竹細工製品

市場での買い物に竹カゴを使用する人々
(ミャンマー・ピンラウンタウンシップ)
提供:アジアクラフトリンク

竹ヒゴ作りとカゴ編みを行う世帯
(ミャンマー・ピンラウンタウンシップ)
提供:アジアクラフトリンク

竹ヒゴの天日干し乾燥
(ミャンマー・ピンラウンタウンシップ)
提供:アジアクラフトリンク

原料となる植物

学名
Dendrocalamus spp.、Bambusa spp.など
一般名
熱帯性木本タケ類(竹材の利用)
樹種概要

タケはイネ科の常緑性多年生植物で、その種類はタケ亜科でみれば1400以上にのぼり、マダケやモウソウチクなど主に東アジアに分布する温帯性木本タケ類、Dendrocalamus属、Bambusa属(熱帯アジアを中心に分布)、Oxytenanthera(アフリカに分布)、Guadua属(中南米に分布)などアジア・アフリカ・中南米に分布する熱帯性木本タケ類、そして稈が木化しない草本タケ類(主に中南米、アフリカに分布)に分類される。熱帯性木本タケ類は、地下茎が水平に伸びて繁殖する温帯性タケ類と比較して地下茎の長さが数十センチメートル程度と短く、地下茎の上方の節間から芽が出て(分けつ)稈に成長するため、株立ち状になるものが多い。

熱帯地方では、雨期の始まりにタケノコ(新稈)が地上にあらわれ、その後5、6ヶ月の雨期の間に伸長を続けて乾期が始まるまでに稈はほぼ成長を終える。成竹の直径は種類や生育環境によって異なるが、数センチメートルのものから、大きいものでは25センチメートルのものが存在する。高さは世界最大種と言われるD. giganteusで35メートル以上になる。開花については、熱帯性木本タケ類においても一斉開花する数十年の周期が知られているが、このような記録は極めて限られ定説がないのが現状である。タケ類の一斉開花は多くの場合その個体群の枯死を引き起こすが、開花枯死後に一部の株が生残することも知られている。開花枯死後の世代交代(更新)は、熱帯性木本タケ類(株立ち)は生き残った根茎が拡がることはなく、結実した種子による実生更新がおこなわれる。

繁殖は、開花結実が稀なため、一般に栄養繁殖による方法が用いられる。最も確実な方法は、根茎を付けた一年生稈(2-3の節芽を付けたもの)を植え付ける方法であるが、労力がかかるため、事業的には稈や枝の挿し木、あるいは組織培養による繁殖が行われている。栽培(施業)方法は、利用目的が竹材とタケノコの場合で異なるが、竹材が目的の場合(D. strictus, B. bambos, B. textilisなど)は一般に3-4年生の稈が適しており、3〜4年生以降は新竹への養分補給能力も低下するので、伐期3-4年、ha当たり700株程度、株当たり1-3年の稈が10-20本で管理することが推奨されている。一方、タケノコが目的の場合(D. latiflorus, D. asperなど)は、伐期2-3年、ha当たり400-500株、株当たり1-2年の稈が6-8本で管理することが推奨されている。

熱帯性木本タケ類は世界の熱帯地域に広く分布し(自生、移入含む)、樹種によっては他の作物や植物が生育できないような荒廃地においても育つことが可能で、土壌流出や地滑りを防ぐ役目があるため、防災や国土の保全にも寄与する資源としても期待できる。一方、適切に管理・利用されない竹林は過密になりやすく、生物多様性の損失を招くなど環境に対し負の影響も指摘されており、竹林の環境保全機能を最大限に生かすためには、適切な本数密度や伐期で管理し、竹材やタケノコの利用を促進することが望まれている。

