森づくり×カーボンクレジット・フォーラムは、
植林プロジェクトや炭素クレジットの創出を通じて、
気候変動対策やカーボンニュートラルの達成に貢献します。

炭素クレジット植林の仕組みについて知る⑦

企業が途上国で植林プロジェクトを実施する際には、数多く存在する炭素クレジット制度の中から、自社の目的やプロジェクト特性に適したスキームを選択する必要があります。本ページでは、今まで整理した各制度の特徴を踏まえ、炭素クレジットスキーム選定の考え方を紹介します


スキーム選定にあたって最初に整理すべきなのは、クレジットの用途求める信頼性水準(Integrity Level)です。近年は、透明性・追加性・永続性・二重計上防止などの要件を満たす高品質クレジットへの要求が高まっています。また、航空分野などではCORSIA適格性が重視されており、将来的な利用先も踏まえた選択が重要です。


企業の自主的な排出削減目標やネットゼロ目標への活用を主目的とする場合、主な選択肢は以下のボランタリー炭素クレジットプログラムです。

これらは、企業のネットゼロ目標やサプライチェーン排出のオフセットに広く活用されています。

スキームを選定する際には、CCPs適合性やCORSIA承認といった信頼性基準を満たしているかを確認することが重要です。国際的に説明可能な高品質クレジットを創出するためには、こうした基準への適合が重要な判断材料となります。

また、植林プロジェクトでは、炭素吸収量だけでなく環境・社会面の価値を評価する仕組みも活用されています。

これらの評価基準は、生物多様性保全や地域社会への貢献などのコベネフィットを可視化する際に有効です。

さらに、MRV(測定・報告・検証)の厳格性追加性(Additionality)の評価方法も重要な選定要素です。追加性とは、「その排出削減や吸収活動が、クレジットによる収益がなければ実施されなかったか」を示す考え方です。

例えば、Verra(VCS)では追加性評価ツール(VT0001、VT0008、VT0009)が整備されており、排出削減がクレジット収益なしには実現しなかったことを科学的に検証する仕組みとして国際的に評価されています。


コンプライアンス用途を想定する場合、日本企業が利用し得る主要な制度は、JCM(Article 6.2)PACM(Article 6.4 Mechanism)です。

JCMは、日本とパートナー国の二国間合意に基づく協力的アプローチです。創出された排出削減量は ITMOs(国際移転された緩和成果) として国際移転が可能であり、日本企業が相手国の排出削減活動に貢献する仕組みとして活用されています。また、GX-ETSとの整合性が高い 点も特徴です。

PACMは、UNFCCCが監督する国際的なクレジット制度です。創出された排出削減量は ITMOs として国際移転が可能であり、パリ協定第6.4条に基づく国際基準の下で運営されます。追加性、ベースライン設定、リケージ管理、モニタリング算定などについて厳格な審査が行われるため、国際市場での流通性が高い制度 と位置付けられています。また、CORSIAや各国の排出量取引制度(ETS)との親和性が高い ことから、将来的なコンプライアンス市場での活用も期待されています。


炭素クレジットスキームは、それぞれ重視する考え方や制度設計が異なります。そのため、プロジェクトの規模や土地条件、関係者の構成、将来的な活用目的に応じて適切なスキームを選択することが重要です。下表は、植林プロジェクトにおける主な判断項目と、それぞれに適した炭素クレジットスキームを整理したものです。

表7-1 植林プロジェクトにおける炭素クレジットスキームの選定指針

  • 小規模・コミュニティ主体のプロジェクト

住民参加や土地権利の明確化、生計向上への貢献を重視する場合は、Plan VivoGold Standardが適しています。特にPlan Vivoは、コミュニティ主体の運営や地域住民への利益還元を重視しており、小規模な植林案件との親和性が高いスキームです。

  • 大規模な植林・再植林プロジェクト

大規模なARR(植林・再植林)案件や、高度なMRVが求められる案件では、VCSが有力な選択肢となります。最新のARR方法論や高度なMRV手法が整備されており、国際市場向けの大規模プロジェクトで広く活用されています。

  • 国際市場との接続を重視する場合

将来的にITMOsの移転やコンプライアンス市場での活用を視野に入れる場合は、PACMJCMが選択肢となります。PACMは国際基準に基づく制度として、JCMは日本企業との親和性が高い制度として位置付けられています。


炭素クレジットスキームを選定する際には、単に制度の知名度や取得コストだけで判断するのではなく、プロジェクトの目的や求める価値に応じて総合的に検討することが重要です。特に、以下の4つの観点はスキーム選定における重要な判断軸となります。

① クレジットの用途

まず、創出したクレジットをどのように活用するのかを明確にする必要があります。以下に示した用途によって適したスキームは異なります。

  • 自主的な排出削減目標への活用
  • ネットゼロ目標への活用
  • コンプライアンス市場での活用
  • 国際移転(ITMOs)への活用

② 信頼性水準(Integrity Level)

近年は、高品質クレジットへの要求が高まっています。そのため、以下の観点から、クレジットの信頼性を確認することが重要です。

  • CCPs適合性
  • CORSIA承認
  • 追加性評価
  • 透明性

③ コベネフィット

植林プロジェクトでは、炭素吸収量だけでなく、生物多様性保全や地域社会への貢献も重要な価値となります。以下に示したようなコベネフィットをどの程度重視するかによって、適したスキームは異なります。

  • 生物多様性保全
  • 地域住民の生計向上
  • SDGsへの貢献

④ MRVの厳格性

MRV(測定・報告・検証)の方法や要求水準もスキームごとに異なります。また、追加性評価ツールの有無や第三者検証体制なども、クレジットの信頼性を支える重要な要素です。特に高品質クレジットを目指す場合には、MRVの厳格性や検証体制を十分に確認することが求められます。

また、プロジェクトの目的によっては、単一のスキームだけでなく複数の制度や認証を組み合わせることも選択肢となります。