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森林の生物多様性アセスメントの方法

2022年03月09日

キーワード

生物多様性評価、生態系サービス、持続可能な森林経営、SDGs

どんな記事?

近年、生物多様性への関心が高く、森林の持続的利用の指標になっています。では、森林施業や利用計画を策定する場合、生物多様性をどのように評価すればよいのでしょうか。東北大学(当時)の中静氏らは、100名以上が参加した大型プロジェクト研究を主導し、それで得られた考え方やアセスメント手法の一端を紹介しています。

生物多様性アセスメントは事業実施を前提としたアセスメントではなく、複数の森林利用シナリオに基づき影響を予測し、オプションを提示するような戦略アセスメントが良いとしています。それは例えば、生態系から私たちが得られるサービスである木材生産や炭素吸収を考えると、熱帯雨林のような生物多様性の高い森林よりも、成長の速い単純林の方がよいですが、病虫害の発生しやすいリスクがあります。生態系の各種サービスの間には必ず矛盾やトレードオフがあり、一方的な判断はできないからです。そのため、森林の生物多様性を変化させる原因を特定し、人々の生活を含めた影響を評価し、原因に対する社会的・経済的影響の仕組みを理解することが必要です。そのためには、過去の森林利用やその影響を定量的に解析したり、森林の変化が生物多様性に与える影響を統一した手法で評価することも必要となるでしょう。この記事では、サービス間のトレードオフの関係や簡単な結論付けが難しい例がいろいろ紹介されています。そのような事例を理解した上で、利用予定の対象地をどう扱うか複数のシナリオを提示し、住民や行政が判断できるようなオプションを示すことの意義を説明しています。最後に、森林の持続的利用のための評価基準の例や、それを実施するための制度設計について紹介し、今後の課題に言及しています。生物多様性を社会の仕組みの中に取り入れることを目指した先導的なプロジェクト成果が、持続可能な社会を目指したSDGsの取り組みに活かされることを期待させます。

紹介記事

森林の生物多様性はどのように行うべきか
中静透・市川昌広(2008)海外の森林と林業 72: 9–14

その他参考文献 https://core.ac.uk/reader/160247974

JIFPRO注)農林水産省でも森林と生物多様性の検討が行われ、平成21年7月「森林における生物多様性の保全及び持続可能な利用の推進方策」が示されている。
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/s_senryaku/seibutu_tayo/14/pdf/siryo1-2.pdf

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