
マレーシアにおける産業植林地の貢献度可視化:炭素ストック-産業植林の炭素を立木から木材製品までどう「視える化」する?-
背景と目的
- 越井木材工業は、安定的な木材原料を確保するため、サバ州の森林火災等で草地化した荒廃地にAcacia hybridの産業植林を造成した。
- 事業地周辺ではオイルパーム農園が拡大しており、2023年には17年生林分の主伐も始まっている。
- 伐採木材はサバ州内で製材・集成材化され、日本でトラック荷台床板として利用される。
- 近年、取引先や投資者から植林地や木材製品の炭素貯蔵機能を定量的に示すことが求められていることから、本実証では、立木・土壌・伐採後の木材製品までを対象に、炭素ストックをどこまで視える化できるかを検討した。
産業植林地の概要
- 実施場所:Sook, Sabah, Malaysia
- 期間:2005年~(産業植林、継続中)
- 森づくりのタイプ:産業植林および保全ゾーニング
- 調査実施体制:越井木材工業/KM Hybrid Plantation/サバ大学/JIFPRO
- 樹種:Acacia hybrid(単一樹種植林)
- 事業地面積:746.4 ha(うちAcacia hybrid林:約572.1 ha、保全林:約174.3 ha)
- 主な炭素プール:立木バイオマス/土壌/伐採木材製品(HWP)

実証試験の結果
サバ大学による現地調査では、アカシア植林地(13年生、15年生、17年生)の地上部炭素ストックはそれぞれ平均80.2、73.3、97.8 tC/ha、土壌有機炭素ストック(0~30 cm)は65.6、61.5、71.7 tC/haであった。これらの値は、比較対象として参照したオイルパーム植林地の既往文献値をいずれも上回った。

また、1 ha当たりの主伐材からトラック床板用集成材約40 m³が生産されると仮定した場合、製品として利用されている期間中に約42 tCO₂が貯蔵されると推計された。

ただし、本調査で参照したオイルパームの値は同一地点で同時測定した比較区のデータではなく文献値である。また、植林前の炭素ストックは直接測定していない。そのため、これらの結果はアカシア植林地における炭素ストックの現況を示すものであり、「植林による炭素増加量」や「CO₂吸収量」を直接示すものではない。
将来の展開:炭素ストックから「変化量」と社会・環境への貢献評価へ
本実証では、2023年時点における立木、土壌および木材製品の炭素ストックを定量化し、炭素蓄積の現況を示す成果(Outcomeレベル)を得ることができた。
今後は、同一の固定調査区における反復測定に加え、植林前の状態を代表する荒廃地や周辺のオイルパーム林分についても同一手法で調査を行い、ベースラインや比較対象との差異を把握することが重要である。
さらに、主伐と再植林のサイクル、森林火災の影響、木材製品の利用期間などを含めて長期的な変化を追跡することで、単なる「現在の炭素ストック量」の評価から、「炭素ストックの増減量」の評価へと発展させることができる。これにより、植林事業が気候変動対策や持続可能な資源利用にどの程度貢献しているかをより明確に示し、より高いレベルでのImpact(社会・環境への効果)やContribution(事業の貢献度)の評価につなげることが期待される。
詳細
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