マダガスカルにおけるユーカリ造林の成長を予測する
2022年03月09日
キーワード
土壌物理性、土壌化学性、Eucalyptus grandis、オキシソル
どんな記事?
王子製紙株式会社はアフリカのマダガスカル共和国東部において100haのCDM植林を2006年から実施しています。その中で、植栽樹種の一つ、ユーカリ(Eucalyptus grandis)の植栽2年後の樹高成長について、植栽地の地形や土壌養分との関係を松平昇氏が統計的手法により解析しました。このユーカリの初期成長を、地形要素(傾斜や方位等)や土壌(色や土性)、植生(被度や草丈)等の現地で観察できる要因を用いて、統計解析(数量化I類)したところ、高い確率(樹相関係数0.80)で2年生の成長が予測できました。それによると、斜面が凹地形、土色は灰白色系、A層が20cm以上、土性が砂質壌土~壌土で成長が良く、2年生の平均樹高は8.8mと予測されました。さらに土壌の化学性分析値(土壌pH、窒素、リン、カリウム、交換性陽イオン等の21成分)で統計解析(重回帰分析)を行ったところ、ユーカリの樹高とはやはり高い確率(重相関係数0.82)で関係が認められました。土壌の炭素1%以上、窒素0.1%以上、全リン酸0.05%、陽イオン交換容量3cmol/kg以上でよい成長が期待できました。植栽地の土壌は風化の進んだ土壌(オキシソル)でしたが、45地点の土壌分析値は均一ではなく10倍以上の差があり、土壌養分の状態がユーカリの成長に反映していました。
CDM植林では樹木の成長に伴うCO2吸収量の予測が重要です。特別許可を得て土壌を輸入し日本で分析した貴重な土壌データと地形要因など現地データを組み合わせると、より簡便で正確な予測が得られるでしょう。今回は初期成長ですが、より長期的な予測につながること、植林がCO2の固定と住民の生活向上につながることを著者とともに期待したいと思います。
紹介記事
マダガスカルにおけるCDM試験植林地(第二報)2年間の成長状況と地形・土壌要因と成長の関係解析
松平昇(2010)海外の森林と林業 77: 44-47