バングラデシュ

バングラデシュ森林の概況

一般情報

バングラデシュ人民共和国(以下、バングラデシュ)は1971年にパキスタンから独立し、近年では年率6%強の経済成長を遂げ、1億6千万人という人口規模と豊富で安価な労働力により、成長市場として注目されている。国土面積は約1,476万haである。 バングラデシュでは、人口の約77%が農村部に住む。

バングラデシュには、3月から6月までの高温多湿の夏、6月から10月までの雨季のモンスーン、10月から3月までの涼しく乾燥した冬の3つの季節がある。一般的に、夏の最高気温は30℃から40℃である。4月は最も暖かく、1月が最も寒い。年間降雨量は2,666mm(2021年)である。バングラデシュはヒマラヤ山脈の麓の南に位置し、モンスーン風が西から北西に吹くため、北東部は平均降水量が最も多く、年間4,000mmを超えることもある。バングラデシュの雨の約80%はモンスーン期に降る。

図1は、2011年におけるバングラデシュの土地利用割合を示している。国土の65%以上が耕作地であり、11.1%が森林である。

図1 2011年の土地利用割合(FAOstat 2015, Bangladesh Forestry Master Plan 2017-2036)

森林の定義

バングラデシュ政府の定義では、面積0.5ha以上、樹高5.0m以上、樹冠率が10%以上、または将来この値に達することができる森(森林回復や再造林により)を森林とする。森林の定義を満たさない集落、農業用地、都市用地の土地で生育する樹木は森林に属さない樹木(Non-forest trees)とみなされる。(Forest Department https://bforest.gov.bd/site/page/eca2a291-b487-4c7a-8ce0-dbe5069524ac/-

森林面積

森林局によると、バングラデシュの森林総面積は約229万ha(2015年)と推定され、国土面積の15.5%に相当する。このうち、約160万haの森林を森林局が管理し、約69万haの森林を地方行政管理下の土地省で管理する。2000 年の森林総面積は約262万ha であったが、15 年間で森林総面積の12.4%に相当する32万haの森林が荒廃、または他の土地利用に転換された(年平均0.8%の減少率)。

バングラデシュでは、「林地」は全て政府所有の土地として、森林局またはチッタゴン地区土地省が国有林として管理している。法的実体および統治は、1927年の森林法(2000年改正)およびその他の森林関連法、条例、規則、政策に基づき確立されている。「林地」として指定されてない場所で植えられた木については、「林地外の樹木(Trees outside Forests, TOF)」として分類され、主に、居住地周辺の村落林・樹木園、帯状(strip)植林(線路、道路、堤防沿い)、その他植林(ゴム植林等)等が該当する。

国有林が減少する一方で、TOFは着実に増加している。燃料材の70%以上、竹の80%、国産材生産の半分以上はTOFからもたらされている。TOFからの森林資源供給があることで、「林地」への圧力を直接的に軽減することにつながる。また、TOFは家計への貢献、水質浄化、生物多様性の保全、土地の回復にも重要である。また、人口増加による土地不足のため、「林地」を拡大することは非常に困難なため、森林局は家庭での植林や沿岸部の堤防での社会林業、道路脇の植林などの参加型アプローチで「林地外の樹木」被覆の増加を目指している。表1は、森林区分、管理区分別の森林面積を示している。時期や集計方法の違いにより面積の数値が上記と一致しない。

法的分類規則/定義面積(ha管理者
Reserved Forest特別な許可がない限りすべての活動が禁止1,818,219森林局(1,884,160ha)
Protected Forest特別な禁止事項以外は、すべての活動が許可37,009
過去に大規模土地所有者から取得および権利付与された森林私有地内または公有林の保護のため、あるいは財産や環境の保護のためのその他の土地内での特定の活動の禁止。11,579
分類されていない国有林荒廃した国有林は、特に部族民による焼畑の影響を受ける。17,353
695,226チッタゴン地区土地省
合計面積2,579,386 
私有林(TOF)家屋周辺の村落林、樹木園270,000 *推定値FRA私有
帯状植林 (TOF)線路、道路、堤防沿いにある樹木等不明 *総延長10万km鉄道、道路・高速道路局、水開発局
その他植林(TOF)ゴム植林、沈香植林不明私有
表1 森林区分別の面積
出典: FRL for REDD+ (2018)を基に作成

