森林再生テクニカルノート(TPPs)は、途上国の劣化が進んだ森林や開発後に放棄され荒廃した土地等において、効果的な森林の再生に大きく貢献する技術集です。
林野火災による被害を減らすためには、火災が発生しやすい状態にある森林を特定して、森林に入る人に注意を呼びかけたり、火の使用を制限したりするなどの対策が必要である。また、火災が発生した場合でも、早期に発見してまだ小さいうちに消火することが重要である(後藤ら 2006)。
林野火災の危険度は、一般的には「発火危険度」、「延焼危険度」、「消火の困難性」の3要素によって評価される。発火危険度は、乾燥等の自然環境も要因であるが、野焼き、火の不始末など人間活動が最も重要な要因である。延焼危険度は着火後の延焼可能性を示すもので、可燃物量、その乾燥度、また風向、風速などが大きな要因である。消火の困難性は、消火隊のアクセスの可能性や消火設備の有無などが大きく関係する(消防庁及び林野庁 2007)。
林野火災の発生要因は、28特定されており、気候的要素、地形的要素、現場の状況、過去の履歴及び人為的要素の5つに大きく分類される(表1)(Mhawej et al 2015)。
日本における火災気象通報の発表基準は、実効湿度、最小湿度、またこれらに風速等を加味して定められている。ただし、林野火災の発生危険を判断するための気候条件の指標としては、実効湿度を単独で用いることがシンプルでかつ精度上も問題ないとされる(消防庁及び林野庁 2003)。
実効湿度とは、木材等の含水量を表す指標であり、n 日間の毎日の平均湿度から以下の式により計算される。気象庁の乾燥注意報や火災気象通報で用いられる場合は、家屋の柱を前提に r=0.7 として計算されているが、林野火災発生件数と実効湿度との相関係数は、r = 0.5としたときが最大になることが示されている(消防庁及び林野庁 2003)。
He = (1 – r)(H0 + rH1 + r2H2 + ・・・ + rnHn)
= (1− r)H0 + rHe(1)
H0 :実効湿度を計算する日の平均湿度(%)
Hk :k 日前(k>0)の平均湿度(%)
He(1) :前日の実行湿度(%)
ただし、大規模林野火災ではいずれも強い風が吹いており、火災の拡大には大きく影響するものと考えられる。また、風速は局地性が大きく、林野火災の発生に関しても大きな影響を与えている可能性がある(消防庁及び林野庁 2003)。そこで、火災気象通報を、林野火災の危険度指標として、実効湿度に風速を加えて、段階的に発表することが林野火災防止に有効な方策であると考えられる。
通報第1基準:実効湿度60%、最小湿度50%、最大風速10m/s
第2基準:風速15m/s1時間以上
火災リスクを評価する火災情報システムとして、日本の火災情報システム、欧州森林火災情報システム、カナダの火災情報システム、インドネシアの火災情報システム及びマケドニアの森林火災情報システム等があり、一般公開されている(佐藤 2013)。
オーストラリアの国家火災庁では、気象庁の4日前のデータ(気象及びその他の環境条件)を用いて、火災危険度を公表している。また、Asia Pulp & Paper社では、植林地の各エリアに設置された気象観測機器の気象データを使用して、火災危険度を毎日更新し、火災危険度ボード(図1)を植林地の入り口や戦略的な場所に設置して注意喚起している(APP 2013)。
Asia Pulp & Paper (2013) Pencegahan, Deteksi dan Penanganan (in Indonesian). https://www.asiapulppaper.com/pencegahan-deteksi-dan-penanganan
Country Fire Authority (2012) About Fire Danger Ratings. http://www.cfa.vic.gov.au/warnings-restrictions/about-fire-danger-ratings/
Mhawej M, Faour G and Gerard JA (2015) Wildfire Likelihood’s Elements: A Literature Review. Challenges 6 (2), 282-293.https://pdfs.semanticscholar.org/13d4/465e1aab3d3b133d9a2e9d1610a05b45d437.pdf
後藤義明、沢田治雄、吉武孝 (2006) 林野火災の延焼危険度と早期警戒システムの開発. 森林総合研究所平成18年度研究成果選集.https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2006/documents/p22-23.pdf
佐藤英章 (2013) マケドニア森林火災情報システム(MKFFIS). 海外の森林と林業, No. 87, 20-24. 国際緑化推進センター./cgi-bin/ntr/documents/NET8720.pdf
総務省消防庁・農林水産省林野庁 (2003) 林野火災対策に係る調査研究報告書(要約版). 37pp. http://www.rinya.maff.go.jp/puresu/h15-3gatu/0326kasai2.pdf
総務省消防庁・農林水産省林野庁 (2007) 広域的な林野火災の発生時における消防活動体制のあり方検討報告書. 184pp.http://www.bousaihaku.com/bousai_img/houkokusyo/rinya2/r2all.pdf