植林は、自然には森林の回復が困難な劣化した土地での森林の造成に役立ちます。植栽樹種は、森林の復元(restoration)のためには在来種の植栽が求められますが、多くの場合、在来種の育苗・植栽技術に関する情報は不足しています。植栽には、樹種の適応性、種子(または挿し穂)の供給源、発芽と苗床の要件、施肥や灌漑の必要性などの情報が必要で、地域住民の知識が役に立つことがあります。
その点、世界の熱帯・亜熱帯で広く植栽されてきた樹種(ここでは汎熱帯造林樹種とよびます)は、種子の入手や育苗・植栽に関する情報へのアクセスも比較的容易で、劣化した土地への適応能力も優れたものが多いといえます。対象地域の在来樹種のなかにも、このような樹種があるかも知れません。住民の要望も含めて適当な在来種がない場合は、外来種から選択することになりますが、外来種はときに侵略的となって地域に問題を引き起こす場合もある注)ので、樹種の選択には十分な検討が必要です。
以下は、土地劣化のカテゴリー別に示した、植栽に適した樹種の主なものです。樹種名に下線が付されているものは、クリックすると詳しい情報をご覧いただけます。
注)メスキートProsopis juliflora (スーダンで侵略的外来種に指定されているほか、各地で侵略的と報告)、パーキンソニアParapiptadenia pterosperma(豪州で侵略的植物に指定)、アラビアゴムモドキVachellia (Acacia) nilotica (米国、豪州で侵略的と報告)などがある。
乾燥土壌 (乾期4~5ヶ月以上)
汎熱帯造林樹種(括弧内は主な原産地)
- フトモモ科:ユーカリカマルドレンシスEucalyptus camaldulensis(豪州), ユーカリアルバE. alba(豪州・PNG・チモール)
- マメ科:マンギウムアカシアAcacia mangium (豪州), カマバアカシアAcacia auriculiformis (豪州), ビルマネムノキAlbizia lebbeck (インドマラヤ~北豪州), グリリシディアGliricidia sepium (中南米), メスキートProsopis juliflora (中南米), ギンネムLeucaena leucocephala, タガヤサンSenna siamea (東南アジア), タマリンドTamarindus indica (東アフリカ), Vachellia (Acacia) tortilis(アフリカ), アラビアゴムモドキV. nilotica (アフリカ、中近東~インド亜大陸)
- センダン科:インドセンダンAzadirachta indica(パキスタン~ミャンマー)
- ウルシ科:カシューAnacardium occidentale(ブラジル北東)
- ワサビノキ科:ワサビノキMoringa oleifera(インドヒマラヤ)
- モクマオウ科:モクマオウCasuarina equisetufolium(東南アジア~豪州),カニンガムモクマオウCasuarina cunninghamiana Miq.(豪州東部)
アジア
アフリカ
中南米
オセアニア
湛水土壌(淡水)
汎熱帯造林樹種
アジア
塩性化(耐塩性樹種)
汎熱帯造林樹種
アジア
オセアニア
塩性湿地(河口汽水域)
泥炭地
- フタバガキ科:ショレア・バランゲランShorea balangeran (スマトラ、ボルネオ)
- テリハボク科:テリハボクCalophyllum inophyllum(東アフリカ~東南アジア、豪州、太平洋諸島)
- マメ科:ナンバンアカアズキAdenanthera pavonine (旧熱帯、中南米~フロリダに野生化)
- フトモモ科:カユプテMelaleuca cajuputi (ベトナム~豪州北部)
海岸砂丘(砂地、高波)