バングラデシュ政府のREDD+戦略では2030年までに森林面積を15.5%から16%まで増加させることを目標としており、現在の森林管理は主に森林保護、保全、植林活動を中心としている。

森林の分布、劣化・減少要因

バングラデシュの森林は大きく以下の4つの主要森林景観に分類される。それぞれの特徴および基礎情報を表2に記載する。また、図2に示す地図は4つの主要森林景観の位置を示したものである。

Zone丘陵地マングローブ(Sundarban)サル (Shorea robusta) 林湿地帯(沿岸部)
特徴、エリアCHT地域を中心とする熱帯常緑樹林南西部のシュンドルボン地域、世界最大のマングローブ林ダッカの北に位置する熱帯湿潤落葉樹林高潮から住民を守るためマングローブを主要とする植林
分布割合60%26%5%9%
森林の減少・劣化要因 (REDD2022)違法な薪炭材・木材伐採、移動耕作、商業的な農業(フルーツ、タバコなど)、貧困、人口密度、不透明な土地所有権水質汚染、塩害、清涼水の減少、サイクロン違法な薪炭材・木材伐採、居住・工業化・農業のための蚕食、不透明な土地所有権、汚職、低い教育違法な薪炭材・木材伐採、エビ養殖、農業・工業化、サイクロン、魚介類の需要、低い教育、不透明な土地所有権
平均標高(FRL2019)125m6m(2~9m)17m3m
水域(FRL2019)3%37%3%55%
表2 バングラデシュの4つの主要森林景観とその特徴
出典:FRL for REDD+ (2018) を基に作成
図2 バングラデシュ国バングラデシュ森林インベントリーゾーンマップ
出典:Bangladesh National REDD+ Strategy 2016-2030

森林政策

バングラデシュの森林政策は、森林法(The Forest Act)、国家森林政策(National Forest Policy)が基盤であり、その目的は、国の森林資産の保護を強化し、保全に重点を置くと同時に、農村経済と産業経済を発展させることである。

国家の森林に係る課題は、持続可能な森林管理(SFM)、コミュニティ参加、生物多様性保護、森林の再生と植林、気候変動への対応などである。

政策内容
Bangladesh Forestry Master Plan 2017-2036バングラデシュの森林に係る現状分析と課題の整理に基づいて、森林行政が取り組むべき施策と実施に必要な財源確保の方針について、13の課題と14の計画と戦略を示す。 【植林に関する課題】 -人工林の造成と維持管理 -TOFに対する参加型林業の強化と拡大 【植林に関する計画と戦略】 -荒廃林の再植林と植生回復 -未分類の森林を含む国有林外での新規造林と再造林 -緑地帯を含む沿岸部の新規植林 -特用林産物のプランテーションと関連企業
Bangladesh National REDD+ Strategy 2016-2030(1) 既存森林 126万9,070 ha を保全。63万7,259 ha の裸地を植林(注:森林内と森林外の土地)。荒廃森林17万3,498 ha の植生回復を促進。これにより全国の森林率を15.5%から16.0%に向上させる。 (2) 森林管理の強化、住民の生計改善と違法な開墾定住、薪炭材採取の圧力低減。 (3) 以下6 つの課題を設定し17 の施策を提案。 1) 代替エネルギーと効率化の技術、木材の代替資源の供給を促進する 2) 森林が分布する地方で燃材供給量を向上させる 3) 森林に依存する住民の生計を改善する 4) 森林が分布する土地の所有権に係る問題を解決する 5) 森林行政関係者の実務能力向上を図る 6) 植林と森林植生の回復、保全を進める
National Forest Policy 2016 (Final Draft)Annex 4 国家森林政策を実施するための戦略とコンセプト:森林政策と行政で使われるキーワードを定義 4.4 気候変動に強靭な林業 (Climate Resilient Forestry): – 気候変動が森林生態系に与える影響 – Nature-based Solution (NbS)の重要性: レジリエンス強化のため沿岸部の植林とマングローブの再生 – 森林の炭素蓄積増加 – 森林に依存する住民(forest-dependent community)との共同管理(Collaborative Management)の重要性
表3 バングラデシュの主要な森林政策
出典:「バングラデシュ国気候変動対策に資する森林・自然資源分野の情報収集・確認調査」(JICA/日本工営, 2024)より抜粋