産品の特徴

用途
竹組物(竹カゴ、竹ザル)、建築資材、家具、工芸品、タケノコ、製紙パルプ、集成材
産地
台湾・中国南部・東南アジア一帯からアフリカ中央部に広く植栽
産品概要

竹材の利用

竹材は、稈の上下方向に並行して維管束が配列され、繊維方向の強度が高く、維管束に沿って割裂しやすい。表皮は硬くて緻密で、表面には蝋(ろう)成分を有している。こうした特徴から、古来より建築資材、家具、竹組物、工芸品、食用など、暮らしの中で利用されてきたほか、現代では製紙パルプや集成材など工業製品にも利用されている。

タケを材料とした竹組物、建築資材、工芸品類はとくにアジア各国で広く利用されてきた。都市部ではプラスチックやコンクリートなどの素材におきかわった場合が多いが、開発途上国の農村部では今でも手近な日用品や建築資材として日常的に利用されている。また先進国でも工芸品や集成材等として利用され、環境に配慮した製品素材としての評価は高い。

ここではアジアの開発途上国の一例としてミャンマーの最近の状況を紹介する。ミャンマーは、インド、中国に次いで世界第3位の竹林面積を有すると言われる。ミャンマー政府森林局管轄のForest Research Institute(FRI)による報告では、国内に約100種のタケが生育し、うち18種を有用種として認めている。FRIへの聞き取り調査(2019年12月)によると、ミャンマーにおいて竹材の価格は1本あたり500チャット(約35円、1チャット=0.07円)で周辺諸国と比較して安価のため、その国際競争力を期待して竹製品は産業育成の強化対象となっている。

さらに生育が早いタケは、換金までの年月が木材等と比較して短いため、アジア各国で推進される住民参加型の森林管理制度との相性が良い林産物として、森林保全政策の一環で植栽されている。ミャンマーの場合、コミュニティフォレストリー制度において、Bambusa属、Cephalostachyum属の植林が行われており、竹製品は森林ビジネスの産品候補として期待されている。国際貿易統計における竹製品のうち、単位重量当たりの取引価格が高いものが竹組物である。

竹組物(竹カゴ、竹ザル)

ミャンマーでは周辺諸国と同様、竹組物の生活雑貨の生産は全国各地で見られるものの、村落内や地域内消費向けにカゴ、ザル、ゴザ類を生産するものが多く、これらの製品は、ものを入れる、載せる、といった最低限の機能があればよく、品質の基準等も存在していない。また同国では、竹は虫害に遭いやすく、表面も劣化しやすい素材という認識が広く一般にあるため、廉価品に加工されるケースが多い。多少付加価値の高い製品として竹工芸品や籃胎漆器の素地があり、国内各地の土産物店向けに生産・販売されているが、こちらも一般的には品質の面で改善の余地がある。

竹カゴ類の付加価値向上には、編みのデザインが重要である。ミャンマーの地方部で、古くから集落単位で竹カゴの生産を行ってきた産地において試作試験を行ったところ、日本人バイヤーから指示されたデザインに従って生産できることが確認でき、生産者の技術、生産用具等は高品質な製品を生産できる状況にあった。日本人バイヤーも、現地固有のモチーフや工夫の高さ、竹の種類ごとの特性に応じた使い分けを評価しており、可能な限りそうしたものを生かしながら、マーケット参入を目指したデザイン開発を行うことが期待される。生産者の技術や最終製品の品質によって価格帯の幅は出るものの、日本では量販店ではなく工芸店、雑貨店の範疇をターゲットとすれば、カゴ型の製品で5000円、ハンドバック型まで成形して1万円ほどの価格ゾーンの製品となることが想定できる。ただしこうしたゾーンの製品は数量を期待することができず、流通コストが課題になってくるため、合わせて輸送可能で、取引数量が期待できるホームセンター等量販店向けの中級クラス製品の開発も並行して行いながら輸入することが現実的である。

輸出入動向と日本の需要

2017年の竹とラタンの国際貿易統計を見ると、竹組物製品が最も多く380百万US$、竹工業製品が363百万US$、タケノコが323百万US$、竹・ラタン家具製品が266百万US$と続く。竹組物製品の輸出を国別にみると、中国が283百万US$、次いでベトナムが49百万US$となっている。一方、輸入国はEUの86百万US$、USAの57百万US$、日本の26百万US$でこの三者でほぼ全体を占めている。

