マイテュー白炭

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原料となる植物

学名
Cratoxylum cochinchinense
Cratoxylum formosum
Cratoxylum pruniflorum
一般名
マイテュー
樹種概要

マイテューは、ラオスの現地語(ラオ語)で、オトギリソウ科オハグロノキ属のCratoxylum cochinchinenseCratoxylum formosum 及びその亜種のCratoxylum pruniflorumを指す総称である。

東南アジア地域におけるオハグロノキ属(Cratoxylum)は、木材貿易上、比重の軽いGeronggangと呼ばれるグループと比較的比重の高いDerumと呼ばれるグループの2つに区分される。Geronggangは、パーティクルボードやパルプの原料として適しており、貿易の対象となっているが、Derumは資源的にも少なく、商業取引の対象となっていないとされる。ともに、地元住民の建築用の原料となっているほか、薪や木炭の原木としても使用されている。

マイテューは、Derumに区分されており、広く東南アジアに分布し、樹高が30-40m、直径が50-60cmに達する高木で、若葉はピンク色、花は白か赤みがかったピンク、まれに紫色で、6枚の花弁からなる。河川沿いの森林のほか草原や斜面地形のところに出現する。

ラオスでは、マイテューは、日当たりのよい乾いた斜面で旺盛な成長を示しており、根萌芽を含む萌芽更新による再生が可能である。成長の早いところでは、5年程度で根元径が5-10cmになり、木炭の原木としての利用が期待できる。木炭の原木として、主に利用されるのは、樹幹から堅いトゲの多いCratoxylum pruniflorumである。

産品の特徴

用途
薪、木炭、庭園樹
産地
ミャンマー、中国南部、ベトナム、カンボジア、タイ、ラオス、半島マレーシア、インドネシア
産品概要

マイテュー白炭は、国内産白炭等に比べて火力は劣るものの、他の海外産の白炭と比べて、爆跳(木炭内に閉じ込められた水分や揮発成分が爆発すること。木炭の破片により負傷する危険がある)性が少なく、また比較的安価であるという特徴がある。

日本の白炭の生産動向

日本の木炭の生産動向は、担い手の高齢化、原木資源の不足により、長期的に減少傾向にある。

白炭は、平成17年の生産量3,779トン(100)が平成25年には3,215トン(85)に減少しており、平成25年の生産量のうち、和歌山県、高知県、宮崎県の3県で、85%を占めている。

なお、黒炭については、平成17年に14,476トン(100)の生産量があったものが、平成25年には8,004トン(55)まで大きく減少しており、平成25年の生産量のうち、岩手県と北海道で64%を占めているものの、白炭のように生産地域が集中していない。

日本の白炭・黒炭(天然木炭)の輸入動向

白炭・黒炭の日本への輸入量は、近年ほぼ横ばいないし減少傾向で推移してきているが、その輸入先についてみると、大きく変動している。白炭の日本への供給国であった中国が2004年、2005年に天然木由来の木炭の輸出禁止措置を講じ、2010年以降輸出規制が強化されたため、2008年に中国からの輸入が21,805トン(100)あったものが、2014年には6,950トン(32)まで大きく減少した。このため、東南アジアからの木炭の輸入が増加したが、とりわけラオスからは中国産白炭の代替材としてマイテュー白炭の輸入が2008年774トン(100)が2015年には6,267トン(810)と約8倍の伸びを見せた。

注)木炭の輸入量は、黒炭・白炭を合計した数字である(財務省貿易統計による)が、輸入事業者からの情報により、ラオス産はほとんどが白炭と見込んだ。

また、ユーカリ白炭の輸入も試みられてはいるが、爆跳性、火力、臭い、安定供給、価格等の面から、輸入が本格化するまでには至っていない。

日本における白炭の需要動向

  1. 需要者
    白炭の主な需要者は、焼鳥店、ウナギ屋などの炭を使用する外食店が主であるが、次のように区分できる。
    1. 炭をあまり使い慣れていない者が焼き手となる外食店は、火力をそれほど求めず、爆跳性のないマイテュー白炭を好む。
    2. 炭の扱いに慣れている外食店は火力の強い国産や中国産の天然木由来の木炭やオガ炭を好む。
    3. ブランドイメージを重視する外食店は国産を使用する。
  2. 価格
    産地別に、白炭の価格には大きな開きがあり、木炭業界紙の記事では、和歌山県産ウバメガシ白炭を100とすると、中国産白炭49、ラオス産マイテュー白炭36、ベトナム産ユーカリ炭35となっており、輸入白炭は、国内産の約1/3から1/2程度の価格となっている。
  3. 見通し
    白炭については、産地別に需要の棲み分けが一定できており、マイテュー白炭はまだ日本市場の中で十分知られておらず、中国産白炭の需要の停滞とも相まって、今後も需要の伸びが期待できる。

今後の展望と課題

白炭については、中国を含む開発途上国には需要がほとんどなく、現在のところ、日本及び韓国が主な輸入国となっている。日本及び韓国では今後とも一定の需要が期待できるが、一方、白炭の生産に関しては、国産、中国産とも減少傾向にあり、マイテュー白炭がこの代替材料として将来とも安定的に事業継続を図っていけるかについて検討が必要である。

ラオスにおけるマイテュー白炭の生産は、原木生産は農民、白炭生産はラオス系企業・中国系企業等が行い、ラオスの法令・諸規則において、村や森林関係部局等が許認可等を担当する中で実施されている。しかしながら、マイテュー白炭の持続的生産について、官民の関係者が情報を共有し、マイテュー白炭の将来を見据えて取り組んでいこうとする体制づくりは進んでいない。特に、原木の賦存量の把握や確保方策については、何ら対策が講じられておらず、農民を含めた原木の育成確保方策を検討し、森林の持続可能な経営の推進に貢献していくことが必要である。

参考情報
  • PROCEA 1994:Plant Resources of South-East Asia No5(1)Timber trees:Major Commercial timbers p143-p150
  • 平成27年度 途上国持続可能な森林経営推進事業 事業化可能性調査
    マイ・テュー白炭 報告書(平成28年1月)株式会社 恵山通商
  • 財務省 貿易統計
  • 農林水産省 特用林産物統計調査
    http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tokuyo_rinsan/index.html
  • 海外の森林と林業 No80(2011)「ラオス産木炭、特にマイテュー白炭について」
    圓谷浩之(公財)国際緑化推進センター
  • ラオス国別援助検討会報告書 1998 国際協力事業団

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