消火剤の利用

消化剤の発想・着眼点

消火剤とは、消防ポンプ車、消防飛行機等での消火活動時、真水や海水に数%加えることで消火能力を飛躍的に引き上げる添加薬剤である(ボネックス 2017、モリタ宮田工業 2017)。

石けん系の泡消火剤は、①泥炭地における浸透する速度が速く、②土の中の熱を冷却し、③少ない水で効率的に消火することが可能であり、④残留物が無く生態系に及ぼす影響が少ない、という特徴(図1)を有している(JICAとシャボン玉社 2017)。

図1.泥炭地における泡消火剤の浸透効果 (出所)完山と川原 2015を基に作成

消火剤のタイプと方法

初期消火用の投てき用消火用具として、13%の希釈で消火効力があり、原料成分が食品添加物(ボネックス 2017)や化学肥料に近いため、鎮火後に植物の成長を促す効果を有する消火剤も開発されている(ファイテック 2017a, b)。

また、林野火災の消活動に要求される様々な“機能 ”を発揮し、かつ“環境への影響”も最大限に配慮した「石けん系泡消火剤」も開発されている(北九州市立大学 2012)。

適用例

インドネシアには全世界の約10%の泥炭地が存在する。泥炭地は乾季になると乾燥して燃えやすくなり、一度火災が発生すると地中深くまで燃焼するため消火が困難となる。そこで、生態系に影響を及ぼさない新規天然系泡消火剤及び延焼防止剤等を用いた消防技術の普及モデル事業が東カリマンタン州のバリクパパン市において実施された(北井 2014)。泥炭土壌や褐炭土壌では浸透性が低いため水の冷却効果による消火効果は低いと考えられ、水の浸透性を向上させる泥炭火災用消火剤の開発が進められている(完山と川原 2015)。石けんを主成分とした環境配慮型泥炭火災用消火剤の1wt%水溶液による消火は、燃焼泥炭の温度提言効果が高く、鎮火に要する水量を半減することが可能であった(上江洲 2015)。

引用文献

  1. 石崎幸、上江洲一也 (2013) 石けんを主成分とした林野火災用泡消火剤の開発. 環境と消防第2巻 第1号 : 14-16.
  2. 上江洲一也 (2016) インドネシアの泥炭火災抑制技術の開発. 環境と消防 第5巻 第1号 : 2-5.
  3. (株) ファイテック (2017閲覧a) 山林火災用消火剤.
  4. (株) ファイテック (2017閲覧b) 投てき用消火用具.
  5. (株) ボネックス (2017閲覧) 消火薬剤APEXウォーター.
  6. 完山陽秀、川原貴佳 (2015) 石けんを用いた低環境負荷型泥炭火災用消火剤の開発. 環境と消防 第3巻 第1号 : 10-13. http://www.env.kitakyu-u.ac.jp/ja/shoubou/img/3_10-13.pdf
  7. 北井三正 (2014) 北九州からの国際協力:泥炭・森林火災対策. 環境と消防 第3巻 第1号 : 8-9. http://www.env.kitakyu-u.ac.jp/ja/shoubou/img/3_08-09.pdf
  8. 国際協力機構(JICA)、シャボン玉石けん株式会社 (2017) インドネシア国森林火災抑止に関する初期消火技術の導入案件化調査業務完了報告書. 117pp.
  9. http://open_jicareport.jica.go.jp/pdf/12287637.pdf
  10. モリタ宮田工業 (株) (2017閲覧) フォレックス粉末消火薬剤(林野火災用).
  11. http://www.moritamiyata.com/products/related/subrel05/re-10.html