植林関連

植林に関する政策

バングラデシュ独立前の1894年に当時の政府によって、最初の正式な森林政策が策定された。この政策は、地域の森林管理のための法律や規則を策定するための基本的な指針となっている。1955年の改訂では、収入を得るための森林施業から、伐採後に森林再生への移行が示された。1994年の改訂では、参加型林業の概念が取り入れられ、社会林業分野におけるNGOと政府機関による支援が促進された。2016年の森林政策案では、「バングラデシュの現在と将来の世代のために、持続可能な管理と気候変動への耐性を守りながら、現存するすべての森林、野生生物、その他の林業資源を管理し、劣化した森林地域を豊かにし、森林や樹木に覆われた土地面積を拡大し、さまざまな商品や生態系サービスを生産すること」を目的としている。植林に関係する特筆すべき点を以下に示す。

  • すべての森林において、林業以外の活動は許容されない。国益に関わる活動の場合は、代替の植林に必要な資金と共に、同等の面積を森林局に引き渡す。
  • 企業や団体の資金を森林再生活動に回すことを奨励し、すべての森林収益を森林の再生プログラムに還元する。
  • 新たに形成される堆砂地は全て森林局に引き渡され、気候変動に強い樹種で大規模な植林が実施される。
  • コミュニティが権利と責任を持ち、権限を委譲され、社会経済的・環境的便益と林業生産増加のための林業活動に参加できるようにする。
  • 気候変動が引き起こす災害の影響に対する沿岸地域社会の脆弱性を軽減するため、生育するマングローブをはじめ気候変動に強い樹種からなる「沿岸グリーンベルト」を作る。

森林は他の国家政策とも密接に関連する。農地保護に重点を置く国土利用政策(2001年)は土地利用に関係しており、しばしば森林政策と矛盾することが指摘されている。例として、林地の農地転用やマングローブ林での漁業の実施に制限がないことで、急斜面の丘陵地やマングローブ林が農業、漁業のために利用されている。一方、環境政策は森林政策と互換性を持ち、森林政策の強化にもつながっている。

植林の歴史

バングラデシュには、19世紀からの長い植林の歴史と経験がある。丘陵地帯のチーク植林から、マングローブや非マングローブ種の沿岸植林、内陸部での社会林業へと発展してきた。社会林業と沿岸植林が、現在の主な植林プログラムである。また、政府の植林プログラムとは別に、多くのNGOと協力し、国民全体が私有地、施設用地、コミュニティ用地への植林に積極的に取り組んでいる。

