ユーカリ材

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原料となる植物

学名
Eucalyptus camaldulensis Dehnh.
Synonym: Bombax pentandrum L.、 Ceiba anfractuosa (DC.) M.Gómez
一般名
Red river gum、 River red gum、 Long beak eucalyptus、 Murray red gum
樹種概要

オーストラリアを原産地とするユーカリの一種で、一般的には樹高が20m、胸高直径1m程度の中高木であるが、まれに樹高50m、胸高直径2mに達することがある。自然樹形は短く太い主幹を持ち、大きく、広がった樹冠を形成する。乾燥、酸性に耐性があり、条件の悪い乾燥地や積悪地に最も植栽されている樹種の一つであるが、自生地では主に水系に沿った地域及び氾濫原に出現する。温帯から熱帯、湿潤地域から乾燥地域と、幅広い範囲の気候条件下で生育する。粘土由来のシルト質あるいはローム質土壌で、地下水が利用可能な地域において最大の生長を示す。本種は休芽を形成せず、条件が良好な時はいつでも生長する。

植栽はコンテナ苗を用いることが多く、燃材生産が目的の場合には、2 x 2mあるいは3 x 3m間隔で植栽される。支柱やポール、燃材の生産のためには、5年生で700本/ha以下になるように密度管理を行い、製材品等の生産には定性間伐を行い形状の良好な木を残し10年生以上で収穫する。立地条件に適した産地品種の苗木を植栽することにより、年3mを超す生長量を得ることができる。いくつかの産地品種は萌芽更新が容易である。6年あるいはそれ以上の周期で更新され、適地では7-10年周期の萌芽更新で管理されている。

本種は多量の花蜜を生産し、蜜は独特な風味を持ち、淡金色を呈する。材は高い強度と優れた耐久性を持つことから、様々な形の構造材(線路の枕木、ポール、床材、護岸用材、造船用材、建築資材など)として使用される。若い植林木の薪は燃焼速度が速く持続性に乏しいが、天然木は火持ちも香りも良く高級薪材になる。炭材としては優れ、若い植林木でも良質炭を製造することができる。繊維は長く強靱で、パルプや紙の原料として使用される。また、ハードボードや繊維板、パーティクルボードの原料生産目的でも植林されている。油成分はさわやかな香りを持ち殺細菌効果も有するため、防腐剤として使用される。本種の熱帯地域産品種は、1、8-シネオール葉油を豊富に含み、医薬品としての品質も高く、商取引されるユーカリ油の重要な供給源となっている。

産品の特徴

用途
パルプ・チップ、建築用材、燃材(木炭、ペレット、薪)、養蜂(蜜源)、精油(ユーカリ油)
産地
オーストラリア(原産)、世界の熱帯地域に広く植栽
産品概要

ヘクタール当たりの材積の年増加量はアルゼンチンで20-25m3、イスラエルで30m3、トルコでは第1伐期に17-20m3、それ以降の伐期で25-30m3の報告、さらに近年のブラジルの集約的な植林地では平均45-60 m3が報告されている。逆に、インドの生長量に乏しい乾燥地域では14-15年生で収量はわずかに2-11m3/haであったという。東南アジア、例えばタイの民間会社のデータでは条件良い土地で25 m3/ha/年、痩せている土地では 8m3/ha/年となっている。

エネルギー材などの新たな需要

一般に東南アジア、例えばタイでは植林されたユーカリの70~80%がパルプ・チップに、10~15%が燃料用、5% が建築用ポール(支柱)となっている。また近年はバイオマスエナジー源としてエネルギー関連からの需要も高まってきている。

日タイの共同研究で、未利用農地(耕作放棄地)にユーカリを植林し、木炭生産を行うことで、農民の生計向上とCO2排出削減を両立させるという提案がある(Kawasaki et al. 2014)。タイでユーカリ木炭を生産・販売する企業はいくつかあり、P.K.Trading社は白炭の輸出を行っている。製炭技術については以前から日本の技術支援があり、タイ-岩手窯(Thai-Iwate kiln)が普及しており、この窯を用いて炭化温度を500、600、700℃で比較した結果、700℃の炭の質(85%の高密度の炭素固定)が備長炭並みであったとしている(Chotikhum & Laemsak 2009)。また、タピオカ澱粉を使わない成形炭の製法を開発(エコ備長炭というネーミング)して生産に入っている。使用する材は3~5年生のもので、現在、月に50tの生産が可能、価格は120円/kg程度であるという(カセサート大学での聞き取り)。また、ユーカリの木酢液(タール)をクレオソートの製造に利用している。一方、タイ、ベトナム、インドネシア等でユーカリ・ペレットの生産も始まっており、韓国の資本も入るなど、ユーカリ材の新たな需要が生まれてきている。

チップ材、ポール材、木炭の価格の動向(タイの事例)

タイ産のチップの輸出先は日本と台湾である。北タイのチェンライの事例では、チップ材(850baht(24USD)/ ton)は、ポール材((1500baht(42USD)/ ton)に比べ価格が安く、チップ材生産は農民にとって魅力が薄れてきているという。一方、東北タイの耕作放棄地にユーカリを植栽、3年生で0.965トン/haの幹収穫、これを製炭すると1,351USD/haの収益になるという試算がある(Kawasaki et al. 2014)。チップやポール材は生重量なので直接比較することはできないが、含水率を考慮しても、生産者(農民)にとってユーカリの木炭生産の有利さは明らかであろう。また、国内でタイのユーカリ植林炭は、現在200-300円/kgで販売されており、国産の広葉樹炭よりも比較的安価になっている。

参考情報