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飼料確保に向けた土地生産性向上策

エリアクロージャーとカット&キャリー

植林地を家畜による食害から守るために最低限必要なことは、まず家畜の所有者が舎飼を行い、家畜を植林地に入れないことが鉄則となる。そして舎飼いの期間(圃場での収穫後、穀物残渣が残っている期間は圃場での放牧も行う)は粗飼料(主に草)を共有地から調達して、畜舎まで運ぶことが重要である。一般にカット&キャリー(Cut & Carry)と呼ばれる手法(写真2)である。放牧を避け、人が草の刈り取りを行うことで、家畜によるランダムな踏み荒らしや苗木や成木の摂食を避けることができる。

カット&キャリーは共有地のエンクロージャー(囲い込み)とセットで行うことが必要である。さらに効果を上げるために留意すべき点は共有地に対して最低でも1,2年の間、エリアクロージャー(いわゆる囲い込み。植生の天然更新を促すため人為や家畜の介入を排除すること)を行い、一定量の草本植生を確保することである。旧緑資源公団が年間降水量600m程度の実証圃場(ニジェール)で行った調査では数年間放牧規制を行ったエリアの飼料の乾重量は3.1t/haとなり自然牧野の2倍となった。これらを所謂「原資」として毎年植生の増加分を勘案して利用量のコントロールを上手く行えば、持続的な利用が可能となる。もし数年間のエリアクロージャーを行わず、再生の原資となる資源量が乏しい場合は、それに比例して翌年以降に利用可能な植生の再生量も乏しいものとなる。様々な研究が支持する通り、エリアクロージャーは植生量の増加にとどまらず、土壌流出の緩和、生物多様性の増加といった効果も生んでいる(Hurni, Hans, et al 2016)。

また共有地から飼料を入手する際には村毎の取り決めによって刈り取った草の量に応じた徴収金を課す、もしくは無断で植林地に入り飼料を入手したことが発覚すれば罰金を課すシステムを導入することで、村に収入をもたらすことが可能となる。これらの収入は学校建設や水場の整備など村の公共的事業に活用される他、共有地を監視するガードの雇用費用ともなる(Benin, S & Pender, J 2002)。

尚、本手法を実践するためには、共有地の利用方法について村単位で確固とした合意形成がなされ、且つ共有地の境界が明らかになっている等の条件が必要である。人口密度が低く、粗放な牧畜がある程度可能な地域では村内での合意形成がされにくく、導入が難しいかもしれないが、牧草種の散布や飼料木の苗木生産などのように追加コストが掛かかるわけではないので、検討する価値はある。

写真1. カット&キャリーで収穫した家畜用の飼料を運ぶ農民

未利用の荒廃地を牧草の生産地に

当該村の近郊に未利用地が存在する場合、エレファントグラス等の飼料用の牧草を栽培することは飼料増産の大変有効な手段である。しかし導入に向けては、

  1. 土地に関して特定の個人や世帯もしくは村全体としての所有権や排他的利用権が確立していない場合が多いこと
  2. 飼料用牧草の種を購入するためのコスト負担が難しい
  3. そもそも家畜の餌を自ら生産するという発想が馴染まないこと(海外林業コンサルタンツ協会 2006)

等が障害となりがちである。特に③が主な原因となり、種の購入代やそこから採取できる飼料の量、及び飼育できる牛の頭数と牛の市場価格を勘案して利益が出ると計画として説明できたとしても、彼らの理解を得ることは困難と想定される。よって、NGO等が植林事業と並行して実験的に飼料栽培を行い、その成果を十分に示すと同時に、発想の転換を促す啓蒙努力が必要となるであろう。

飼料木の植樹

灌木の実や葉はヤギ、ラクダにとって乾季・雨期を問わず重要な飼料資源であり、牛、羊にとっても草本類が枯渇する乾季においては重要な飼料となる。半乾燥地において有望な飼料木の例として以下(表1)を示す(調査対象国:ニジェール)。これらの樹種の植樹は放牧圧力の軽減のみならず移牧路、農地侵入防止用生垣といった構造物構築の目的で行うことは大変有効であり、村落民自身のニーズに従って自ずから実践しているケースも多い。尚、飼料木の中には、アカシア・アルビーダ(Acacia albida)など農地に対する施肥効果が確認されている樹種もあるが(Ndoye, I., et al. 1995)、農地内に飼料木を植林する場合は、農作物面積が減少してしまうことも念頭に置き、飼料木と農作物のバランスを考慮する必要がある。

表1.飼料木と家畜の嗜好性
出典:H13年サヘル地域砂漠化防止対策技術集(旧・緑資源公団、現国際農林水産業研究センター)