ゲル状消火剤

ゲル状消火剤の発想・着眼点

大規模な森林火災では航空機による上空からの散水消火が行われるが、高高度からの散水では放出された水が霧状になって風に流されてしまい消火効果が低く、低高度における消火活動は火災に巻き込まれる危険を伴い墜落事故なども発生している。そこで、高高度から安全に消火水を火災に投下するために、消火水を固体化することによって、投下位置を正確に予測することを可能にするものがゲル状消火剤(図1、図2)である(イルカカレッジ 2017b、鳥取大学 2017)。

図1.航空機消火における水とゲル状消火剤の比較
図1.航空機消火における水とゲル状消火剤の比較
(出所)イルカカレッジ 2017b
図2.ゲル状消火剤
図2.ゲル状消火剤
(出所)イルカカレッジ 2017b

適用地域

乾燥、半乾燥地域及びモンスーン等の乾季のある地域。

ゲル状消火剤のタイプと方法

高高度から安全に消火水を火災に投下するために、消火水を固体化し100g 程度に細分化出来る、「ゲルパック消火剤」が開発されている(イルカカレッジ 2017b)。消火水を固体化することによって、投下位置を正確に予測することが出来る。また、その予測システムを地図データとマッチングさせた「管制システム」、及び投下位置を逃さずに投下できる、「投下装置」を消火航空機に搭載することによって、迅速で確実な消火を行うことができる。

ゲル状消火剤は、乾燥状態で保管でき、消火活動時には水を加えることで即座にゲル状消火剤として使用できる。ゲル化することにより、消火剤を空中に霧散させずに効果的な消火が行える(イルカカレッジ 2017b)。

また、保水性のあるゲル状消火剤は燃えていない場所に落ちても火の延焼を防ぐ。火災の進行を遅れさせることができる(ジャカルタ新聞 2017)。

適用例

インドネシアにおいて、広大な泥炭地に広がる原生林と植林地火災の拡大を防ぐため、ヘリコプターからゲル状消火剤を投下する消火試験が実施されている(イルカカレッジ 2017a、ジャカルタ新聞 2017)。

参考文献