サゴでん粉

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原料となる植物

学名
Arecaveae Metroxylon sagu Rottb.
一般名
サゴヤシ
別名: Sago palm , pearl sago, amylum, starch
樹種概要

サゴヤシはパプアニューギニア(PNG)原産のサゴヤシ属ヤシ科の植物である。現在ではPNGをはじめインドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン等の湿地に分布している。その最大の特徴は、幹にでん粉を大量に蓄積することである。ヤシ科には、サゴヤシ属の他にも10属程度でん粉を生産する属があるが、このサゴヤシ属サゴヤシ(M.sagu Rottb.)が最も多くでん粉を蓄積すると言われている。このサゴでん粉は、古くから地域住民の重要な主食や現金収入源になっている。

サゴでん粉の生産性は、生育場所や密度によっても大きく左右されるが自然林では0.8~15.5t/ha、半栽培林では1.5~37.5t/ha、栽培林では、一例ではあるが、2.8~15.5t/haと言われている(山本,2010)。これは世界の熱帯中で栽培されているタピオカの生産性よりも高い。それだけでなく、サゴヤシは未開発のままでは他の作物が生育できず経済的価値が低いとされる泥炭湿地林でも生育が可能である。泥炭地の開発によるCO2排出が深刻なインドネシア等において、サゴヤシによる経済価値の創出は環境保護にもつながる可能性がある。

産品の特徴

用途
うち粉、嚥下補助食品、菓子の原料
産地
東南アジア、オセアニア
産品概要

江原(2010)によると約250万ha(キャッサバは2014年で2,422万ha(FAOSTAT))のサゴヤシ生育面積が広がっており、そのうち積極的な栽培が行われているのは9%程度でその他は粗放的栽培でありサゴヤシの採取さえ行われていない場所もある。積極的な栽培は主にインドネシアで行われている。粗放的栽培下では収穫場所が僻地に点在しているため集荷システムがうまくいかず、安定した供給や価格設定ができていない可能性がある。

各国におけるサゴヤシの生育面積と生産量
  自然林(粗放的栽培)面積
(万ha)
積極的栽培面積(万ha) 生産量(万t/年)
PNG 100 2 8.3
インドネシア 125 14.8 20.8
マレーシア 4.5 10.3
タイ 0.3
フィリピン 0.3
その他 0.5
合計 225 22.4

サゴヤシの繁殖はサッカーと呼ばれる母幹の基部から次々に出てくる分枝(吸肢)によって行われる。サッカーは、母幹から2~3mのところで幹立ちし、幹立してから約7年程度で開花・結実期に至る。開花・結実に至る過程で幹に蓄積されたでん粉が急速に減少するため、収穫はその直前の幹立ちから6年程度で行うことが一般的である(中村ら,2010)。しかし、粗放的な栽培下では母幹からサッカーが次々と生えた状態のままで最適な生育密度が維持されていないことや、収穫時期が遅れたために本来得られるべき生産量が達成できていない可能性がある。一般的にサゴヤシは施肥などを必要としないが、サッカーや収穫時期のコントロールはしなければ収量は上がらない。

サゴでん粉の採取方法は、まずサゴヤシの幹を1m程度のログに分断し中身を粉砕し髄を抽出する。抽出した髄を水槽に浸し沈殿した部分を掬い上げ乾燥させる。採取方法はいたって原始的ではあるが、日本への輸出のためには混入物を除去や乾燥を徹底することが望まれる。

泥炭湿地でも育つでん粉資源植物

一言ででん粉と言ってもその用途は極めて多様である。その原料もコーンスターチ、小麦、米、キャッサバ、ばれいしょ、かんしょ、サゴヤシ等様々であり用途によって原料や加工法を変えている。製造されるでん粉の70%が食用として用いられる。でん粉のりが食品に用いられる場合、和菓子に含まれる増粘安定剤である。日本ではサゴでん粉はうどん等の打ち粉に使われているのみでその取扱量は限定的である。生産国においては、インドネシアでは菓子、麺、餅の材料として多く利用されている。

