泥炭地産木質バイオマスのビジネスモデルの概要

泥炭地火災の防止及び荒廃した泥炭地の修復のため、在来種を用いた地域住民参加型の人工林造成を通して、木質バイオマスを生産するビジネス

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現状

インドネシア国内には、1千5百~2千万haの泥炭地が存在しており、そのうち約6百万haは、産業植林やオイルパーム等の農園事業地として適しているとされている 。このため、近年、泥炭地の開発が進み、それに伴う森林減少・劣化ならびに泥炭地火災による温室効果ガスの排出及び煙害が国際的に大きな問題となっている。気候変動の緩和・適応、生物多様性保全の観点から、泥炭地火災の防止ならびに荒廃した泥炭地の修復が喫緊の課題となっている。

課題

泥炭地における森林減少・劣化及び泥炭層の喪失の原因の一つに、乾期における泥炭の乾燥化と火災が挙げられる。泥炭地では、地域住民による農業並びに企業による産業植林、オイルパーム及びゴム等のプランテーション栽培のため、排水用の水路が設置される。その結果、乾期における泥炭地の乾燥が進み、泥炭地火災が多発する。劣化した泥炭地では、林冠による被覆が失われ、直射日光により泥炭土壌が乾燥し、さらに燃えやすくなる。この悪循環を防止するために、泥炭地において持続的な森林経営方法を確立することが求められている。ただし、泥炭地は酸性かつ貧栄養で地下水位も高く、植物の成長に向かない。このため、適応する樹種は限られており、その生産性も低いことが課題である。

解決案

既存の泥炭地における産業植林事業では、排水路を切って排水を実施し、アカシアやユーカリ等の早成外来樹種を用いて事業を実施している。本泥炭地産バイオマスのビジネスモデルでは、生物多様性配慮の観点から在来の樹種に限定するとともに、泥炭地保全の観点から極端な排水を必要とせず、高水位の泥炭地でも生育可能な以下の樹種を検討した。

  1. シクシン科のTumih (Combretocarpus rotundatus、以下、トゥミ)
  2. オトギリソウ科のGerunggang (Cratoxylum sp.、以下、ゲロンガン)
  3. フタバガキ科のKahui (Shorea balangeran、以下、バランゲラン)

また、森林火災の防止のためには、地域住民が人工林の地上権を持つことにより、私有財産を保護するというインセンティブが働くことが重要である。そこで、泥炭地において、地域住民がオーナーシップを持って人工林を造成し、木質バイオマスを生産し、それを企業が買い取るという、買い取り方式による人工林経営ビジネスモデルを検討した。

上記3樹種の人工林経営収支を試算した結果、現地で産業造林として成立している外来早成樹のファルカタ(Paraserianthes falcataria)と比較して、成長量が劣ることから、ビジネスとしては採算性が低いと示唆された。しかしながら、気候変動の緩和・適応、生物多様性保全の観点上、泥炭地火災の防止ならびに荒廃した泥炭地の修復は極めて重要課題なので、インドネシア政府は、造林補助金等の公的資金を投入してでも、上記ビジネスモデルを推進する必要があると考える。

波及効果

この泥炭地産バイオマスを利用した持続的な人工林経営ビジネスモデルは、環境面では、泥炭地の保全・森林修復を通した気候変動の緩和に貢献するものである。また、政府による造林補助金があれば、初期投資費用の負担が軽減され、企業利益及び住民生計向上にも寄与する。

詳細

ビジネスモデルの詳細については、下記リンクからご覧ください。