TNFD

内容

TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosure)は、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)、国連開発計画(UNDP)、WWF、グローバルキャノピーの4機関が合同で2021年に設立した臨時組織、「自然関連情報開示タスクフォース」です。またはTNFDが提言した内容そのものを指しても使われます(ここでは「TNFD提言」と整理し解説します)。

世界経済フォーラム(WEF)の「グローバルリスク報告書」によると、「生物多様性の喪失と生態系の崩壊」は2020年以降継続して、「今後10年間に起こりうる深刻度が大きいグローバルリスク」のトップ5に入っており、経済や金融市場にとって、自然は気候変動に次ぐ重要なテーマとなっています。また、地球環境はすでに限界に達しており、このまま経済活動を続けるのは困難という科学的データが出ています。(出典:Science Advances誌, Earth beyond six of nine planetary boundaries)

TNFDでは、自然環境を企業活動の根幹である「資本」と捉え、企業の事業を変革することを求めています。そのために、まず企業が自然環境にどのくらい依存し影響を与えるのかを把握し、財務に与えるリスクと機会を内部評価することが必要であると考え、そのためのLEAPアプローチという方法論を提供しています。また、TNFDが開示を推奨しているテーマは、①ガバナンス、②戦略、③リスクと影響の管理、④指標と目標の4つで、その下に14の開示項目があります。TCFD提言を基に構成されているため、TCFD提言の自然版とも言われており、2023年に公開されました。

2024年現在、日本ではTCFD提言の開示項目が東京証券取引所のプライム上場企業で必須になり、有価証券報告書でも求められていることから、TNFD提言の開示項目も将来的に求められることが予想されています。また欧州の企業サステナビリティ報告指令(Corporate Sustainability Reporting Directive:CSRD)下のサステナビリティ報告基準(European Sustainability Reporting Standard: ESRS)も、TNFDと整合をとった内容になっています。

植林の成果の視える化との関係

森林を活用し事業変革を行った内容や、バリューチェーンの所在地周辺での植林活動を、TNFDの開示項目として報告することができます。その際は、LEAPアプローチやSBTs for Natureなどにより、バリューチェーン全体の生物多様性リスクの評価を行い、植林地の生物多様性の重要度・危機度や自社の環境負荷との関係を明示することが必要です。 

TNFDでの植林の開示事例として次のような活動が挙げられます。

1)自社の生物多様性に配慮した植林の事例

積水ハウス(「庭に在来種5本の樹を植える計画」の可視化の事例https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/library/ir_document/2024/_162556/j_06_03-Enviroument_part2-sec4.pdf

王子ホールディングス(社有林である天然林の価値評価の事例)

https://www.ojiholdings.co.jp/news/?itemid=2042&dispmid=1199&TabModule958=0

2)「機会」として自社のテクノロジーをサービスとして提供

KDDI(高速インターネット回線と他社の生物情報可視化アプリによる外来種調査の事例)

https://news.kddi.com/kddi/corporate/csr-topic/2024/03/29/7357.html

また、TNFDでは生物多様性への依存度と自然に与えるインパクトを測る指標として、「土地利用のフットプリント」や「陸・淡水・海洋利用の変化」、「特定外来生物等の対応」や「自然の状態(生態系の状態や種の絶滅リスク)」などの開示を推奨しています。「自然の状態」を地球規模で示すものとして、保護区や絶滅危惧種の生息地域などをマップ化したデータベースは多数あり、バリューチェーンの中でどこが重要な地域に関わるかを判断するのに役立ちます。一方、実際の植林がその場所の生物多様性にどのくらい正の効果をもたらしたのかを測る指標や方法論は定まったものがなく、どう貢献度を可視化するかは各企業に任せられており課題となっています。

関連用語

TCFDESRSCDPGRI、レインフォレストアライアンス認証、森林認証、CSRCSV

参考URL

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