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家畜からの物理的保護手段として

植林地(特に苗木の移植後おいて)において野生シカや家畜の食害対策として可能な物理的対処方法は植林地に保護用柵(フェンス)を設けて家畜の侵入を排除するか、個別の苗用に籠もしくは囲いを設けることであるが、どちらの手段を選択するかは単位面積当たりの植生密度や生存率に与える効果、及びその経済性等を勘案して判断する必要がある(Trout, R & Brunt, A 2014)。まず、フェンスについては、途上国では先進国同様に金属製のポールと有刺鉄線を使って広大な範囲を囲むことは現実な選択枝とはなり難い。地元で入手できる木材、枝などの資材を用いて、狭いエリアをカバーする保護柵を構築することが主な対処方法となるであろう。乾燥・半乾燥地の村落では所有する農地や家屋の境界を示す柵を構築するために主にアカシア属の有棘性の灌木の植栽や、枝を組み合わせたものを設置することが行われており、小規模植林地の保護柵として同様のものが適用可能である(写真1左)。また木もしくは竹の籠によるシェルターや囲いは特に植栽密度が低いアグロフォレストリーを行う際に果実等の有用樹種の保護に適用することは可能且つ有効な手段である(写真1右)。

どのような保護対策を選択するかについては、それぞれがどの程度の効果を持つかが重要な決定要因となる。一例として以下、緑資源公団による調査報告(表1)を示す。

表1.保護タイプ別効果の比較調査結果(調査対象国:ニジェール)
保護のタイプ 試験樹種 補修頻度 生存率
1997年 1998年
全体 有刺鉄線 Combretum aculeatum 頻繁 95% 87.7%
個別囲い 木の籠 Combretum aculeatum 96.2%
3種平均
96.2%
個別囲い 金属籠 Combretum aculeatum 92.6%
個別囲い ミレット茎の籠 Combretum aculeatum 頻繁 63.0%

出典:緑資源公団(2001)より抜粋

参考文献

  • 緑資源公団(2001)サヘル地域砂漠化防止対策技術集