三井住友海上火災保険

基礎情報

業種損害保険
企業規模資本金 1395億9552万円、従業員数(2023年3月31日現在) 連結20,554名、単独 12,572名
事業活動と植林の関係事業活動外
活動地域インドネシア

植林活動実施の背景・目標

  • プロジェクト開始当時は、保険会社として約款など契約書類で多くの紙を利用していたことから、「木を地球に返す」ことを目的として開始。CO2 排出の大きな要因となっている途上国における森林劣化・減少の防止についても目的のひとつとして設定。
  • 野生動物保護林が裸地に近い状態にまで荒廃した原因の一つには地域住民の不法伐採があったため、植林を行うとともに地域住民への環境教育や生活向上のための施策を実施。特に小学生を対象に環境教育を行うことで、子どもから親に対する啓発が行われるとともに、大人になる前から森を守る意識が育つことにつながることを目指した。これにより森林の再生、樹冠の形成などによる動植物の生息地としての機能の回復を目指して活動を継続。

植林活動について

植林活動の内容

プロジェクトパリヤン野生動物保護林再生プロジェクト
対象地インドネシア ジャワ島 パリヤン野生動物保護林
植林地タイプ野生動物保護区への植林
活動期間2005年4月から6年の予定で第Ⅰ期の活動を開始。その後プロジェクトの必要性を判断しながらⅣ期まで実施中
第Ⅰ期(05年4月~11年3月): 地域住民の合意形成、苗づくり、植林、育林(補植、潅水など)、モニタリングの実施
 
第Ⅱ期(11年4月~16年3月): 第I期の植林エリアへの補植・育林・森林維持活動、地域住民を対象とした農業業技術指導(代替生計手段の確立を企図)、環境教育の推進
 
第Ⅲ期(16年4月~21年3月): 植林樹種の多様化(カルスト在来種の導入)、保護林周辺での社会林業(ランドスケープレベルでの環境改善と住民の生計向上)、農業協同組合の支援(地域コミュニティの持続的な発展)

第Ⅳ期(21年4月~24年3月):森づくりや森林保全への多様なステークホルダーの参画(養護学校での苗づくりを含む)、社会林業推進や農業組合支援の継続、インドネシア国内への技術移転を企図した行政・大学・有識者等視察団の積極的な受け入れ、地元小学校との環境教育、モニタリングの実施
活動規模350ha(30万本の植林を目標)
活動内容荒廃した野生動物保護林への植林(カルスト在来種の植林)、保護林周辺での社会林業の推進(住民の経済基盤確立を企図)、ステークホルダーミーティングの定期開催、環境教育の実施(環境についての十分な知識と意識を喚起し、不法伐採防止を目的)、効果測定・モニタリング(保護林の再生状況、生物の生息地としての機能の状況、生息している鳥類・昆虫類などの生息状況、地域住民の社会・経済の状態などを明らかにし、過去からの効果の測定、課題の把握を行う目的)

現地の実施体制

主なステークホルダー住友林業(株)
その他のステークホルダーインドネシア政府(環境林業省)、ジョグジャカルタ特別州政府、BKSDA(ジョグジャカルタ天然資源保護事務所)、地元大学(ガジャマダ大学)、地元小学校・養護学校、地域住民(農業組合含む)

現地の様子

社内の実施体制

担当部署

三井住友海上火災保険株式会社 経営企画部およびPT. Asuransi MSIG Indonesia(現地法人)

位置づけ

当初は社会貢献活動として位置づけていたが、近年は中期経営計画において「自然資本の持続可能性向上」・「気候変動への対応」を重点課題として位置づけており、社会と会社のサステナビリティのために重要な活動として考えている。

財源

  • 三井住友海上からインドネシアへの寄付
  • お客さまとともに地球環境保護を進める「MS&ADグリーンアースプロジェクト」の一環として、以下の取組に新しくご協力くださったお客さまの数に応じて会社が寄付を実施(費用は会社が負担)。本プロジェクトはその寄付先の一つ
    • eco保険証券やWeb約款を選択
    • ペーパーレス手続きの実施
    • 自動車修理時にリサイクル部品を選択

社内周知・理解促進のための工夫

  • 2014年、プロジェクトの社内周知を目的に、社員を対象としたスタディツアーを開始。植林体験、現地小学校の訪問・交流、オプションでの名所観光などインドネシアという国の魅力や、当社の活動が現地の方から感謝されていることを直接感じられるよう設定。
  • 希望する社員が自発的に参加するツアーのほか、役員の現地視察や現地スルタンとの会談の機会等を積極的に設け、プロジェクトの意義を経営層と社員の両方に伝えることを意識。2018年、社内外に本プロジェクトを伝える目的でこれまでの取組をまとめたDVDを作成。ホームページに掲載するほか、役員会議や社外イベントが始まる前に必ずこのDVDを流すことで、認知度が大きく向上。
    https://www.ms-ins.com/company/csr/environment/rainforest/

社外向け活動

植林活動の視える化の状況

媒体・イニシアティブ
自社Webサイト<日本語・英語>サステナビリティ/環境への取組として、植林プロジェクトを紹介するページを作成
統合報告書・サステナビリティレポート・ディスクロージャー誌生物多様性に関する取り組み、ネイチャーポジティブへの貢献取組として紹介
活動紹介動画活動を始めた経緯、活動の全体像等を4分ほどでわかりやすくまとめた動画を作成
広告素材サステナビリティに関する広告の素材として2種類を作成
ESG評価機関等からの評価を踏まえた情報開示ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス等に対して取組について回答するほか、ESG評価機関等が公開情報から評価・格付けを行うことが増えていることを踏まえ、必要な情報をわかりやすく公開

成果・その他の情報

  • 「森林の再生と持続可能な地域社会の形成」が評価され、2020年9月にはインドネシア政府から自然環境保護賞(企業部門)を受賞。
  • 「パリヤン野生動物保護林再生プロジェクト」はインドネシア環境林業省が初めて日本企業と連携した事例。
  • 森林再生、生物多様性の回復、環境教育、生計向上の4つの観点からそれぞれ植林プロジェクトのKPIを設定し、ウェブサイトで公開。
  • 2019年度の調査でのCO2吸収量は、14年間で約31,700t相当。
  • 野鳥・昆虫(チョウ・アリ等)のモニタリングの結果、生物多様性の回復を確認。
  • 住民による不法耕作・不法伐採は激減し、森林再生に大きく寄与。
  • 環境教育が近隣県で学習指導要領として位置づけられる等、その重要性と効果が高く評価。
  • 農業協同組合の設立や住民協働型植林プログラムの実施、社会林業による収入等、住民の生計向上に寄与。
  • 気候変動やネイチャーポジティブという概念が生まれる前から、現地政府と協働で約20年にわたって自然環境の再生と生物多様性の回復、地域社会経済を企業が支援してきた取組は他にほとんど例がなく、2030年に向けて今後行われる活動の一つのモデルになるのではないかと自負している。