モザンビーク共和国

アジア航測株式会社 社会インフラマネジメント事業部 海外プロジェクト部 海外技術課(2024年2 月現在)

I 森林概況

1 モザンビーク共和国の概要

モザンビーク共和国(以下、モザンビーク)は、アフリカ大陸南東部に位置し、国土面積は79.9百万ha(日本の約2倍)である(図1)、(林野庁, 2021)。

図1 モザンビーク位置図

気候は南部が亜熱帯圏、中・北部海岸線は熱帯圏、西北部マラウイ寄り地方は高原性の冷涼気候帯にある。季節は雨季と乾季があり、気温は雨季にあたる11月から3月にかけて26.6~29.4℃と高く、乾季にあたる4月から10月は18.4~20.2℃と冷涼になる。降水量は各年や地方による差が大きいが、一般的に年間降水量は、北部・中部地方がそれぞれ1,000~1,800mm、1,000~1,200mmと多く、南部地方は400~1,000mmと少ない(農林水産省)。

人口は約3,296万人で(世界銀行, 2022)、労働人口の80%が農業部門に従事しており、農村部における全農家の96%が小規模家族農家である。小規模農業従事者の多くは、低収入・低生産性の自給自足型農業を営んでいるため、農業収入は著しく低く、栄養状態が悪い(外務省, 2022)。モザンビーク憲法(1990 年)によって全ての土地は国の所有物であると定められているが、地域住民による森林資源の利活用は認められている。森林資源はキノコ類や蜂蜜の採取源や、薪炭材などの供給源として、農村部の地域住民にとって重要な役割を果たしている。モザンビーク政府は、持続可能な農村開発を促進するための戦略の一環として、地域コミュニティが慣習的に管理、利用する土地の明確化を進めている(林野庁, 2021)。

1 森林・林業の概要

モザンビーク政府は、森林の定義を「成熟時に高さ3mに達する潜在性のある樹木が、樹冠被覆率30%以上かつ、1ha以上のひろがりをもって分布する土地」としている。これには、一時的に伐採された森林区域や、土地利用の形態や継続性が森林の定義に類似する区域、また樹木の成長時に森林定義の要件(樹高3m、樹冠被覆率30%、最小面積1ha)を満たす可能性のある区域が含まれる(Government of Mozambique, 2018)。

モザンビークの森林分布を図2に示す(National Directorate of Forest(DINAF), 2020)。主な森林生態系はミオンボ林で、森林面積の約3分の2を占めている。ミオンボ林は、ブラキステジア属(Brachystegia)など近縁のマメ科3属の樹木が優占する中南部および東部アフリカのWoodlands の俗称で、アンゴラ、コンゴ民主共和国、ザンビア、タンザニア、マラウイ、モザンビークやジンバブエ等の半乾燥地帯から半湿潤熱帯地域(年間降水量:1000±数百mm)に、季節的な乾燥熱帯林(Seasonally Dry Tropical Forest)として成立する(大仲, 2017)。モザンビークにおいて、ミオンボ林は多くの貧困層が居住するザンベジア州、ナンプラ州、カボデルガド州を含む北部のいくつかの州の主要な森林植生で、地域世帯の現金収入の約2割、非現金収入の約4割を支えていると推定される (World Bank, 2018)。

その他の森林生態系としては、南部の海岸林、中央部のアフロモンタン林[1]、北部の海岸乾燥林など、国際的に生物多様性のホットスポットとして認められている森林、ならびに沿岸部にはアフリカで2番目に広いマングローブ林などが分布している(林野庁, 2021)。

図2 森林被覆図(2013年時点)(出典:DINAF, 2020)
図3 モザンビークの代表的な森林タイプ(出典:JICA, 2018)

