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ラテライトの硬盤層に水たまりを作る

2020年12月21日

キーワード

アフリカ、マリ共和国、ラテライト硬盤層

どんな記事?

アフリカのラテライト土壌には鉄アルミニウムが固結した硬盤層が出現することがあります。この層は非常に硬く根は通りません。硬盤層の深さが浅いと土壌の有効水も少なく、また、表面にクラスト(被膜)層ができやすいため、雨の浸透も悪くなります。そこで、NPO法人サヘルの森では、植栽場所の周囲に木の枝や石で土手を作り、雨の流出をとめて水たまりを作りました。すると、砂塵が堆積し土壌動物も定着し、土壌の浸透性が回復し、草木も芽生えてきました。このような場所には在来のアカシア(Acacia nilotica)が適していることもわかりました。

さらに硬盤層のある周囲をよく観察すると、シロアリの塚が点在し、灌木がシロアリ塚に自生することに気づきました。シロアリは多くの種類がいますが、このシロアリは木本類を食べる種ではなく、草本の茎を巣内で培養して菌を食べるタイプでした。そこでアリ塚のわきに植栽してみると、おおむね順調に生育しました。地中深くに広がるシロアリの巣を伝って根系が下層土に伸長しているためと考えられました注)

土木的な手法で水を確保したり、硬盤層を破壊する大規模な事業もありますが、現地で調達できる材料と自然の生態系を活かして植生を回復される技術として大変興味深い手法です。大規模な事業化はできなませんが、現地住民の知恵も借りて技術化した手法は、協力が終了しても持続的に利用されるでしょう。

JIFPRO注)

硬盤層は鉄分が固結した層なので、シロアリは破砕できない。おそらく、巣穴は水平方向に広がって集水エリアが拡大したと考えられる。

紹介記事

荒廃地に木を植える -マリ共和国での植林技術の開発-
榎本肇(2015) 海外の森林と林業92:49–53

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