欧米企業による大規模な植林活動の事例

グローバル企業による植林事例

欧米のグローバル企業では、独自の基金・ファンドの創設や国際NGOとの提携により大規模な森づくり活動を実施している事例があります。(注:これらの活動は植林だけではなく保全・管理などの活動を含む場合があります)

こうした大規模な森づくり活動では、生物多様性保全や地域住民の便益についてももちろん配慮されますが、二酸化炭素排出削減・緩和が主たる目的である場合が多いようです。これは、自社の企業活動による二酸化炭素排出が非常に大きな規模であるため、そのフットプリントに見合うような吸収量を目指すためには、これまた非常に大規模な森林が必要になってくるためです。

マイクロソフト

オランダの農業組織向け金融機関の統轄金融機関ラボバンクとパートナーシップを締結し、“Acorn (Agroforestry Carbon removal units for the Organic Restoration of Nature)”プロジェクトに取り組む。これはアグロフォレストリーにより約 40 億本の木を植え、150 万トン以上の CO2 を削減する目標を掲げるプロジェクトで、リモートセンシングに基づいて炭素固定量を算出しクレジット化、地域住民の生計向上を図るというものです。南米・アフリカ・インドなどで約28万haのプロジェクトを展開(2024年2月現在)しています。

アップル

2015年からアメリカと中国で40万ha以上、2018年にコロンビアで1万haの森林を購入・保全・管理し、生物多様性保全に努めるとともに認証材を出荷しています。また、2021年には国際NGOコンサベーション·インターナショナルと投資銀行ゴールドマン·サックスとの共同プロジェクトによる“Restore Fund”(再生基金)を立ち上げ、同社の排出の25%をこの基金のプロジェクトの森林再生によって削減することを目指し、最大4億ドル規模の投資を行うことを公表しています。

キャタピラー

キャタピラーの慈善部門であるキャタピラー財団は2021年に国際NGOのOne Tree Plantedに100万ドルの投資を行いました。このパートナーシップにより、世界95か国で250ha、29万本の植林を行い、年間7,000tCO2の吸収を見込んでいると公表しています。

グローバル企業と連携する国際NGO

こうしたグローバル企業の植林活動には、国際NGOとのパートナーシップによって実施されている事例が多く見られます。コンサベーション・インターナショナルやWWFのように世界各国にいくつか拠点をもち、それぞれが現地NGOなどと協働してプロジェクトにあたっている場合や、プロジェクトごとにその国のNGOなどとパートナーシップを結ぶハブ的な役割を果たしている場合も見られます。

One tree planted

アメリカに本部を持ち、2014年から活動を開始。80か国以上で累計9,300万本の植林を実施しています。2022年には327のプロジェクトで5,200万本以上の植林を実施しており、インドネシアやブラジルの他、北米やオーストラリアでもプロジェクトを実施しています。生物多様性や住民便益にも力を入れています。

Trees for the Future

1989年から活動しており、累計3億4,400万本、4万ha規模の森林再生を実施。主にサブサハラ・アフリカ9か国で活動しアグロフォレストリーに力を入れています。

We Forest

ベルギーに本部を置くNGOで、2010年からこれまでに5万2,000ha以上に8200万本を植林しています。

今後の課題

こうした植林活動においても、植林本数や面積だけが報告され、植栽後の生存率や管理についての情報が十全には公表されていない場合があります。植林活動の貢献度の実効的な評価について社会的に認知が高まっていく中で、植林後の適切なモニタリングによってプロジェクトエリアが森林として持続していることを示しつつ、実際にどの程度の炭素固定が見込まれるのかについて説明することが今後。課題となっていくと考えられます。