ナレッジ概要
EFポリマーは、エコフレンドリーポリマー(Eco Friendly Polymer)の略で、作物残渣を原料とした100%オーガニックの高吸水性ポリマーである。主な特徴として以下の点が挙げられる。
- 約1年かけて完全に土に還る(100%生分解性)
- 土壌の保水力と保肥力を向上
- 健康な土壌づくりと環境への配慮
- 栽培コストの削減と収穫量アップ
本来の利用方法は、水不足対策や農業生産の効率化を目的としており、干ばつなどの厳しい環境下でも安定した農作物の栽培を可能にし、持続可能な農業の実現に貢献できる。近年では、家庭菜園や園芸、造園、防災、土木など、様々な分野での利用も広がりつつある。国内外では農業分野を中心に、野菜(トマト・ニンジン・オクラ・タマネギ・ブロッコリ・セロリ)、畑作(馬鈴薯・大豆)や稲作など数多くの活用実績がある。
背景(歴史・発展)
EFポリマー社の創業者でEFポリマーを開発したナラヤンはインドのラジャスタン州の出身であり、村人数十人の小さな村で生まれ育った。一生懸命栽培しても、干ばつで全滅してしまい収穫が無い年もあるなど、家族や村の仲間達が苦労する姿を見ながら、科学の力でどうにか家族や村の仲間をたすけられないかと考えていた(図1)。高校生のころから、高吸水性ポリマーの保水力に着目するも、既存の製品が石油由来の化学品であることから、これでは農地を持続的に利用する事ができないと考え、自分で開発することを決心。高校、大学と基礎の研究を重ね、完全有機の高吸水性ポリマーの開発に成功した。この技術を実用化するべく、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のプログラムに応募し、単身来日。

OISTにて完全有機の高吸水性ポリマーの製造の基礎を確立し、2020年EFポリマー社を沖縄で設立、インドでの製造販売を開始した。日本においては、2021年より主に農業向けにEFポリマーの販売を開始している。
農業分野での効果が確認される中、2022年からは砂漠緑化や植林分野での利用の可能性が考えられ、内モンゴルの乾燥地帯での植林試験や国内での苗木栽培等の試験が進められている。
また、現在では、EFポリマーのアップグレードや新商品の開発のほか、新たな用途(日用品、化粧品など)におけるEFポリマーの利用に向けた研究開発も活発に行われている。
具体的技術(製法、作業方法、実施方法等の具体的なナレッジの方法)
ナレッジの特徴
EFポリマーは、これまで廃棄されてきた作物残渣を原料とした100%オーガニックの高吸水性ポリマーで、現在世界で(2024年10月時点、販売を開始している商品として)唯一完全生分解性を有する高吸水性ポリマーであり、有機JASおよび米国、欧州でのエコサート認証を取得している。
また、EFポリマーの利用による収量の安定、農作物残渣でのEFポリマーの製造など、持続可能な農業を通じた地産地消・地域資源循環モデルの形成を目指している点も大きな特徴となっている(図2)。

効果
EFポリマーを土壌に混和すると、EFポリマーが土壌中の水分を自重の50倍程度吸収し、土壌が乾燥すると水分を放出する。従来の石油由来の吸水性ポリマーと比べると、完全生分解性である点、さらに根の吸水作用を妨げない程度に強い水分保持力を持つ点が優れており、水ストレス環境下における作物・樹木の成長促進に効果的である(図3)。

使い方
農業においては、育苗の段階で培土に混合したEFポリマー入り苗のほか、圃場おいては、定植前にEFポリマーを散布・耕うんするなどして、土壌にEFポリマーが混合した状態とする方法や、定植時の植穴に少量添加する方法等がある。林業においても、苗木栽培、植穴への施用、埋め戻し培土への混合等の方法で苗木の活着をサポートする事ができる(図4)。
施用量や施用位置については、土壌の性質や作物・樹種によっても最適量が異なるため、予備試験等により最適量を確認したうえで、施用を検討する必要がある。

ナレッジ活用事例
農業分野では、日本、インドを中心にアジア・欧米各国にて利用がされている。事例としては、トマト、ニンジン、オクラ、タマネギ、馬鈴薯、ブロッコリ、セロリ、キャベツ、レタスなど多くの野菜で利用されているほか、畑作(馬鈴薯、大豆、サツマイモ、トウモロコシ)や稲作などでも数多くの活用実績がある。また、屋内外の緑化・園芸・造園等においても、水やり頻度の低減などの効果が確認され、利用が始まっている。
林業分野においては、苗木生産での利用、植樹時の施用などで試験的に利用が始まっている。
日本における位置づけ・特徴
日本では、干ばつ・水不足の問題が少ないように思われるが、近年の気候変動の影響で日本国内でも、これまで降雨があった時期に雨が降らない、夏場の異常な高温などの影響もある、各地で干ばつ・水不足の問題が発生している。また、農業・林業における人手不足や高齢化は深刻な問題となっており、水やりの労働力削減は大きな課題となっている。
そのような状況の中、EFポリマーの利用により、水やり労働力の大幅な削減、初期活着率向上や収量の増加等の効果が確認され、徐々に利用が広まっている。また、これまでも農業用、園芸等で土壌に混和する化学系の高吸水性ポリマーが市販されてきたが、それらは土壌中に長くとどまりすぎる事、または分解の過程でマイクロプラスチック化する懸念などもあったが、EFポリマーは1年で完全生分解するため、そういった心配がなく、また有機栽培においても利用可能な事が大きな特徴となっている。
また、既存の化学系の高吸水性ポリマーとコスト面でも同等の価格で販売する事ができる事や、地産地消化(現地製造)の可能性もあり、途上国等の農業・林業においても十分ROI(投資収益率)向上可能な取組と考えられている。
ナレッジの所有者・継承者および連絡先
EF Polymer 株式会社
関連URL
EF Polymer 株式会社: https://efpolymer.jp/
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