造林地の成長を最大にする植林密度と期間
2020年12月21日
キーワード
ユーカリ、植栽密度、育林年数、年成長量
どんな記事?
樹木の成長は気温と降水量でおおよそ予想が可能です。では、どのくらいの植栽密度で植栽し、何年くらい育成すると年間の成長量が最大になるでしょうか。
森林総合研究所の斉藤昌宏氏らは、早成樹種として植栽されるユーカリ3種(Eucalyptus camaldulensis、E. grandis、E. globulus)について、世界各地の植林データを集め、統計解析を行いました。その結果、南米の機械化が進んだ産業植林とそれ以外の地域では結果が大きく異なることが分かりました。南米の産業植林は施肥、土壌改良、灌水などの最適化が進んでおり、データのばらつきが小さく、最大年成長量は非常に大きいものでした(40~55 m3 ha-1 y-1)。一方、南米以外の地域は植林手法が異なり、荒廃地植林にも植栽されています。成長の悪い林分のデータも含まれるため、データのばらつきが大きく、全体の年成長量も小さめでした。例えば、E. camaldulensisiは南米の産業植林では2000本/ha、10~12年で40 m3 ha-1 y-1に達しましたが、それ以外の国では3000本/ha、8年で15 m3 ha-1 y-1程度が最大でした。ユーカリは育種が進んでおり、E. globulusとE. grandisは地域に適した品種の導入が成長量を大きしていました。その他の地域では南米ほど育林技術が最適化されておらず、今後の試験研究により成長量を増強できる可能性があります。ただし、ユーカリ植林は荒廃地の環境回復でも利用されます。そのような場合、収穫量が目標ではありません。長い期間をかけて緑化し、環境を回復させることが目標ですので、地域のニーズに沿った適切な植林計画の設定が重要です。
紹介記事
早生樹種の成長量を最大にする造林方法 (2)密度と栽培期間
斉藤昌宏ほか(2008) 海外の森林と林業71:19–24