これまで、政府(森林局)が実施してきた植林のタイプを表4に示す。

植林タイプ内容
沿岸植林高潮やサイクロンから沿岸地域の生命や財産を守り、脆弱な土地を安定させ、木材需要を満たすことを目的として、1965年からマングローブ植林を開始。ココナッツ、ヤシ、竹、サトウキビ等の植林も含まれる。
社会林業植林国有林内での土地を持たない貧困層の侵入による森林破壊を背景とし、立ち退きの代わりに指定地域での植林活動の実施を目的とする。
参加型天然サル林管理農地に転用しやすく人口増加の圧力にさらされているサル(Shorea robusta)林の参加型管理を2001年から開始。
Barind区域の参加型水源保護と植林家庭用水や灌漑用の重要な水源である貯水池で、地元コミュニティと協力して、水源の保護・開発をする水源の再掘削と植林プログラムの実施を目的とする。
参加型緩衝地帯植林国立公園や野生生物保護区にて、生物多様性、環境、土壌、水、野生生物の保護を目的として地域住民の参加を得て保全・開発するプログラム。地域の林産物需要と貧困の削減にも貢献する。
チッタゴンにおける参加型林業を通じた住民生計向上各世帯に2haの土地が提供され、Silvi-Agri農園の開発とブロックプランテーションを実施。
屋敷林政府の重要な植林プログラム。家の周りに防風林を作ることによってサイクロンや潮の満ち引きから家を守ることと環境保全が主な目的。果樹用、木材用の苗木が補助金付きで農村世帯に配布され、家庭レベルで膨大な量の樹木資源が創出された。鳥類の営巣環境などの環境面の他、食料、薪、木材を家庭に供給。
施設型植林公共機関や都市中心部の再緑化を目的として全国で実施。学校、大学などの教育機関、モスク、寺院、教会の敷地、墓地、オフィスビルなど、さまざまな施設内の空いている場所で植樹を実施。チッタゴン大学のキャンパスでは、835本以上を植林した(Momen et al. 2006)。
都市植林近年、都市部の急激な人口増加により都市の緑が失われ都市環境を悪化させていることを背景に、1992年からナガール・バナヤン・プロジェクトの下でプログラムを開始。
竹、サトウキビ、ムルタ植林バングラデシュの家内工業にとって重要な原材料である竹、サトウキビ、ムルタ(Lagerstroemia speciosa)の住民参加型植林を実施。
薬用植物植林漢方薬の需要が年々増加していることを背景に、薬用植物の保護と漢方薬の莫大な需要を満たすため、植林と保護に重点を置いたプログラム。
ニーム植林環境に優しく高い薬効と殺虫効果があるニーム(Azadiracta indica)の植林のための大規模なプログラム。
ココナッツ・プランテーションココナッツオイルやその他のココナッツ由来製品の自給を達成する目的で2003年に開始した植林プログラム。
Agarwoodプランテーション地元の香水産業のため、香水産業の唯一の原料であるAgar(香木)植林をシレット、チッタゴン、コックスバザールの丘陵林地域で実施。
気候変動対策のための参加型植林・再植林(CRPARP)参加型計画やモニタリングを通じて森林劣化の抑制、森林被覆率の向上により沿岸地域と丘陵地域の長期的なレジリエンス構築に貢献することを目的とした植林。道路沿いの帯状植林が含まれる。
表4 過去森林局が実施した植林タイプ
出典:「Plantation Forestry: Paradigm to meet the demand of forestry Resources in Bangladesh」(Mohammed Kamal Hossain(Professor, University of Chittagong), 2016)

植林の実績

National Biodiversity Conservation Strategy and Action Plan(2016)によると、2015 年までに政府によって植林された面積は約 47万ha である。社会林業プログラムのもとで実施された約7万haの植林と、約6万kmの帯状植林が含まれる。帯状植林は、過去に多くのNGOが社会林業プログラムの一環として推進したものであるため、実際の面積は、森林局の記録よりもはるかに多い可能性がある。一方で、社会林業の植林地は、輪伐期で利用されるため、実際の植林面積はもっと少ない可能性があると指摘されている。

これまでに実施された沿岸植林の面積は、およそ20万haと推定される。沿岸植林は、主に新たに形成された土地(堆砂地)を安定させる目的で実施されてきた。この土地は、植林を行うために20年間森林局に与えられ、期間が終了すると歳入局に返還しなければならない。沿岸植林の失敗、破壊、転用により、実際の沿岸植林面積は、20万ha以上の植林実績に対し、約6万haしかない。

屋敷林植林の大部分は、マンゴー、ジャックフルーツ、ココナッツなどの果樹である。バングラデシュ統計局(BBS)は2014年に「家計ベースの林業調査2011-12」を実施し、国内の91.9%の世帯が樹木を所有していることを記録した。また、ゴム植林と香木植林はTOFセクターに貢献している。香木は経済的な将来性から注目されている。

また、森林局のウェブサイトでは、Bhola, Patuakhali, Noakhali, Chittagong, BarisalのForest Divisionの沿岸植林の実績を公開している。 表5はBhola Costalのみの抜粋である。

