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<超>強酸性土壌にも適応できる樹種

2020年12月21日

キーワード

酸性硫酸塩土壌、環境造林

どんな記事?

酸性硫酸塩土壌はパイライトという硫黄鉱物を含み、土壌は時にpH3を下回ります。さらに、高濃度の硫酸とアルミニウムイオンが含まれるため、根の成長が阻害され草木のはえない不毛な土壌になります。海水の影響をうける沿岸域や河口域に多く分布しますが、内陸部でも地質時代の地層が開発により露出して問題になることがあります。詳しくは、酸性硫酸塩土壌の項を参照してください。

酸性硫酸塩土壌に植栽可能な樹種を選抜するため、森林総合研究所の田原恒氏らは、タイ南部のナラティワートおよびタイ中部のナコンナヨックの酸性硫酸塩土壌地帯で多様な樹種を植えて適応試験を行いました。また、アルミニウム過剰への耐性を比較するため、水耕栽培試験を行いました。その結果、Melaleuca cajuputiM. leucadendraおよびフタバガキ科4樹種(Shorea roxburghii, Dipterocarpus alatus, D. chartaceus, D. kerrii)はアルミニウムイオン濃度が1000µMの高濃度でも根の伸長は全く阻害されず、高いアルミニウム耐性を示しました。むしろ、高アルミニウム濃度で根の伸長が促進される現象がみられました。また、フタバガキ科4種はpH3の強酸性に対しても成長阻害がみられませんでした。この報告では、耐性を発現する生理的メカニズムも解説しています。一連の研究から、育苗時に酸性・高アルミニウム環境で育成すると生残率の改善になる可能性についても示唆しています。タイの在来種で試験を行った結果ですが、各地の強酸性土壌にも耐酸性の強い在来樹種があるかもしれません。

紹介記事

熱帯の酸性硫酸塩土壌に適応する樹種の選抜とその生理特性
田原恒(2009)海外の森林と林業 74:31–35

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