グッタペルカ

Palaquium gutta (Gutta Percha Tree)
1851-02

原料となる植物

学名
Palaquium gutta
一般名
ガタパーチャ、グッタペルカ、gutta-percha、percha-latex
※「グッタペルカ」や「Gutta-percha」と表記される際には、しばしばパラキウム属から採取される天然のラテックスを意味するが、本稿ではPalaquium guttaから採取される天然ラテックスについて記述する。
樹種概要

アカテツ科の常緑高木で、樹高は20~40m、直径60cm程度まで成長する。主に低地に分布し、年間降雨量が2,500mmを超え乾季がない気候に適し、通気性がよく有機物を多く含む土壌を好む。

P. guttaの種子は、採取から2週間以内に苗床に配すれば、発芽率は75-85%となる。根は直根性である。若木は日陰を好むため、日陰樹を必要とする。西ジャワでは、Sesbania sesbanが日陰樹かつ土壌改良のための樹木として用いられている。若木は日陰を要する。植栽密度は、1.2m×1.5m(西ジャワ)もしくは1.5m×1.8m(半島マレーシア)などの事例がある。

産品の特徴

用途
樹脂(絶縁体、歯科の根管充填物、義足、ゴルフボールのコーティングなど)
産地
原産地:マレーシア
マレーシアおよびインドネシアなどの東南アジアからインドなどの南アジアに広く生育
産品概要

海底ケーブルの絶縁体:情報通信網発展への貢献

グッタペルカは、P. guttaから採取される天然樹脂。ゴムノキの樹脂同様に熱を加えれば成型可能である一方で、水中でも劣化しない点が特長である。そのため、グッタペルカから採取された樹脂は、海底ケーブルの絶縁体に用いられていた。この海底ケーブルは、電信を目的としたもので、当時の情報伝達に大きな変化をもたらした。1851年にイギリスとフランスをつないだのを皮切りに、大西洋横断ケーブルが敷設されるなど、世界各地に海底ケーブルが敷設されグッタペルカの需要は高まっていた。

当時グッタペルカはイギリス領マレーシアで主に生育していたため、イギリス政府が独占的に生産しており、結果的に海底ケーブル製造ビジネスも独占していた。しかし、当時の樹脂の採集方法は、天然のP. guttaを倒伐するものであったため、次第にグッタペルカの資源量の減少が深刻になった。

グッタペルカの需要の高まりと、それに反した資源量の減少を受け、20世紀初頭にはおおくのP. guttaのプランテーションがイギリス領マレーシアやオランダ領インドネシアで経営されるようになった。半島マレーシアでは、約6,000haの森林がグッタペルカプランテーションに転換されたと言われる。また、半島マレーシアではプランテーション開発は1967年に終了したと言われる。一方、西ジャワでは、いまだに4,000haのプランテーションが残存している。しかし、次第にパラゴムノキや合成樹脂にとって代わられ、現在ではインドネシアでのみグッタペルカが生産されている。

物理的特性

グッタペルカは、パラゴムノキ由来のゴムと同じく、イソプレンの高重合体(C5H8)(/n)である。しかし、天然ゴムがシス型であるのに対し、トランス型である点が異なる。室温では固体であるが、摂氏50度以上に熱すると柔らかくなり可塑性や弾性が現れる。そのため、歯科の歯根管の充填物として現在でも利用されている。

生産方法/生産地の状況

19世紀には倒伐やタッピングによって採取されていたが、オランダによって葉から樹脂を採集する技術が開発された。そのため、プランテーションでは樹高が60-75cm程度になるように管理される。樹脂採集のための刈り込みは、乾季を避けて成長度合いをみつつ、2.5~3.5年に1回行われる。

グッタペルカは、15年生後から樹脂を採取することができ、1.5kg/本程度が採取できた。非常に採集効率が悪い。現在では、葉から採取する技術が開発された。生重量1トンあたりの葉から12~13kgのグッタペルカを採取することができる。

ハマキムシによる害は生産量減少に深刻な影響を与え、生産量が20%低下したとの報告もある。

需給/輸出入動向

インドネシアにおけるグッタペルカ生産は、オランダ植民地政府が設立したプランテーションに端を発した。その後、こうしたプランテーションでの生産はインドネシア政府に受け継がれていったが、政府経営のプランテーションは地方分権化の流れをうけて、西ジャワ州政府が出資するプランテーションの有限責任会社(PTPN VIII;PT Perkebunan Nusantara VIII)へと譲渡された。

グッタペルカの生産量は減少傾向にある。これまでの主要な生産地はインドネシアであったが、近年のグッタペルカ需要の低下に伴い生産量が減少していると言われる。現在では、前述のPTPN VIII以外ではほぼ生産が行われていない。

一方で、いまだにグッタペルカを使用した歯根管充填物が販売されているため、需要はあると考えられる。2007年のインドネシア政府の統計データには、グッタペルカの需要増加とそれに伴う価格上昇が記録されている。2008年には、グッタペルカ需要は2,160kg、価格は150万ルピアに達したが、インドネシアの生産量はわずか108kgに留まり、好況を背景に生産拡大することはなかった。

PTPN VIIIによって生産されたグッタペルカは、加工されず輸出される。主な輸出先はオランダ、イギリス、ドイツ、アメリカ、カナダ、香港などである。2006年のグッタペルカの販売価格は47万5,000ルピアであったが、2008年には150万ルピアにまで跳ね上がった。統計データでは417haのプランテーションがあるとされていたが、2012年以降のデータは不明である。

参考情報