モザンビークで利用されている主要な在来樹種は以下のとおりである(一般社団法人海外林業コンサルタンツ協会; Flora of Mozambique[2])。

  • Acacia nigrescens(Senegalia nigrescens)               マメ科
  • Afzelia quanzensis                                                マメ科
  • Albizia adianthifolia                                             マメ科
  • Albizia versicolor                                                  マメ科
  • Brachystegia spiciformis                                                     マメ科
  • Burkea africana                                                                   マメ科
  • Colophospermum mopane                                    マメ科
  • Dalbergia melanoxylon                                                       マメ科
  • Erythrophleum suaveolens                                    マメ科
  • Julbernardia globiflora                                          マメ科
  • Millettia stuhlmannii                                            マメ科
  • Newtonia buchananii                                            マメ科
  • Pericopsis angolensis                                            マメ科
  • Pterocarpus angolensis                                                       マメ科
  • Swartzia madagascariensis(Bobgunnia madagascariensis)  マメ科
  • Androstachys johnsonii                                                      トウダイグサ科
  • Balanites maughamii                                            ニガキ科
  • Bombax rhodognaphalon                                      パンヤ科
  • Cassipourea gummiflua                                                      ヒルギ科
  • Funtumia africana                                                キョウチクトウ科
  • Heritiera littoralis                                                 アオギリ科
  • Sterculia appendiculata)                                     アオギリ科
  • Sterculia quinqueloba                                           アオギリ科
  • Khaya nyasica(Khaya anthotheca)                                      センダン科
  • Morus lactealMorus mesozygia)                                      クワ科
  • Pteleopsis myrtifoliaTerminalia myrtifolia)     シクンシ科
  • Sclerocarya caffraSclerocarya birrea ssp. caffra)            ウルシ科
  • Syzygium guineense                                              フトモモ科

丸太と製材が主要な木材製品であるが、モザンビークでは、フローリング材やベニヤ、合板も生産されており、政府は木材加工産業の促進を図っている。2017年に製材生産量が大幅に増加したが(図4)、これは、原木輸出の禁止(Lei 14/2016)が実施されたことによると考えられる。モザンビークには、製材所や合板、ベニヤ、フローリング材工場がどれくらい存在するのか公式な情報はない。しかし、Muianga and Norfolkの調査では、160以上の製材所が確認された(Muianga & Norfolk, 2017)。また、世界銀行(World Bank, 2018)によると、モザンビークには約200の製材所があり、そのうち47%は小規模の工場と推定される(林野庁, 2021)。

図4 モザンビークの丸太と製材生産量(2014~2019年)(出典:INE, 2019; INE, 2020)

FAOの森林資源評価(FRA)によると、2020年時点の森林総面積は、36,743,760ha、その内、植林地面積は74,269haと推定される(FAO, 2020)。モザンビークは、サハラ以南の国では高い森林被覆率を有す国の一つであるが、森林減少率も高く、2010年から2020年の期間は、年平均22.3万haの割合で森林が失われた。CEAGREとWinrock International (CEAGRE and Winrock, 2016)は、モザンビークにおける森林減少の主な原因は農地の拡大であり、2000年から2012年の森林減少の原因の65%を占めていたと指摘する。その他の主な原因としては、都市の拡大(12%)、伐採(8%)、薪や木炭の生産(7%)が挙げられる。図5にモザンビークの森林面積の変化を示す(林野庁, 2021)。

図5 モザンビーク森林面積の変化(出典:FAO, 2020)

[1] アフロモンタン地域は、アフリカと アラビア半島南部の山岳地帯に生息する動植物種が含まれる生物地理的分布領域であり、地球上の8つの生物地理学的領域のひとつであるアフロトロピカルの一部でもある。アフリカのアフロモンタン地域は不連続で、低地によって互いに隔てられている。

[2] https://www.mozambiqueflora.com/


Ⅱ 植林関連基礎情報

1 森林林業に係る法制度概要

表1にモザンビークの森林管理に係る主な法令、規則等を取りまとめる(林野庁, 2021)。なお2023年12月に森林管理における基本法である森林・野生生物法が改正されており(森林法、Lei nr. 17/2023)、今後、関連する規則等が改正されると考えられる。

令/法令番号制定年説明
森林法・野生生物法(Lei nr.10/1999)1999年7月7日森林と野生生物資源の保護、保全、持続可能な利用に関する基本的な原則と規範を定める。
森林・野生生物規則(Decreto nr.12/2002)2002年7月6日森林・野生生物法の実施規則
Despacho de Regulamento da Lei nr. 10/99. BR 12/2004 Série I2004年3月24日森林および野生生物資源のインベントリ作成およびコンサルタントについて規定する
Decreto nr. 76/2011 da Lei nr. 10/99. BR 52/2011 Series I)2011年12月20日森林・野生生物法規則で定められた罰金を規定する
Decreto nr. 30/2012. BR 31/2012 Series I2012年8月1日シンプルライセンスと植林地開発に関する要件と条件を定め、植林地開発のインセンティブを規定する
Diploma Ministerial nr. 293/20122012年11月7日森林・野生生物法規則で定められた、森林や野生生物の資源へのアクセスや利用、国立公園や保護区での観光料金を更新する
Diploma Ministerial nr. 16/20172017年2月8日森林伐採と輸送に関する書類の様式を更新する
表1 森林管理に係る法令(出典:林野庁, 2021)