No.Name of Project / Programme (Duration)Mangrove (ha.)ニッパヤシ(ha.)Non Mangrove (ha.)全長  (km)
1Coastal Embankment Afforestation Project (1966-67 to 1970-71)300.64150.000.000.00
2Coastal Afforestation Project (CAP) (1973-74 to 1979-80)5,513.200.00185.000.00
3Mangrove Afforestation Project (MAP) (1980-81 to 1984-85)10,403.840.000.001.61
4Second Forestry Project (1985-86 to 1991-92)7,715.6015.38306.108.00
5Thana Afforestation & Nursery Development Project (TANDP) (1991-92 to 1994-95)0.000.00157.00271.23
6Forest Resources Management Project (FRMP) (1992-93 to 2004-05)5,845.000.000.000.00
7Coastal Green Belt Project (CGP) (1996-97 to 2002-03)0.000.000.00823.83
8Extended Social Afforestation Project (1995-96 to 1996-97)0.000.000.006.00
9Second Bhola Irrigation Project (1996-97 to 1997-98)0.000.000.00133.00
10Extended Forest Resources Management (EFRMP) Project (2002-03 to 2004-05)800.000.000.000.00
11Forestry Sector Project (FSP) (1997-98 to 2005-06)0.000.000.0028.00
12Poverty Alleviation through partnership Project (2006-07 to 2007-08)0.000.0050.000.00
13Coastal Charland Afforestation Project (2005-06 to 2009-10)5,360.000.00100.000.00
14Afforestation in the Coastal Areas to Mitigate Adverse Effects of Climate Change Project (2010-11 to 2012-13)1,600.000.0025.0035.00
15Community based Adaptation to Climate Change through Coastal Afforestation in Bangladesh Project (Revised) (July 2009 to June. 2014)1,000.0050.00217.0010.00
表5 Bhola Coastal Forest Division(抜粋)

植林樹種

初期の主要樹種がチーク、マホガニー(Swietenia macrophyllaで、1974年には成長の早いGmelina arborea、Paraserianthes falcataria、Anthocephalus chinensisの植林が開始された。1978年以降、ユーカリ、アカシアの大規模な試験植林が開始され、荒廃した土地に適した成長の早い外来種が植林された。

記録によると、バングラデシュの植林計画ではこれまでに130種以上の外来樹種植林が試みられた(Hossain et al. )。植林が成功した外来種の一部と、植林プログラムにおけるその状況を表6に示す。

樹種名原産状況
Acacia auriculiformisオーストラリア全国的に広く利用。
Acacia mangiumオーストラリア/パプアニューギニア有望な品種だが、心腐れ病が蔓延しているため非推奨。
Eucalyptu camaldulensisオーストラリア政府主導植林では使用しない。小規模農家や個人は、耕作放棄地等に好んで植林。
Eucalyptus teretricornisオーストラリア植林地は限られる。E. camaldulensisと混在することが多い。
Hevea brasiliensis (パラゴムノキ)ブラジル/マレーシア丘陵地林やサル林地域で商業的に発展。
Khaya anthoathecaインド道端や施設、民家などで個人により広く植林される。成長が遅い。
Leucaena leucocephala (ギンネム)中米平野部や沿岸部で植林。
Melaleuca leucadendraオーストラリア植林は限定的。
Paraserianthes falcatariaジャワ早生樹種として植林。
Pinus caribaeaホンジュラス小規模植林に限定
Pinus oocarpaホンジュラス小規模植林に限定
Samanea saman西インド地方主に道端や民家で植林。
Swietenia macrophylla (オオバマホガニー)西インド地方森林、限界地、施設、民家で広く植林。
Tectona grandis (チーク)ミャンマー人工林における帰化種であり優占種。
Xylia xylocarpaミャンマー有望樹種だが、植林は限定的。
表6 バングラデシュで植林に利用された外来樹種
出典:「Plantation Forestry: Paradigm to meet the demand of forestry Resources in Bangladesh」(Mohammed Kamal Hossain(Professor, University of Chittagong), 2016)

バングラデシュでは、外来種を用いた植林プログラムは、苗木の育成や植林活動で雇用を創出することで、農村の人々の社会経済状況の改善にも役立っている。 社会林業プログラムにおける一部の外来種は、短期間で収益を得ることができるため、住民は社会林業プログラムに参加するようになった。特に、A. auriculiformis のような先駆的なコロニー形成種は、荒廃した森林地域に植生被覆を形成することができる。