貧栄養でpHが低く他の植物が生育できない泥炭湿地ででん粉が生産できるサゴヤシは、食糧危機がささやかれる中で、救世主となる植物として昔から注目が集められてきた。また、経済価値の低い泥炭湿地におおいてサゴヤシは地域住民の重要な現金収入源である。インドネシア リアウ州東部のテビン・ティンギ島のスンガイトホール村では、サゴヤシが貴重な現金収入源になっており、泥炭地火災を招く泥炭湿地の開発を阻止する活動が行われている。

しかし、現時点でサゴヤシの積極的な栽培はほとんどされておらず、その生育面積から推計するでん粉の潜在生産量に対しての現在の生産量はまだまだ少ないと言えるだろう。経済的価値の低い泥炭湿地を開発することによって経済価値は上がるが、それと同時に大量の土壌中炭素がCO2として放出され気候変動に影響を及ぼすと言われている。いかに、泥炭湿地を開発せずに経済価値を創出できるかはサゴヤシ栽培とそのでん粉の普及に係っているかもしれない。

輸出入動向と日本の需要

日本では主にマレーシアからサゴでん粉を年間14,000tほど、次いでインドネシアから年間4,000tほど輸入している。マレーシアからの輸入量は2008年から減少傾向にあるが、その分インドネシアからの輸入量が増加傾向である。輸入単価はここ15年程度で3倍以上も値上がりしている。日本に輸入されるサゴでん粉の大部分はうどんや餃子等のうち粉として利用されており、それだけでは需要が大幅に増加する見込みは低い。サゴでん粉は生の状態で輸入されそのほとんどが酸化加工される。加工された状態であれば無関税であるが、生のでん粉を輸入する際の基本関税率は140円/kg、WTO協定関税率は119円/kgであり輸入単価に対してかなり高く設定されているのが分かる。実際にサゴでん粉を輸入している商社に聞き取りしたところ、生サゴでん粉の関税率が高いのが取扱いが少ない一因であるが、現地に工場を建設するまで日本に需要がないのが現状であり、このまま価格が上昇すれば取り扱いは難しくなるだろうとのことであった。

マレーシアとインドネシアにおける日本へのサゴでん粉の輸出状況

マレーシアとインドネシアにおける日本へのサゴでん粉の輸出状況

マーケットの展望

日本では、サゴでん粉が高騰する中で、総合でん粉メーカーである日本コーンスターチ株式会社が2012年より「サゴヤシ澱粉の代わり」というコーンスターチを原料にした代替材を発売した。その影響もあってか2012年のマレーシアとインドネシアからの輸入量は減少したが、近年はまた輸入量が増加傾向にあり輸入単価も上がっている。サゴでん粉は、流動性がよくかつ低粘度であることから嚥下食用加工でん粉としての利用が期待されている。また、小麦粉等のアレルギー対応食品にもなり得る。今後の我が国のでん粉全体の需要は人口減少の影響もあって大幅に伸びることは期待できないが、高齢化や健康食品嗜好はまだまだ続くことが予想され、売り込み方次第ではサゴでん粉の需要が伸びる可能性は秘めている。そのためには品質維持や供給体制の安定化等が不可欠である。

日本の主要サゴでん粉輸入先であるマレーシアは、国内需要を満たすためサゴでん粉をタイから輸入している。マレーシアの経済成長に伴う農産物需要の増加により主に麺類用のでん粉需要が2000年から2010年にかけて3,000tから15,000tに大幅に増加している。今後、マレーシアの更なる経済発展に伴い同国内の取引価格が上がり生産されるサゴでん粉は輸出から国内市場向けになる可能性がある。我が国は今のうちに安定供給策を検討しておく必要があるかもしれない。

参考情報