森林再生テクニカルノート(TPPs)は、途上国の劣化が進んだ森林や開発後に放棄され荒廃した土地等において、効果的な森林の再生に大きく貢献する技術集です。
穿孔性害虫とは、樹木の樹幹、枝、新梢に穿孔する害虫で、主にコウチュウ目、ハエ目、チョウ目及びハチ目に属する。生立木に穿孔すると、樹幹の歪み、屈曲、分岐、又は折損が発生し、その内部の材質を劣化させ、枯死に結びつくことも多い。被害は、樹木の枯死以外にも、被害部の奇形、屈曲、膨隆や穿入部からの虫糞、木屑の排泄等で知ることができる。被害の兆候は葉の変色、穿入孔や脱出孔、若しくはそこから排泄される虫糞、木屑、ヤニ等によって探知できる。
チョウ目の穿孔虫は健全木にも穿孔加害できる。コウモリガ類は、針葉樹及び広葉樹の小・中径木を、ボクトウガ類は、広葉樹の幹及び枝に穿孔する。ボクトウガの幼虫は、ビーホール(蜂穴)ボーラーと呼ばれており、東南アジアではチークの有名な害虫である。
“しんくい虫(シュートボーラー)”は、ハマキガ科とメイガ科に属する害虫で、新梢の髄部に穿孔食害し、加害部よりも上部を枯らす。マホガニーにつく、マダラメイガ類は世界的な熱帯の造林阻害害虫となっている。メルクシマツの新梢にもマダラメイガ類の被害が多く、新植造林地の幼・若齢木に被害が目立つ。これらの中には、幹又は球果に穿孔する種類もいる。
コウチュウ目の穿孔虫は、主にカミキリムシ類、ゾウムシ類、キクイムシ類、ナガキクイムシ類及びタマムシ類が存在する。カミキリムシ類、ゾウムシ類及びタマムシ類は、成虫が樹皮の上から産卵するが、キクイムシ類及びナガキクイムシ類は、成虫が樹皮下や材部に穿孔して巣をつくり産卵する。
普通これらは、衰弱木、老齢過熱木、被圧木、並びに気象害・雪害・火傷・虫害・病害・その他の生物害を受け衰弱した樹木に穿孔し繁殖する。したがって、樹木を適所に植栽(適地適木)して健全に育成管理することが、これら穿孔虫被害の予防につながる。
他方、広葉樹につくカミキリムシ類の一部やチビタマムシ類は健全木に産卵・穿孔し、加害が毎年繰り返されると枯死することもある。被害木は材部の傷から風折しやすく、穿入孔から腐朽菌が侵入して極度に衰弱させたり、材質を劣化させたりするので、被害初期の駆除対策が必要である。
穿孔性害虫の中には、マツノマダラカミキリのように、病害性の強いマツノザイセンチュウと共生関係を築いて生立木を枯らす種類もいる。
針葉樹につく一部のキクイムシ類では、台風や山火事により大量に発生した風倒木や火傷木、切り捨て・除間伐木を温床として繁殖し生息数を高めた虫が生立木に穿孔し枯死させることがある。
ハチ目のキバチ類は、産卵管を幹に挿し込み産卵する。幼虫は材中に孔道を掘って生活する。この虫の産卵を防ぐには被害木の除去並びに樹木を衰弱させないようにすることが肝要である。
ハエ目では、日本の九州でスギサイノタマバエがスギの樹皮下に穿孔し、樹皮をボロボロにし、材斑をつけるが、熱帯地域ではこのような害虫は発見されていない。