石炭採掘跡地の森林回復
2020年12月21日
キーワード
インドネシア、酸性硫酸塩土壌、土壌流亡、マメ科樹種
どんな記事?
インドネシアは近年発電用の石炭輸出が急増し、主にカリマンタン州の各地に露天掘りの跡地がみられます。石炭採掘跡地の復旧はインドネシア政府としても重要な課題で、各種政令や林業大臣令が出されています。
石炭跡地は大型重機が走行するため土壌は締固められ、著しく堅密で雨水が浸透せず、表土流亡を起こすことがあります。また、採掘時の残渣にはときどきパイライト(空気に触れて酸化すると強酸性の酸性硫酸塩土壌になる)が含まれることがあり、植林を著しく困難にしています。国際緑化推進センターの仲摩らは、南カリマンタン州の石炭採掘跡地の植林で、重機により土壌を好転したり、客土(外から別の土を入れる)したり、施肥をするなど処理を行い、8樹種で植栽試験を行いました。その結果、15か月後の生残率は38~73%で、樹高は約1m~2.3mになりました。パイライトを含む採掘残渣が混入したところは植栽木がすべて枯死していまいました。残渣にはアルカリ性のもありました。全体に窒素に乏しく、土壌の物理化学性は非常に劣悪でした。このような石炭採掘跡地の森林回復のためには、客土が有効ですが、用いる土壌が悪いと効果はありません。施肥で成長を補ったり、マメ科樹種を混植したり、天然に侵入するパイオニア樹種を利用したりして、できるだけ早期に植生を回復させ、土壌流亡を防ぐことが重要と考えられました。
石炭火力発電は議論のあるところですが、少なくとも石炭採掘跡地は速やかに森林を再生させることが必要です。現在、インドネシア政府は石炭採掘業者に採掘跡地の埋立の義務化を求めています(改正鉱物石炭法「2020年第3号第99条」)。現在のところ、パイライトを含む土壌への植林技術は十分に確立しておらず、各地で様々な取り組みが行われています。今後の技術の発展が望まれます。
紹介記事
インドネシア南カリマンタン州における石炭採掘跡地の森林回復技術
仲摩栄一郎ほか(2014) 海外の森林と林業91:20–25