日本における主な有用種はマダケ、モウソウチク、ハチクの3種であり、国内の竹材の年間生産量は1960年には1,347万束であったが、1967年前後にマダケの一斉開花と大量枯死による供給量の激減とその間の輸入量増加、そしてプラスチックの台頭によって96万束まで減少した。近年では、輸入量の減少と製紙用等の需要を受けて増加し、120万束程度に落ち着いている。安価な竹製雑貨については国内生産では価格が見合わなくなったため、生産拠点が海外へ移っている。ホームセンター等量販店向けに流通している生活雑貨品の製造は、人件費の観点により中国からベトナムへと生産拠点が移ってきたが、現在ではベトナムの人件費高騰も課題となっており、さらなる代替候補国としてミャンマーなど他の東南アジア諸国への関心が高まっている。

マーケットの課題と展望

熱帯地方に位置するアジア諸国において、竹製品が森林ビジネスとして発展していくためには、サプライチェーンのステージごとに課題がみられる。例えば、素材生産のステージでは、加工地周辺での有用種の資源量に限界があるなか無計画な伐採による資源枯渇が課題である。実際にミャンマーで資源の入手が困難になっている地域では、コミュニティフォレストリー制度を活用した植林などの取り組みを促進する必要がある。次に、製品加工のステージでは、生産性の低さや、マーケットの要求品質への対応が困難なことが課題である。技術指導や試験生産を通じて生産体制の強化や技術向上を達成する必要がある。最後に、流通のステージでは、地方で生産される竹製品の場合には国内の輸送コスト、さらに輸出経験が乏しい場合にはその手続きの煩雑さや手数料等がマーケット参入への障壁となる。

途上国における製品加工には、前述のように生産性や品質に課題を抱える場合が多く、そこに日本のものづくりの現場で培われた技術や知見が生かせる可能性がある。生産性の向上による増産とコストの低減、品質の向上による既存市場での単価上昇や、要求品質の高い新市場へのアクセスが実現することで、竹製品の収益性が向上し、竹を利用した森林ビジネスの推進を図ることができるであろう。

参考情報
  1. Somboon, K., Subansenee, W., Sroithongkham, P., Chiablaem, S. (2001) Review of Bamboo Management. Internal Technical Report No.1, Project: PD56199 Rev.I(1), RFD & ITOO, 42pp
  2. Business Innovation Facility(2015)Myanmar Bamboo Sector Competitiveness Study
  3. Forest Research Institute(2016)Presentation at ASEAN Regional Workshop on Bamboo Utilization
  4. International Bank for Reconstruction and Development(2019)Myanmar Country Environmental Analysis: Assessing the Opportunities for Scaling up Community Forestry and Community Forestry Enterprises in Myanmar
  5. International Network for Bamboo and Rattan(INBAR)(2019)Trade Overview 2017 Bamboo and Rattan Commodities in the International Market
  6. 林野庁・特用林産物の生産動向(更新日:2020年8月31日)https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/tokuyou/attach/pdf/200831-2.pdf
  7. 林野庁(2018)竹の利活用推進に向けて
  8. 上田弘一郎(1966)熱帯地方産竹類の生理生態学的研究と問題点 東南アジア研究第5巻第4号154-167
  9. 上田弘一郎(1968)東南アジアの竹資源とその開発―主としてパルプ用資材についてー 東南アジア研究第5巻第4号767-773
  10. Nyan Htun (1998) Bamboos of Myanmar. Bamboo – conservation, diversity, ecogeography, germplasm, resource utilization and taxonomy. Proceedings of training course cum workshop. https://www.bioversityinternational.org/fileadmin/bioversity/publications/Web_version/572/ch28.htm#Bamboos%20of%20Myanmar%20Nyan%20Htun