取時間などを検討する必要がある。また、適切な利用方法についても指南したほうがよい。

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