植林後8年目の成長を評価
2020年12月21日
キーワード
早生郷土樹種、マレーシア、フタバガキ科
どんな記事?
日本の支援により多くの国で植林活動が行われてきましたが、植林後の経過を長期的に観察された例はほとんどありません。植林した苗木は今どうなっているのでしょう。JICAにより半島マレーシアで行われた早生郷土樹種プロジェクトの試験地を8年後に再測定した貴重な報告があります。JICA事業では低地フタバガキ林の皆伐後にアカシアマンギウムが植栽された区画と、皆伐後に侵入したパイオニアが二次林化した区画、低木のままの状態の区画に、数種の郷土樹種を植栽し、刈り払い等の効果も比較しています。JICA事業では18カ月目までの成長経過の記録が残されています。そこを国際農林業研究センターの大谷達也氏(当時)が再訪し、8年目の樹高を調査しました。その結果、初期成長でみられた傾向とは大きく異なる結果が得られました。
例えば、Shorea ovalis(フタバガキ科)は初期の生残率も成長も低かったものの、残存木の樹高成長は初期の倍程度と大きく、今後の成長が期待できました。一方、Peronema canescens(クマツヅラ科)の場合、18カ月まではおおむね75%以上の高い生残率を示しましていました。しかし、8年目の残存率はほぼ25%以下で、原因はわかりませんが、その間に大量に枯死していることがわかりました。また、初期の刈り払いや除草剤による処理の効果は8年後にも認められました。
森林の成立は長い年月がかかります。過去の植林地を再度調査する意義は大きいことがわかります。もちろん、初期のデータや試験地情報が管理されていることが前提であることは言うまでもありません。森林減少を食い止めるには植林だけでなく、長期的な取り組みが欠かせません。
紹介記事
半島マレーシア ビドーにおけるJICA試験地の再評価-早生郷土樹種プロジェクトによる植栽木の8年後の生残と成長-
大谷達也(2010)海外の森林と林業 77:20–25