ヤシ殻資材

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産品の特徴

用途
園芸用資材、枕、縫いぐるみ、クッション等の詰め物用繊維・油吸収材・新タイプ混紡布
産地
東南アジア、熱帯アメリカ、熱帯アフリカ
産品概要

コイア繊維は、ココナツの中果皮から採れる赤褐色の硬くて強い弾力性のある繊維で、ココファイバーと呼ばれる繊維部分と、ココピートやコイアピスと呼ばれる繊維を除いた残渣からなる。ココファイバー(繊維部分)は、ブラシ、マット、ロープや家具用の粗い織物等に使われる。ココピート(繊維部分を取り除いた残渣)は、残繊維とリグニン質の髄からなる。ココピートは、園芸資材として用いられる。資源の再生産能が高く自然環境に対する負荷が少ないこと、保水性が高いと同時に過剰な水分を排水する能力が高いこと、耐久性や保肥力が高いこと等、ピートモスに比して優れた点を数多く持っている。しかし、ココピートは、インドやスリランカ等の一部の国を除いて十分な活用がなされておらず、廃棄物として処理されている。

しかし、近年では、スリランカ産のココピートの資源量低下が懸念されている。スリランカ産のココピートは、長期間(数十年間)野晒しにされていたヤシ屑が塩分やタンニンが洗い流されて熟成され、園芸資材として適した品質に変化したものを用いていた。長期間の熟成によって素材の色が褐色から黒色に変化し、ブラックピートと称されていた。しかし、スリランカ産のブラックピートは資源が枯渇してきていると言われており、新たに採取されたヤシ屑を水洗するなどして早期熟成させたもの(レッドピート)を生産している。しかし、処理の程度により品質は大きく異なり、上述したピートモスに対する優位性を発揮するどころか、極端な場合は作物の生育不良障害を引き起こすこともある。そのため、輸出業者が独自に品質基準を制定し製品のランク付けを行ったり、フィリピンのように国家基準を設けたり、ニュージーランドのように輸入に当たっての品質基準を設ける等の対策が講じられている。

放棄バイオマス

コイア繊維は、ヤシの実の中果皮が原材料である。ヤシの実の構造は、実の表面を覆っている緑色の「外果皮」、その内側の強靱な繊維質から構成された果肉となる「中果皮」、木質で堅く種皮となる「内果皮」、内果皮の内側一面に付着する白色の「固形胚乳(コプラ)」、種子内を満たしている「液状胚乳(果水)」より構成される。ヤシガラ繊維の原材料となる中果皮のバイオマス量は、重量比で実の重量の33%を占めている。そのうち、繊維として活用できるのが10%(対実全重)であり、繊維分を梳き取った屑はココピートとして活用される。

各国のコイア繊維産品の潜在生産可能量は、インドネシア175万トン、フィリピン152万トン、インド102万トン、スリランカ20万トンとなる。しかし、輸出量は、インドネシア4.6万トン、フィリピン1.1万トン、インド36万トン、スリランカ11万トンと潜在生産可能量に遙かに及んでいない。この原因の一つは、ココナツジュースの生産と考えられる。ココナツジュースの採取には未熟果実が用いられるため、得られる繊維は発達が未熟であり製品としての品質を保つことができない。しかし、ココナツジュースに消費される量を勘案すれば、インドとスリランカについては利用可能なバイオマスは満度に利用しているものと評価できる。しかし、ココナツ生産量の1位、2位を占めるインドネシアとフィリピンについては、コイア繊維はこれまで放棄バイオマスとして廃棄されてきたと考えられる。有効な利用開発が行われれば、今後重要な供給地となり得ると期待できる。

輸出入動向と日本の需要

コイア繊維産品の日本の輸出入動向は、1990年代、2000年代に大きく輸入量を伸ばし、2010年以降は漸増あるいは横ばいの傾向にある。フィリピンは1990年代、2000年代に取引量を伸ばしたが、その後減衰に転じ、2014年にはアジアからの輸入量の0.56%を占めるにとどまっている。スリランカからの輸入量の伸びはめざましく、2000年に比して2014年では取引量は倍増するとともに、2000年以降は輸入量の8-9割を占めるに至っている。インドとの取引は進んでおらず、2014年は433トン(アジアからの輸入量の0.64%)を占めるにとどまっている。フィリピンやインドの専有率が低いのは、商品単価がスリランカと比較して高く、価格競争に勝てないことが要因であると考えられる。スリランカはコイア繊維産品の生産実績が長く集約的な生産方式が開発されていること、取引量が多く輸送費が割安になることがコスト削減に影響を与えていると考えられる。2016年現在、コイア繊維産品は円高の影響で採算割れを起こしている状況であり、取引量拡大のためには更なるコスト削減が求められている。

日本では、タワシの原料としてココファイバー(繊維)をスリランカから輸入していた。ココピートについては、ピートモスの代用品としての取り扱いに加え、加水して復元することにより作物の培地となるココディスク等の開発や、ジフィーポット(土壌に還元されることから容器をつけたまま植栽が可能で植え傷実を回避し活着率を確保することが可能)の開発が進められ、商品化されたものが園芸資材店やホームセンター等で販売されている。

また、近年は、林業用種苗のコンテナ栽培の研究が進められており、その培養土としてココピートを使用した生長試験が行われている。さらに、法面緑化の土留め兼緑化用植物培地としての資材の開発が行われ、今後の活用が期待されている。その他、畜産業者向けに畜舎の敷き藁代わり(消臭資材)としての商品開発や、キノコ生産の培地としての商品開発も行われている。

マーケットの展望

ピートモスの資源量の低下や環境負荷への懸念により、園芸資材消費国のオランダはもとよりピートモスの生産国の一つであるカナダやアメリカ合衆国でも、ピートモスからココピートへの転換が進められているという。インドにおけるココピートの輸出実績(2014年1月から2016年1月までの船積み件数の実績)では、オランダが3,253件、アメリカ合衆国が2,678件と、この2カ国で輸出件数の4割を占めている。

コイア繊維は、これまで生産地=スリランカ、消費地=ヨーロッパ諸国という構図で取引されていた。しかし、近年は、アメリカ合衆国ならびに中国からの需要が高まり、2012年時点ではそれぞれ世界全体輸入量の9.3%、68.7%を占めるに至っている(ヨーロッパは全体で16.8%)。アメリカ合衆国は2007年に比して2012年の輸入量は3倍増、中国は2倍増と飛躍的に輸入量が伸びている。特に、1カ国で世界全体の輸入量の半数以上を占める中国の動向が、今後の商取引(取引量・取引額)の鍵を握っていると言える。

参考情報
  • FAO Statistical Bulletins -Statistic November 2012

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