森林再生テクニカルノート(TPPs)は、途上国の劣化が進んだ森林や開発後に放棄され荒廃した土地等において、効果的な森林の再生に大きく貢献する技術集です。
林野火災は、その発火地点・延焼速度及び拡大化等の諸条件から、火災の早期覚知の困難、現場到着の遅延から生ずる初期消火の困難及び水利の不便等もあり、一般火災に対する消火活動とは著しく異なるので注意が必要である。そこで、効果的な消火活動及び作業員の安全を高めるためにも、林野火災の特徴を理解し、火の動きを予測することが大切である(森林火災対策協会 2011)。特に、林野火災では、斜面に沿っての急速の拡大と飛び火の発生が火災拡大の原因になることが多い(消防庁消防研究所 1988)。
火の動きは延焼速度(1時間当たりの火の移動距離)で表すことができる。火災の延焼速度は、地形、風速、可燃物のほか延焼方向や飛び火の発生状況にも影響される。斜面上では、延焼速度は、斜面上方、斜面側方、斜面下方の順に大きい。火災の延焼速度は、火災の中心部で特に大きくなる。可燃物が乾燥していて可燃物量が多いときにはこの傾向が顕著に現れる(森林火災対策協会 2011)。
無風下であっても、その上空と周辺に特有の立体的な気流が発生する。上空には20m/秒以上に及ぶ上昇気流が、平坦地の地上付近では周囲から火災の中心に向かう火事場風が発生する。一方、斜面上の火災では、斜面下方から上方に向かう気流が卓越し、その気流に煽られて火災は主に斜面上方に拡大する。なお、斜面上では平地と比較して障害物の影響が少ないことから、低地では風が弱くても高所では強い風がしばしば吹く傾向がある(森林火災対策協会 2011)。
火災が斜面上を燃え上がる場合には、火先線はほぼ楕円形で拡大する。燃え下がる場合には火先線は直線状に拡大する。平坦地で、風があるときの火災は、斜面上の火災と類似しており、火先線は楕円形になり、風下方向に急激に伸びる(図1)(森林火災対策協会 2011)。
山の周辺の火の動きは、周辺の気流に影響される。風上側の斜面上で火災が発生すると、火災は斜面上方に拡大するとともに側面にも水平方向に拡大する。側面に回り込んだ火災は風下側斜面上に拡大すると下方から上方に拡大する(図2)(森林火災対策協会 2011)。
風下斜面では地形の影響で生じた渦流と火事場風の相互作用により火災旋風が起きることがある。火災旋風は竜巻状の旋回流であり、燃焼物を回転させながら巻き上げて上空で周囲に飛散させる(森林火災対策協会 2011)。
飛び火とは、飛び散った火の粉が落下して離れた部分で燃え出す現象である。飛び火は火災発生の原因にも火災拡大の原因にもなり、林野火災の拡大過程のいろいろな段階で発生し、火災の拡大を早めたり、消火活動に各種の障害を与えたりする(消防庁消防研究所 1988)。