2023年12月に改正された森林法(Lei nr.17/2023)に基づき、モザンビークは森林を4つの機能区分に分類して、管理する(表2)。

森林機能区分定義
保全林 (Conservation forest)保護、保全、再生、研究を目的とする森林で、保護対象の区域内にある森林でマングローブ林を含む。
生産林 (Productive forest)持続可能な利用、環境保全機能およびサービス提供を目的とする森林で、保全林以外の森林。 森林開発コンセッションまたシンプルライセンスによる伐採権により利用することが可能である。
多目的利用林 (Multiple-use forest)保全区域外にある木材生産性の低い森林で、多目的に利用される森林
歴史的・文化的利用価値のある森林(forests of historical and cultural use and value)宗教的価値の保護の対象となる森林、神聖な森林、農村地域または親族の墓地、その他の歴史的に重要で文化的利用価値のある森林
表2 モザンビークの森林機能区分(出典:森林法Lei nr.17/2023)

天然林の伐採権は、森林開発コンセッションとシンプルライセンスによる2つの許認可に分けられる。しかし、2020年に森林開発コンセッションとシンプルライセンスの新規発行が停止されており、現在は既存の許可を受けた事業者による伐採のみが実施されている。

森林・野生生物規則(ANEXO I, Decreto nr.12/2002)において118樹種が商業樹種として指定されており、5段階(貴重種、第1種~第4種)に分けられる。商業樹種の内、以下の6樹種が国内外のマーケットにおける需要が高く多く伐採されてきた樹種である (Muianga & Norfolk, 2017)。

貴重種;Dalbergia melanoxylon
第1種;Afzelia quanzensisMilletia stuhlmanniiPterocarpus angolensisCombretum imberbeSwartzia madagascariensis(Bobgunnia madagascariensis

さらに改正された森林法(Lei nr.17/2023)は、植林目的を4つに再編した(表3)。今後、新たな植林区分毎に植林申請者の要件等が規定されると想定される。

植林区分定義
保全植林 (Conservation plantation)脆弱な生態系の保護、保全を目的とした植林
産業および商業用植林 (Industrial and commercial plantation)他産業への木材供給、商用目的の植林
教育および研究植林 (Edicaiton and research plantaton)林業教育、林業訓練、研究を目的とする植林
多目的利用林 (Multiple-use forest)地域の社会的・文化的利益の促進を目的とする植林
表3 植林事業区分(出典:森林法Lei nr.17/2023)

2 植林政策

2023年12月に改正された森林法は植林区分を再編しており、再編後の植林に関する施行規則等は整備されていない。このため以下に、2024年2月時点での改正前森林・野生生物法における植林規定の一部を紹介する。

  • 改正前の森林・野生生物法では植林を国土・環境保全の植林、産業および商用植林、エネルギー利用植林の3つに区分して管理した。
  • モザンビークでは、産業植林の許可をはじめ産業・農業開発等の許可を取得するには、土地利用権(Direitode Uso e Aproveitamento de Terra: DUAT)の取得が必要となる。森林・野生生物規則により造林の適格性基準が制定され、国土・環境保全目的の保全植林、産業および商用植林、バイオマスエネルギーを目的とした植林のそれぞれに分けて基準が設定された。DUATの所有者は、自家消費の場合を除き、それぞれの地域に存在する自然の森林や野生生物資源を利用するためのライセンスが必要となる。DUATは、保護区の全域と部分的な保護区を除いて、ほぼ全域で取得することが可能とされる。対象面積によって州知事(1,000ha以下)、農業大臣(1,000~10,000ha)、閣議(10,000ha以上)がそれぞれ発行する(Decretonr.30/2012)。
  • DUATの下、植林許可は、モザンビーク国内の法人や個人、地域コミュニティ社会が取得できる。外国の法人(モザンビークで設立または登記されている)や個人(モザンビークに5年以上居住している)も、政府機関に承認された投資プロジェクトがあれば、DUATを取得することが可能である。外来樹種の植林の場合には、さらに政府からの許可を得る必要がある。
  • 産業および商業目的、エネルギー目的での森林や野生生物の利用には、利用地域内の第三者のすべての権利を保護しなければならず、また、利用地域内の地域社会が生活に必要な天然資源を利用する権利を含めて、自由にアクセスできるようにしなければならない。森林・野生動物規則(第38条)に従い、植林地の伐採については、所有者は州レベルの森林管理行政を担う州環境サービス(Serviço Provincial do Ambiente:SPA)に対して申請を行う必要がある。その際には、植林地のライセンス番号、伐採対象の樹種および伐採量、伐採期間、木材の保管場所を示さなければならない。SPAは申請内容の審査を実施し、開発許可を交付する。許可証には、遵守しなければならない条件、並びに開発から生じる廃棄物の処理方法が含まれる(林野庁, 2021)。