植林ポテンシャル

植林可能エリア

バングラデシュでは、急激な人口増加により貧困住民による農地利用開拓や違法伐採などの人口圧力が高く植林地の確保が困難と言われている。一方で、劣化した森林地などで国土面積の約31%が社会林業プログラムによる植林を普及させる余地のある土地であるとする論文(Plantation Forestry: Paradigm to meet the demand of forestry Resources in Bangladesh(Mohammed Kamal Hossain(チッタゴン大学教授), 2016))がある。

これらの土地が社会林業プログラムの下に置かれると仮定すると毎年46.5万haの植林が可能となり、食糧、収入、雇用機会の提供が可能となる。以下がその植林可能とされる土地である。

  • Degraded & denuded land of Unclassed State Forest Land (国土に占める割合6%)
  • Khas lands(政府が所有する農業・開発用地で未開発地や不毛地も含まれる) (3.7%)
  • Degraded government forest land (1.8%)
  • Marginal strip land (0.5%)
  • Homestead marginal land (1.8%)
  • Degraded tea garden land (0.4%)
  • Degraded private forest land (0.3%)
  • Cropland Agroforestry on private agricultural lands (16%)

World Resources Instituteが自然環境要因、社会的要因を加味したうえで、今後の森林植生の回復見込みがあるとした森林再生可能エリアを図3に示す。

出典:Atlas of Forest Landscape Restoration Opportunities  https://www.wri.org/applications/maps/flr-atlas/#

植林課題

樹種選択

ユーカリ、アカシア、マツなどの外来種の植林については、林業業者、生態学者、植物学者、自然保護論者、政策立案者の間で、植林計画における外来樹種の無秩序な導入の脅威に対する懸念が高まっている。一方で、生育の早い外来種は木材需要にこたえるためにも期待が高く有望な樹種となっている。森林マスタープランでは、社会林業植林での土地に適した樹種選択、小さなパッチや適切な間隔で在来種との混植など、生態系への影響や病虫害のリスクなどを考慮しながらの実践を目指している。

土地問題

バングラデシュは人口圧力が高く貧困層の農業や漁業などと土地の利用目的が競合している。地域によっては森林局と住民がReserved Forest内で土地をめぐる対立的な関係が生じている。

沿岸植林

沿岸地域の気候変動への脆弱性が課題となっており、気候変動に強い樹種の植林による防災・減災効果で沿岸部の住民の生命、財産を守ることが求められている。ただし、沿岸部では住民が飼育する水牛が成長前の苗木を食べたり踏みつけたりする被害が報告されており、沿岸植林地では柵を設置することが重要とされている。

社会林業植林

社会林業は大きく前進しているが、本来の意味でのアグロフォレストリーはあまり進んでいない。空き地には樹木が植えられているが、農作物との混植はあまり進んでいない。適切なアグロフォレストリーの実践の促進のための普及が求められている。

種子、苗木の調達

バングラデシュでは、植林プログラムにおいて高品質の種子や資源を調達する文化がなく、近隣の植林地から現地調達をすることが一般的であることが生産性を下げる原因の一つとされている。

クレジットプロジェクト

ID名称提案者方法論年間排出削減量 t-CO2(概算)状態クレジット開始日クレジット終了日
4456CREATING LIVELIHOOD OPPORTUNITIES AND CARBON CREDIT INCOME FOR SMALLHOLDER FARMERS THROUGH HORTICULTURAL PLANTATIONS IN BANGLADESHVaraha ClimateAg Private LimitedAR-ACM0003567,407登録、承認申請中2020/6/152040/6/14
4306Regenerative Agriculture with small holder farming communities of BangladeshMultiple ProponentsVM001726,809登録申請中2022/6/112042/6/10
表7 Verraの登録プロジェクト

