ヒマラヤイラクサ繊維のビジネスモデルの概要

カーペットの原料として用いられてきた軽く丈夫な天然繊維を、地域住民の手によって加工してオリジナリティある手工芸品として販売するビジネス

現状

ネパールでは古くからヒマラヤイラクサの茎皮から得られる軽くて丈夫な繊維を利用している。同国ではヒマラヤイラクサから紡績した糸の85~95%が輸出用のカーペットに用いられているが、カーペットの輸出量は減少の一途をたどっている。

ネパールの森林減少・劣化の主な要因は放牧、木材伐採、薪炭材利用などが挙げられており、1980 年代より、コミュニティフォレスト(CF)政策を開始している。一方でCF下の利用制限で住民がより貧困になる例も報告されている。

課題

カーペットに代わるヒマラヤイラクサ繊維の新しい用途の開発が必要である。バッグなどの工芸品の収益率は高く、住民の収益を上げることができるが、求められる商品レベルは高い。また、同国ではヒマラヤイラクサ糸の潜在的生産量の半分程度しか生産されていない。加工過程での問題としては、まず茎皮を灰で煮るのに莫大な薪の量を使用することが、森林減少・劣化の一因となっている。また、糸を紡ぐのに使われる簡素な手作りスピンドルは、熟練と長い作業時間を要する。糸の安定供給のためには、紡ぎ車が必要である。

解決案

第一に、カーペットの需要減を補う新しい商品開発が必要である。軽くて薄いカーペット、また玄関マットなどの小型の敷物などが可能性のある商品だ。また、他の素材との混紡糸も新しい感触の素材として可能性がある。他に、地域ごとに特徴のある織地をソファやクッションに利用したり、バッグなどの工芸品の開発なども考えられる。嗜好・認知・流通などの課題を克服できれば、日本での市場開発も可能だ。

第二に、生産エリアごとのビジネスモデルの提案が必要である。例えば、カーペット用に繊維・糸を販売していたが純利益が低い地域では、機械紡績で大量生産が可能な混紡用の繊維販売を提案する。そして糸販売が主流の地域では、新デザインの薄いカーペットや敷物を住民自ら製造し、付加価値を付けて販売することを提案する。

最後にNGOや企業の関与が必要である。デザインが先進国の消費者に訴求するものでないと商品価値が生まれないため、日本のNGOや企業が糸生産者とデザイナーなどの懸け橋となるべきである。また、企業の担当者よりも現地のことを熟知するNGOが生産地に行った方がうまくいくことが予想されるため、企業とNGOが業務提携を結んで各々の強みを生かすことが必要だ。

波及効果

住民による付加価値商品の生産、フェアトレードなど販売ルートの開拓によって生計向上を図ることはCF政策の維持・推進にも重要である。また、ヒマラヤイラクサから得た収入の一部をコミュニティフォレスト制度の管理基金にプールすることで、持続可能な森林経営に貢献できる。その他、ヒマラヤイラクサの刈り取りは森林火災の防止につながると言われている。

詳細

ビジネスモデルの詳細については、下記リンクからご覧ください。