ナレッジ名称:モミガライト-もみ殻や未利用有機物から薪や炭を成型する

ナレッジ概要

株式会社トロムソのもみ殻練炭製造機(Grind Mill)は、未活用のもみ殻を使用し、「モミガライト」と呼ばれる棒状のブリケット燃料を生産する装置である。もみ殻にはシリカ(ケイ酸)が豊富(約20%)に含まれているため、従来の同種の機械ではコア部品が簡単に摩耗して使えなくなってしまう。トロムソは造船産業の技術に基づいて部品表面に特殊な金属を使用し耐久性を高め、もみ殻を使用しても摩耗しにくい機械を開発した。モミガライトは住宅、商業レストラン、学校などで利用できるほか、災害時には代替燃料として利用することができる。また、産業用のボイラ燃料等に使用することで、事業所の二酸化炭素排出削減にも貢献できる。モミガライトは薪や木炭の代わりに使用できることから、煮炊きに薪炭を使う発展途上国では森林保全につながる可能性がある。鋸くずなど木質系有機物との混成して成型が可能であり、森林由来の未利用バイオマス資源の有効利用につながると期待できる。

背景(歴史・発展)

日本国内において、もみ殻は毎年約210万t発生していると言われており、その内の約80万tは未利用のまま産業廃棄物として処理されている。トロムソは未利用のもみ殻を活用することを当初の目的とし、「グラインドミル」の開発に至った。トロムソのある因島(広島県尾道市)の主力産業は造船業であり、かつては活況を極めていた。トロムソの母体企業も船舶向け熱交換器を製造販売していたメーカーであったが、因島における造船業の衰退や創業者の意向もあり、熱交換器の技術を活かした新事業展開をスピンアウトした。

具体的技術(製法、作業方法、実施方法等の具体的なナレッジの方法)

グラインドミルはもみ殻や鋸くずなどの木質残渣をすり潰し、圧縮成形・加熱工程を経て、固形化する装置であり、装置一台1時間当たり120kgの原料を固形燃料化することが可能である。歩留まりはほぼ100%で、原料120kgから固形燃料が約120kg製造される。圧縮成形工程により、固形燃料の体積は大きく減容し、対もみ殻比で約1/10になる。接着剤などは一切添加しておらず、燃焼時に有害ガス(NOxやSOx等)はほとんど発生しない。棒状のブリケット(固形燃料)のカロリーは約4,000 kcal/kgとなっており、薪とほぼ同等である。もみ殻等の材料は植物由来のため、新たな二酸化炭素排出はゼロであり、カーボンニュートラルな燃料といえる。

もみ殻加工は金属部品を早く摩耗させるが、「グラインドミル」は主要部品に特殊な表面加工を施しており、耐摩耗性は大幅に向上している。トロムソはこの特殊加工技術により競合他社への優位性を保っている。

今回の事業では、カンボジアで鋸くずなどの木質の未利用有機物をもみ殻と混合した材料を用い、グランドミルで固形燃料を製造した。木質有機物はもみ殻より多少水分含量が高かったが、15%程度に調整し、50%以内の混合率とすることで成形が可能であった。

グラインドミル(もみ殻固形燃料製造装置/もみ殻手動供給タイプ)

モミガライト(もみ殻固形燃料)

グラインドミルの主要部品(もみ殻加工部)

ナレッジ活用事例

日本国内では、農業法人の精米所や建設関連業者にグラインドミルが導入され、自社内や近隣で発生するもみ殻を利用し、燃料や農業資材へ変換されている。変換した資材は化石燃料の代替として自社内暖房設備や育苗用の培土として使用されている。経費削減を図るだけでなく、販売計画を策定し、もみ殻資材の利用と販売事業等として展開している活用事例が多い。

海外における事例としては、2013~2014年JICA中小企業事業・タンザニア国「もみ殻を原料とした固形燃料製造装置の導入案件化調査」、つづいて2014~2017年JICA中小企業事業・タンザニア国「もみ殻を原料とした固形燃料製造 装置の普及・実証事業」に取り組み、タンザニア国内の森林面積の変化や森林伐採により生じる諸問題も含めて調査を実施した。結果として、タンザニアでは薪材・炭利用の拡大に伴い森林伐採が進行している一方で、米の生産・消費が拡大しているので、グラインドミル(本ナレッジ) 1 台を導入すると、年間 180 トンの固形燃料が製造でき、同量の木炭を代替した場合、22.5 ヘクタールの森林を保全する効果があると試算された。加えて、現地で今後グラインドミル組み立てる事業や固形燃料製造事業が立ち上がれば、新たな産業・雇用の創生も期待できる。

日本における位置づけ・特徴

農家の担い手不足問題が加速していく中、若い世代が農業法人を設立し、高齢農家から稲作を集約的に請け負うといったケースが増えてきている。稲作の集約化により作付面積が増加すれば、比例してもみ殻発生量も増加する。現在ではもみ殻の野焼きは禁止されており、産業廃棄物業者にもみ殻処分費として年間100万円以上支払っているという農業法人も少なくないため、もみ殻の処理は大きな問題となっている。トロムソのグラインドミルを導入することで、廃棄物として扱われていたもみ殻を資源として活用し、固形燃料やすり潰しもみ殻(農業資材)へ変換する。これにより付加価値を付与し、これまで廃棄するしかなかったもみ殻に事業性を与えることになる。

近年は「気候変動や環境」に対する社会的な関心が高くなり、石炭火力発電といった化石燃料を常用する施設等への風当たりが強くなった。石炭とバイオマスとの混焼やバイオマス専焼発電が注目され、新たなCO2を排出しない「カーボンニュートラル」な燃料として、大手商社等からも、もみ殻等による固形燃料の引き合いが増えてきている。

ナレッジの所有者・継承者および連絡先

株式会社トロムソ

代表取締役 上杉 正章

電話: 0845‐24‐3344

E-mail: m-uesugi@tromso.co.jp

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