テンカワンオイル
原料となる植物
- 学名
- Shorea stenoptora(フタバガキ科)
- 一般名
- テンカワン(Borneo Tallow Nut、Borneo Illipe)
- 樹種概要
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フタバガキ科のShorea属の中には、現地名でテンカワンと呼ばれ、果実から油脂分がとれる経済的に有用な樹種が主に10数種類ある。インドネシアでは、13種が確認されており、10種がカリマンタンに、3種がスマトラに分布している。その実は天然林・半天然林および植林木から採集されてきた。Shorea stenopteraは、テンカワンの代表的な種であり、ボルネオ原産で、イリッペ・ナッツを採集できる源樹の一つである。常緑高木で、幹通直、樹冠は密で、胸高直径70cm、樹高30mにもなる。湿潤低地熱帯林のほとんど洪水のない砂質沖積層の腐植土及び排水の悪いポドソルのケランガス林に生育。酸性、砂質、栄養分(特に窒素分)の少ない土壌であるヒース林にも生育。天然更新では、種子が落下して母樹の近くで発芽するか、又は、洪水時に流されて同様の条件の場所で発芽する。ボルネオでは、植林されている場所もある。IUCNのレッドリストで、Endangered(絶滅危機)種に登録されている。インドネシアでは、1999年政令第7号により、保護樹種の一つに指定されている。
産品の特徴
- 用途
- 落下果実を乾燥出荷、これを蒸して圧縮搾油(主成分はStearic acidのglyceride)。植物性油脂として高い経済性あり。油脂の融点は高く35~37℃常温で固体。現地では伝統的に、調理用油、灯用油及び伝統薬の材料として使用。工業的には、ココアバター及びシアバターの代用。マーガリン、チーズ、菓子、チョコレート等の混和料。体温で融ける性質を利用して、口紅、座薬。肌用保湿剤等の化粧品。ローソク及び石鹸原料としても使用。幹は、ライト・レッド・メランティとして高品質の用材。
- 産地
- マレーシア、インドネシア
- 産品概要
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18~25年生で結実を開始。豊作年は、約5年に1回。落下した果実を採集。川沿いでは、川に流された果実を収集するために竹等でフェンスを設置。果実は、羽を持ち卵状で、種によりサイズは様々だが、縦5cm横3cm程度になり、殻(外果皮)に覆われている。色は茶色~黒色。果実の脂肪分は45~70%。発芽能力が高いため、水分を含むと果実は急速に腐食する。乾燥果実でヘクタール当たり1,138kgの収量が報告されている。
果実の保管中に、昆虫(鱗翅目(チョウ目)及び鞘翅目(甲虫目))による食害を受けると、遊離脂肪酸の含有量が増えることで油脂の品質が低下する。その他の害虫として、Poecilips gedeanus (Beaver)及びTirathaba spp. (Brady)等が報告されている。
果実の保管、殻の除去及び搾油方法
搾油のために殻を除去する方法は様々であり、①流水に浸けて発芽させる、②土中に埋めて発芽させる、③55℃の窯で蒸す、④機械的に割る等がある。殻は割れれば手で取り除くことができる。取り出した実は、日光の下、5~7日間天日干しした後保管する。実は、保管中に腐らないように、水分含有量7%程度まで乾燥させる。
搾油に際して、農村では、実を鍋に入れて煮詰めた後、ラタンの袋に入れて、材木で挟んで油を絞り出す。油は竹筒の中に保存される。工業用には、ヘキサンを用いて溶媒抽出する。その後、精製、漂白される。搾油後に残った残渣は、タンニン酸を含み、動物の飼料として利用できる。
ステアリン酸 43.3% オレイン酸 37.4% パルミチン酸 18.0% アラキジン酸 1.1% リノール酸 0.2% インドネシア、西カリマンタンのポンティアナックに搾油精製工場があり、カカオからのカカオバターとともに、テンカワンからのイリッペナッツバターを製造している。
輸出入動向と日本の需要
最盛年には、インドネシアから年間41,000~50,000トンの乾燥果実が輸出されたとの報告がある。1990年頃までは、日本にもテンカワン果実が輸入され搾油されていたが、その後は、植物性油脂として輸入されている。
ただし、インドネシアでは、2012年商業大臣令第44号により、原材料輸出禁止品目のうちのひとつにテンカワンも分類され、果実の輸出は禁止されている。そこで、インドネシア国内で加工して、最終製品として輸出する機運が高まっている。
森林ビジネスの可能性
テンカワン果実の植物性油脂は、非木材林産物として経済性が高いことから、森林保全と地域住民の生計向上を両立できる可能がある。このため、森林回復又はコミュニティ林造成プロジェクトの植林樹種の一つとしてテンカワンが使用されている。西カリマンタン、西ジャワには、Shorea stenopteraの造林地があり、4年生で結実を始めるとされる。最終目的は木材利用だが、伐採までの間に、テンカワンの採取ができれば、住民の現金収入原にもなり、地域の発展にも寄与するし、熱帯林の維持・再生にもつながる。
これまで、テンカワンの結実は数年~10年毎と不定期で、生産量の年変動が大きかった。結実年にはサラワクのもっとも重要な輸出品になるとされる。近年、毎年結実するShorea属の種がCIFOR等の調査により発見されたことから、今後、毎年、安定した供給量が可能となり、工業原料等として需要が高まることが期待される。
- 参考情報
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- 北野至亮(1984)熱帯植物要覧. ステノプテラサラソウジュ. 熱帯植物研究会編. 養賢堂.
- 渡辺弘之(1994)熱帯の非木材林産物. 熱帯林造成技術テキストNo.5. (財)国際緑化推進センター
- Duke J.A. 1989: Arenga pinnata (Wurum) Merr. (Arecaceae) In Handbook of Nuts, pp 30-33, CRC Press LLC
- Suzuki, E. et al. 1997: Ecology of Tengkawang Forests under Varylng Degrees of Management In West Kallmantan.
- FAO. 1992. Minor oil crops. Borneo tallow nut. (http://www.fao.org/docrep/X5043E/x5043E05.htm#Borneo tallow nut)
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