植林ポテンシャルエリア

途上国の植林基礎情報

途上国で森づくり活動を検討するにあたって、参考になる各国の情報(森林の概況、植林状況、植林している団体等)を、以下の通り整理しています。

はじめに

森づくり(植林)活動は、本来そこにあった森が人の活動によって失われた場所で、それを再生させるために行うものです。つまり、途上国での森づくり(植林)活動においては、樹木が生育できる最低限の気象・土壌等の条件を満たし、潜在的には森林が成立するはずだが、人為的な影響により、現時点においては森林が消失・劣化している場所で行われることが基本です。

例えば、乾燥度指数(=年間降水量/年可能蒸発散量)が0.2以下の、極めて厳しい乾燥地帯での砂漠緑化は、もともと降水量が絶対的に少ないため、植林しても森林として成立させることは難しく、地下水等で潅水を続ければ森林は成立するかもしれませんが、塩害によって土壌劣化が起きてしまう恐れがあります。土壌は、気候よりも狭い範囲で異なる環境条件ですが、例えば酸性が強い場所や固すぎる場所では、もともと樹木が生育できない可能性があります。何らかの対応策をとることで、こうした環境上の制約をクリアし、持続的に森林を維持できる可能性もありますが、本来森林が成立しないところでの森づくり(植林)は避けなければいけません。

他方、気候や土壌といった自然条件が森林の成立を許す場所ならどこでも森づくり(植林)が可能なわけではありません。すでに農地や放牧地等の森林以外の土地利用が行われている場所では、まずその場所を利用する地域の人々の合意を得てから、森づくり(植林)をはじめる必要があります。

ここでは、そうした基本的な考えにもとづき、森づくり(植林)活動を行う国(場所)を検討する際に、参考になりえる情報(Webサイト、論文、記事等)をご紹介します。

全世界の潜在的な森林再生可能なエリア

IUCN(国際自然保護連合)、WRI(世界資源研究所)とメリーランド大学が提供するWebサイト “Atlas of Forest Landscape Restoration Opportunities”では、全世界の潜在的に森林再生可能なエリアを明示しています。潜在的に森林再生可能なエリアは、図1のようなプロセスを得て、地図上で示されています(図2)。

図1. Atlas of Forest Landscape Restoration Opportunitiesの潜在的に森林再生可能エリアの抽出方法
(出所:Atlas of Forest Landscape Restoration OpportunitiesのWebサイトの説明を基に作成)
図2. Atlas of Forest Landscape Restoration OpportunitiesのWebサイト(Web上ではズームアップ可能)

他にも、Bastin et al. (2019)1が、このAtlas of Forest Landscape Restoration Opportunitiesと同じようなアプローチで、全世界を対象に森林再生可能なエリアを示しています。両者ともに言えることですが、砂漠が広がる厳しい乾燥地域に隣接するアフリカの赤道の北と南やオーストラリアの東側に、森林再生可能なエリアがあることが分かります。

図2 Bastin et al. (2019)で示された森林再生可能なエリア

また、全世界が対象ではないですが、熱帯雨林における森林再生エリアは、Brancalion et al., 20192でも示されています。近年は、こうした衛星画像による広域の森林再生可能エリアを示した報告(論文)やWebサイトが数多くみられ、どこの国で森づくり活動をしようかと検討する際には参考になります。

全世界の過去に森林減少があった場所

過去に森林減少があった場所は、潜在的に森林が成立する場所であり、森づくり活動の対象地域になり得ます。Global Land Analysis & Discoveryでは、2000年から2021年までの期間に森林減少があった場所を地図上で明示しています。図3を見ると近年はアフリカ中央部や東南アジアで森林減少が発生していることが分かります。森林減少地域は30m×30mの単位のピクセルで示されているため、地図をズームアップしていけば、森づくり活動を検討する国のどの場所で森林減少が発生しているかを、詳細に特定することができます。

図3 Global Land Analysis & Discovery で示された森林減少発生場所、発生年毎に明示、ズームアップ可能(出所:Hansen/UMD/Google/USGS/NASA)

この地図の作成にあたっての解析方法については、Hansen et al., 20133に詳細に書かれています。

気象情報や火災情報

全世界の降水量、火災発生地域、土壌のデータについては、下の通り、NASA(アメリカ航空宇宙局)やFAO(国際連合食糧農業機関)などが提供しています。

  1.  BASTIN, Jean-Francois, et al. The global tree restoration potential. Science, 2019, 365.6448: 76-79
  2.  BRANCALION, Pedro HS, et al. Global restoration opportunities in tropical rainforest landscapes. Science advances, 2019, 5.7: eaav3223.
  3.  HANSEN, Matthew C., et al. High-resolution global maps of 21st-century forest cover change. science, 2013, 342.6160: 850-853. https://storage.googleapis.com/pub-tools-public-publication-data/pdf/42119.pdf