3 中央政府機関

モザンビークでは、2019年10月のモザンビーク大統領選挙後に省庁再編が行われた。表4に2020年12月時点における国レベルの森林管理に関連する主な省庁、行政機関を示す。森林資源を所管するのは、土地・環境省(MTA)の組織である国家森林総局(DINAF)である。MTAのうち森林犯罪取締は国家環境品質管理機関(AQUA)が行う。また、ニアッサ特別保護区などの国家保護区や特別保護区の管理は保全地域国家管理庁(ANAC)が所管する。植林を所管する部署はMTAではなく農業・農村開発省(MADER)の国家農業・林業総局(Direcção Nacional de Agricultura e Silvicultura)である(林野庁, 2021)。

組織名森林分野に関する役割と責任
土地・環境省(MTA)森林分野の法令、戦略、政策、規則や手順の提案、作成と導入 年間輸出計画の承認 加工木材の税率を決定 木材輸出の監督 森林・野生生物インベントリおよび管理計画を策定するための森林コンサルタントの認定
国家森林総局(DINAF)MTA の機関 森林資源の持続的管理に係る規則や手順を策定 森林資源利用に係るライセンス発行、監督、管理、モニタリングを担当 林業活動のモニタリング 木材輸出の許可
国家環境品質管理機関(AQUA)MTA の機関 森林犯罪取締(森林管理・伐採、輸送、輸出)を担当
保全地域国家管理庁(ANAC)特別保護区等の管理
農業・農村開発省(MADER)農業と林業に固有の政策、戦略、法律の開発、実施、監視、評価を確保する。 保全、エネルギー、商業、産業目的での植林を促進する。
表4 モザンビークの森林管理(主に植林)に係る中央政府機関(出典:林野庁, 2021)

4 地方政府機関

モザンビークの地方行政は、10州と首都(州に相当)に分かれ執行される。2019年10月のモザンビーク大統領選挙後に地方行政・組織の枠組みの改変が行われ、州レベルにおける森林行政体制に関して変更が図られた。選挙で選ばれる州知事に加えて、各州に国の機能を遂行することを責務とする州国務長官(Secretário de Estado na Província)を大統領が任命し、その下に州環境サービス(Serviço Provincial doAmbiente:SPA)が新たに設置された(Decreto nr. 63/2020)。州知事のもとには、州土地開発・環境局(Direcção Provincial de Desenvolvimento Territorial e Ambiente: DPDTA)が配置された。

州レベルの森林行政はDecreto nr. 63/2020に基づき、州国務長官の下でSPAが伐採、木材製品の輸送および輸出の許可と関連文書準備を含む州レベルの森林関連業務全般を担うことになっている。州レベルの主な森林業務は以下のとおり:

  • 森林管理計画の審査
  • 伐採ライセンスの発行
  • 木材輸送許可証の発行
  • 検査所での輸送木材検査
  • 木材加工場の登録
  • 木材製品の検査と植物検疫証明書の発行
  • 輸出コンテナ梱包の監督
  • 輸出許可証の発行

州の下の郡レベルでは、郡社会経済活動サービス(SDAE)が森林管理に関する普及活動などを実施する。

Ⅲ 植林ポテンシャル

1 モザンビークにおける植林の現状


2006年国家再造林戦略(MINISTÉRIO DA AGRICULTURA, 2006)では、早成樹を対象とした植林可能区域がソファラ、マニカ、ザンベジア、ナンプラ、ニアッサの各州で、合計7百万haあることが示された(ここで7百万haにカボデルガド州とテテ州は含まれていない)。さらに2009年再造林戦略(MINISTÉRIO DA AGRICULTURA, 2009)では2030年までに1百万haの植林目標が掲げられるとともに、年間降水量1,000mmを基準とする早成樹の植林可能エリアが示された(図6)。植林可能エリアは環境要因(降水量)に基づき主に北部、中部地域に偏在している。植林可能エリア以外でも産業および商用などの市場ニーズがあれば植林可能である。