植林に携わる民間企業やNGO

団体名概要対象地
東京海上日動 https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/world/greengift/mangrove/bangladesh/  (オイスカと共同実施)事業名 Green Giftプロジェクト(マングローブ植林)(対象9か国のうちの1つ) 実施期間:2019年~ 実績:38ha(2023年度)(累計340ha) マングローブ植林コックスバザール県モヘシカリ郡ドルガット
オイスカ https://oisca.org/ 事業名 「子供の森」計画 実施期間 1992年~ 実績:植林400本、面積0.24ha(2023年度実績)    Mahogany、マンゴー、ゾウノリンゴなど *植林9万1,838本、面積72.67ha、参加校239校(1992年からの累計) 1991年から開始したプログラムで、2024年3月末時点で37か国・地域で5,500以上の学校が参加ダッカ・ラッシャイ・バリサル地方、チッタゴン
バングラデシュ日本通運株式会社(NXバングラデシュ) https://www.nipponexpress-holdings.com/en/press/2024/10-Jul-24-1.html 事業名 小学校での植樹活動 実施期間:2024年7月 実績:CSR活動の一環として小学校に苗木250本を寄贈。社員と生徒による学校植林と、生徒の各過程での植林を実施。Jantrail Government Primary School No. 127 in Nawabgani Upazila, Dhaka District
ハンファジャパン株式会社事業名 「Green Alliance(グリーンアライアンス)」 実施期間:2024年~ 実績:15.ha、6,800本のマングローブ植林 ・Aviccinia Officinalis、Nypa Fruticans(ニッパヤシ)、Soneratia apetala、Soneratia Casiolaris(ナンヨウマヤプシキ)クルナ管区(シュンドルボン)
日本環境教育フォーラム https://www.jeef.or.jp/ 事業名 スンダルバンス地域周辺農村部でのマングローブ保全活動 期間:2015年 実績:2,000本のマングローブ植林 (経団連自然保護基金助成金事業) *バングラデシュ・ジョショール県の零細ヤシ砂糖生産者と花卉農家の6次産業化を通じた生計向上プロジェクト(2023-2026)等の実施実績クルナ管区(シュンドルボン)
バングラデシュ・ボンドゥ財団 https://www.bondhufoundation.org/  事業名 Climate Friendly (気候に優しい植林) 実施期間:2022年~ 実績:Kabi Nazrul Park, Jadavpur, Tangailでサル林の苗木を植林 植樹した住民に40タカ*/本、5年後に生きている木に対し10タカ/本、10年後に10タカ/本の財政支援 2025年までに2,000万本の植林を予定対象は全土
Friendship Foundation https://friendship.ngo/friendship-and-biodiversity/ 事業名 マングローブ植林プロジェクト 実績:60万本(200ha)、民間所有の最大のマングローブ植林 142のコミュニティ、4,260人に直接的な利益、沿岸部の8万2,109人に間接的な利益を提供Assasuni and Shymnagar Upazila, Satkhira District
Bangladesh Environmental NGO Network (BEN) http://www.ben.org.bd/ 事業名 GREEN BANGLADESH INITIATIVE 実施期間:2020年~ 実績:100,000本、500エーカー 植栽樹種:マングローブ、マホガニー、チーク国内複数個所
BRAC https://safe.menlosecurity.com/doc/docview/viewer/docNB8CF50D001189990c47de3f0e21e1bba2026072a39244fefa6df107e9ec5aa26fbb3b007eed8 事業名 BUILDING MANGROVE FORESTS(気候変動緩和のためのマングローブ植林と代替生計プロジェクト) 実施期間:2021年8月~2022年10月(第1フェーズ)、第2フェーズも予定 実績:4万本、17エーカー、492ton -CO2温室効果ガス排出のオフセットに相当 植栽樹種:マングローブMirsharai Upazila, Chattogram
Dhaka South City Corporation (in collaboration with local NGOs) http://www.dscc.gov.bd/   事業名 URBAN GREENING PROJECT (都市緑化の推進と大気汚染の改善) 実施期間:2022年~ 実績:5万本、200エーカー 植栽樹種:レインツリー、Gulmohar、Banyanダッカ
ActionAid Bangladesh https://www.actionaid.org/bangladesh 事業名 Community Forest Project 実施期間:2021年~ 実績:8万本、400エーカー 植栽樹種:竹、Betel leaf、ココナッツVarious community forests
表8 フィリピンでの民間企業・NGOによる植林活動例
*タカはバングラデシュの通貨単位

植林に関する参考文献リスト

植林に関する参考資料リスト