タマリンドシードガム

tamarindus1
tamarindus2
tamarindus3
tamarindus4
tamarindus5

原料となる植物

学名
Tamarindus indica L.
別名:Tamarindus occidentalis Gaertn.,Tamarindus officinalis Hook.,Tamarindus umbrosa Salisb.
一般名
タマリンド
樹種概要

マメ科の半常緑性高木で、高さ25m、直径1m以上になり大きな樹冠を形成する。アフリカ熱帯サバンナ地域の原産で半乾燥地に適応しているが、雨の多いところでも生育することから古くより、インド、東南アジア、米大陸などの亜熱帯~熱帯で広く栽培される。多くの変種、栽培品種がある。村落や住居の周辺や道路沿いに植えられる。豆果の利用に加え、被陰や観賞目的でも植栽される。長さ7-15cm、幅2cmほどのやや湾曲し肉厚で不規則な膨らみのある円筒形の鞘からなる果実の中に通常3~10個の黒褐色・扁平な卵円形の種子が入っており周りは黒褐色のペースト状果肉(果泥)で充填されている。 果肉は柔らかく酸味があり、広く食用として流通・利用されている。

半乾燥地原産のマメ科樹木で生育範囲は広く、貧栄養土壌、乾燥サバンナ、塩類集積土壌等の過酷な立地環境下でも生育する強靭な樹種である。生育適地は長い乾季のある亜熱帯気候の排水良好地で、年間を通じて降水のある湿潤気候下での成長は悪くほとんど開花結実しない。成長は遅く上長成長は年0.5~0.8mほどで、7~8年性から豆果を着け15年以降から収穫が安定する。成熟木の豆果収量は150~200kg/個体、約12~16トン/haほどと報告されている。50年を超えると収量が低下し始めるため伐採・植替えを行う。材は堅く耐久性があり、ろくろ細工、家具・フローリング材、熱量の高い良質の薪炭等に利用される。花は蜜源となる。本種は乾燥ストレスがかかり土壌条件も劣る荒廃地域での生育・栽培が可能であることから、本種の果肉や種子に付加価値を付けた製品開発を行い世界的にマーケットの拡大を図ることで、貧困の中心である乾燥~半乾燥地域における生活の向上、森林の保全・修復への貢献が期待できる。

産品の特徴

用途
果肉を食用、種子を増粘剤
産地
世界の熱帯域全般
産品概要

材は堅く耐久性があり、ろくろ細工、家具・フローリング材、熱量の高い良質の薪炭等に利用される。花は蜜源となる。本種は乾燥ストレスがかかり土壌条件も劣る荒廃地域での生育・栽培が可能であることから、本種の果肉や種子に付加価値を付けた製品開発を行い世界的にマーケットの拡大を図ることで、貧困の中心である乾燥~半乾燥地域における生活の向上、森林の保全・修復への貢献が期待できる。

果肉と種子由来増粘安定剤の利用

甘酸っぱい味のタマリンド果肉は世界中にマーケットが存在し、フルーツとして生食する他、清涼飲料、ジャム、飴・ゼリー等の菓子類、カレー・チャツネ・ウスターソース・バーベキューソース、トムヤム他スープ類等の様々な食品の材料として広範に消費されている。

また、果肉を利用した後の種子は廃棄されることが少なくないが、これを挽いた粉末は嗜好性の高い家畜飼料として利用される他、胚乳部分から熱水もしくはアルカリ水溶液で抽出し酵素で処理したペクチン様の多糖類(ポリオース)はタマリンドシードガムと呼ばれ、冷水に溶け低粘度の滑らかな流動性を示す液体となり、温度や撹拌の強弱にかかわらずニュートン流動を示し一定の粘性を保つと共に、曳糸性や糊感が少ない特徴を備える。こうした特徴を生かし、缶詰や瓶詰、ジュース等の飲料、漬物、ドレッシングやソースなどの調味液、麺類、冷凍食品、アイスクリーム、シャーベット等、食品工業分野で食品添加用の増粘安定剤として広く用いられている。また織物の染色用増粘剤や紙用の糊の原料としても広く用いられる。

輸出入動向と日本の需要

タマリンドの最大生産国であるインドでは、1964年時点で年間25万トン以上の果肉が生産され、うち3,000トンあまりが欧米へバーベキューソース、ウスターソース等の食品材料として輸出されたとされる。また東南アジアではタイの生産量が多く1980年代初頭に1.1万~2.1万トンの豆果を輸出している。その他、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、中南米ではメキシコ、ブラジル他で栽培され、米国南フロリダでも栽培されている。

我が国の貿易統計中にタマリンドペースト、タマリンドシードガム単体での数字は示されていないが、タマリンドシードガムが含まれると考えられる輸入統計品目(HS 1302.32-090)の2015年輸入量は4,800トン弱、23億円相当で、2000年からの推移をみると4,000トン弱~8,000トンの範囲で変動がみられるが一貫した減少傾向はなく、増粘安定剤には一定規模の安定した食品工業分野マーケットが存在すると考えられる。一方、タマリンド果肉ペースト単体の貿易統計も存在しないが、同様に多くの加工食品に広く使われる素材であるため、同様に安定したマーケットがあると考えられ、一般消費者向けの瓶詰製品なども広く輸入販売されている。

マーケットの展望と課題

タマリンドシードガムならびにタマリンド果肉ペーストは多くの加工食品、染色、医薬品などに広く用いられ、我が国でも複数の食品工業関連企業が販売・利用されている。このため今後も安定した需要が見込まれるが、タマリンド果実の収穫・加工は労働集約的であるため、生産国における労働賃金上昇に伴う関連労働力の不足によって供給力の低下と価格の上昇が予想されている。このため、労働賃金がまだ低レベルにあり、しかも乾燥~半乾燥気候地域を有する国の未利用もしくは低利用のまま残されている荒廃地で、タマリンドの栽培・収穫・加工とサプライチェーンの整備が進めば、貧困の改善、森林の保全に貢献することが期待できる。ただし、種苗の植栽から始めると果実の収穫まで10年前後の年数を要するため、接ぎ木技術などを活用して収穫までの期間を4年程度まで短縮すると同時に、他の生計手段との組み合わせた収入確保方策の検討など中・長期的取組が求められよう。

参考情報
  • PROCEA 1992; E.W.M. Verheji and R.E. Coronel ed. Tamarindus indica L., Plant Resources of South-East Asia No.2, Edible fruits and nuts. 298-301, Bogor Indonesia
  • National Academy of Science 1979; Tamarind In Tropical Legumes: Resources for the Future, 117-122, Washington, D.C.
  • 国際緑化推進センター 1997:タマリンド(Tamarind)、森徳典ほか編「熱帯樹種の造林特性 第2巻」、175-181
  • https://en.wikipedia.org/wiki/Tamarind
  • K. El-Siddig, H.P.M. Gunasena, B.A. Prasad, D.K.N.G. Pushpakumara, K.V.R.Ramana, P.Vijayanand, J.T. Williams 2006; ed. J.T. Williams (Chief editor), R.W. Smith, N. Haq, Z. Dunsiger, “Fruits for the Future 1, Revised edition; Tamarind-Tamarindus indica L.”, International Centre for Underutilised Crops, University of Southampton, UK

この産品についてさらに詳しい情報を入手したい方へ