図6 潜在的に森林回復(植林)可能なエリア(出典:MINISTÉRIO DA AGRICULTURA, 2009)

近年では、ニアッサ州、ナンプラ州でマツ、ユーカリを中心とする産業造林についてノルウェー、フィンランド等の会社による植林(投資)が見られる。植林地総面積の推移を図7に示す(FAO, 2020) 。2020年現在でモザンビークの植林地総面積は約74千ha程度である。これは2000年の植林地総面積38千haと比較して拡大傾向にあるが、2009年再造林戦略の目標である2030年で植林地総面積1百万haを達成するために十分とはいえない。主要な植林樹種であるユーカリはバイオマス燃料用、マツは産業用(製材用)として主に植林されている。

図 7 植林地総面積の推移(出典:FAO, 2020)

2 モザンビークにおける植林の課題

ニアッサ州森林管理計画(MTA and Niassa SPA, 2023)を参考に、モザンビークの植林に係る課題を整理する。

  • モザンビークではこれまで植林が一般的に広く行われてこなかったことから、植林に係る知見の集積が重要と考えられる。適切な樹種と効率的な生産技術の導入は、木材生産能力を向上させる鍵であり、実験的な植林地での試みが必要とされる。また主要な森林生態系であるミオンボ林では、狩猟や農耕、牧畜を通じた火入れや偶発的に発生する森林火災が多く、これらの火を通じた攪乱が遷移や個々の樹木の進化成長に重要な役割を果たしてきた。植林地における森林火災対策や、植栽木の森林火災の影響等についても知見を集積するとともに、森林火災対策についても考慮することが必要と考えられる。
  • 森林を含むすべての土地が国有地であり、植林活動による土地利用ついても土地利用権(DUAT)や植林許可など多くの許認可手続きが求められる。許認可手続きは、利用面積によってDUATの許認可権者が異なることや、植林許可においては外来樹種の植林有無によって政府からの許可を求められる等、煩雑である。これらの煩雑な手続きは、植林活動を開始するうえで大きな障壁になると考えられる。一方で、政府機関からの植林活動の許認可を得ることで、その後の活動、関係者協議等が推進できると期待される。
  • すべての植林地は、土地の長期的な利用を保証するためのDUAT(土地利用権)を取得しなければならないが、DUATが同一箇所で重複して発行される事例もあり、土地の利用をめぐる混乱や紛争につながることが懸念される。
  • 植林地内での違法伐採、違法炭焼き、植林地内の保護すべき河川沿いでの農作業に対して、行政検査官が効果的な措置をとらない。政府職員の能力不足があり、法律に対する理解も不十分である。また、国立環境品質管理庁(AQUA)は法規制に関する適切な情報を提供しておらず、違反者への制裁適用に重点を置いている。

Ⅳ 植林を実施している民間企業・NGO

1 植林を実施している民間企業・NGO

モザンビークで活動する邦人関係者は多くない。これは日本からの移動時間・旅費コスト等とともに、公用語であるポルトガル語によるコミュニケーション能力の必要性等が障壁になっていると考えられる。一方で、国際ドナーの基金等を利用したプロジェクトベースで国際NGOやモザンビーク現地NGOによる植林活動は複数確認することができる。

表5にモザンビークでの邦人関係者による植林活動等を示す。

団体概要活動エリア
Manaky Lda調査およびコンサルティングサービス、REDDほかマプト州、テテ州ほか
日本植物燃料(株) Nippon Biodiesel Fuel Co. Ltd.再生可能エネルギー・農業・金融カボデルガド州
JICA2010年からモザンビークの森林保全やREDD+に関する技術協力プロジェクトや無償資金協力を実施。2019年からは「持続可能な森林管理およびREDD+プロジェクト」を実施中。(植林は実施していない)全国

