異なる地域のユーカリ(Eucalyptus camaldulensis)に適用可能な現存量推定式
2022年03月09日
キーワード
オーストラリア、ベトナム、相対成長式
どんな記事?
ユーカリ属は600種以上ありますが、ユーカリプタス・カマルドゥレンシス(Eucalyptus camaldulensis、以下ユーカリ)はオーストラリア全土に分布し、世界中で植林されている適応能力の高い樹種です。材の用途も広く支柱や薪、木炭のほか、赤味の強い色調から大径木は家具にも利用されています。
最近、森林の二酸化炭素固定量や吸収速度が注目されています。その推定のためには現存量を正確に推定しなければなりません。通常は樹高や胸高直径といった、大きさを表すデータを測定するとともに、その樹木を切り倒し、枝や幹、葉などの部位別の重量を測定し、大きさのデータから重量を推定する式を求めます。これを相対成長式といいます。重量の測定は労力と時間がかかります。樹の直径や高さを測って推定する方が簡単だからです。胸高直径の二乗×樹高と重量との関係などがしばしば用いられます。
ただし、同じ樹種を植えても植栽密度や土壌や気象条件によって成長が異なります。オーストラリアとベトナムの同じユーカリ植林地を比較したところ、同じ胸高直径でもベトナムの方が樹高が高いことがわかりました。そのため、大きさと重さの相対的な関係も異なり、オーストラリアの相対成長式はベトナムに適用できなくなります。
また、直径の測定に比べ、樹高の測定は時間がかかり、かつ精度が悪いものです。そこでオーストラリアとベトナムのデータを合わせて、胸高直径だけを用いて樹木の重量を推定する式を検討しました。さまざまな検討を行った結果、直径のべき乗式を使った相対成長式が一定の精度を保ってオーストラリアとベトナム共通で使えることがわかりました。例えば、幹重量=0.17×(胸高直径)2.12(r=0.95)となりました。この報告では著者の宇都木氏らの試行錯誤の検討過程が明らかにされ、なぜ当該の式を選んだかが理解できます。
森林の現存量を推定する相対成長式は樹種別、地域別に多数あります。現場ごとに相対成長式を作ると良いように思われます。しかし、伐倒して重量測定する作業は大変で、伐倒本数が少ないと精度が悪くなります。そのため、多くの樹種や調査地のデータを集め、多くのデータから相対成長式を作り、推定精度の向上と適用範囲の拡大を目指した研究も多くあります。今のところ世界共通で適用できる相対成長式はなく、宇都木氏らのような現場に基づいた推定式や適当な式を引用して推定されています。
紹介記事
Eucalyptus camaldulensis の現存量推定手法の提案 -オーストラリア半乾燥とベトナム熱帯モンスーンのデータを用いて-
宇都木玄,菅沼秀樹,山ノ下(山田)麻木乃,田内裕之,相川真一,小島紀徳,森川靖(2010)海外の森林と林業 78: 39-44