表5 モザンビークで植林を実施している民間企業や団体

また表6に国際NGOおよびモザンビーク現地NGO等によるモザンビーク国内の植林活動等の事例を示す。

団体概要活動エリア
WWF (World Wildlife Fund)森林保全ほかイニャンバネ州、ザンベジア州、ソファラ州ほか
WCS (Wildlife Conservation Society)森林保全および森林再生活動ほか https://mozambique.wcs.org/  ザンベジア州、ニアッサ州ほか
EDENマングローブ林の森林再生 https://www.edenprojects.org/our-work/mozambique 様々な企業の参画が見られる(例:Sovena(https://soneva.com/sustainability/mozambique-forest-restoration/)、Ecologi(https://ecologi.com/projects/reforestation-projects-in-mozambique#)、URTH(https://urth.co/pages/mozambique、Tree Sister(https://www.treesisters.org/post/introducing-our-planting-project-in-mozambique))マプト州
Blue Forest100万本のマングローブの植林計画(対象エリアは185千ha)で、200千tCO2削減を目指す。 https://amaghanaonline.com/2022/02/09/mozambique-blue-forest-launch-africas-largest-mangrove-restoration-project/ソファラ州、ザンベジア州
Centre for Sustainable Development of the Coastal Zonesリンポポ川周辺の集落のマングローブ苗木生産、植林、モニタリングを支援。 https://www.naturebasedsolutionsinitiative.org/news/flood-recovery-and-mangrove-reforestation-in-mozambique/ガザ州
表6 国際NGOおよびモザンビーク現地NGO等による植林活動の事例

2 二国間クレジット

モザンビーク国におけるVCS(Verified Carbon Standard)の森林プロジェクト(植林・REDD)の取組み状況を示す(https://registry.verra.org/app/search/VCS/All%20Projectsを参照)。2024年2月現在で5件が確認でき、そのうち3件が登録完了済みであることが分かる。

プロジェクト名プロジェクトIDプロジェクト申請団体実施地域分野面積 (ha)申請の進行状況
Yambone REDD+ Project https://registry.verra.org/app/projectDetail/VCS/31424966Carbon Sink Group s.r.l.NiassaREDD665,524Under development
Blue Forest & Mozambique: Building Africa’s Largest Mangrove Restoration Project https://registry.verra.org/app/projectDetail/VCS/31423142Blue ForestSofala, ZambeziaARR, REDD183,000Under development
Agri-SMART: Sustaining a resilient and inclusive development in Zambezia https://registry.verra.org/app/projectDetail/VCS/24852485Carbon Sink Group s.r.l.Nampula and SofalaALM874Registered
Revegetation with fruit Trees in North Manica Province, Mozambique https://registry.verra.org/app/projectDetail/VCS/20852085Agrimoz S.a r.l.North Manica ProvinceARR698Registered
Gilé National Reserve REDD Project https://registry.verra.org/app/projectDetail/VCS/16741674National Mozambican Public Agency for Parks and Reserves Conservation (ANAC)Zambezia provinceREDD1,000Registered
表7 モザンビークにおけるVCS取り組み状況

Ⅴ 植林に関する参考資料リストおよび参考文献

  • CEAGRE and Winrock. (2016). Identificação e análise dos agentes e causas directas e indirectas de desmatamento e degradação florestal em Moçambique.
  • DINAF. (2020). Atlas of Mozambique Forest Resource Reference Map 2013.
  • Falcão, M. P., & Noa, M. (2016). Definição de Florestas, Desmatamento e Degradação Florestal no âmbito do REDD+.
  • FAO. (2020). Global Forest Resources Assessment 2020 Report Mozambique.
  • Government of Mozambique. (2018). Mozambique’s Forest Reference Emission Level for Reducing Emissions from Deforestation in Natural Forests.
  • INE. (2019). Statistical yearbook 2018.
  • INE. (2020). Statistical yearbook 2019.
  • JICA. (2018). モザンビーク国REDD+モニタリングのための持続可能な森林資源情報プラットフォーム整備プロジェクト業務完了報告書.
  • MINISTÉRIO DA AGRICULTURA. (2006). Estratégia National de Reflorestamento.
  • MINISTÉRIO DA AGRICULTURA. (2009). Estratégia para o Reflorestamento.
  • MTA and Niassa SPA. (2023). Provincial Iintegrated Forest Management Plan 2023 – 2032.
  • Muianga, M., & Norfolk, S. (2017). Investimento Chinês no Sector Florestal Moçambicano.
  • Potapov, P. L. (2011). Global map of forest landscape restoration opportunities.
  • World Bank. (2018). Mozambique Country Forest Note.
  • 一般社団法人海外林業コンサルタンツ協会. (2013). 2013年版開発途上国の森林・林業.
  • 外務省. (2022). 対モザンビーク共和国事業展開計画.
  • 大仲幸作. (2017). ミオンボ林の現状と保全に向けた課題.
  • 農林水産省. (日付不明). モザンビーク農業の現状.
  • 林野庁. (2021). 「クリーンウッド」利用推進事業のうち海外情報収集事業上巻.