防火帯

防火帯の発想・着眼点

乾季のある地域において、植林地を火災被害から守るために、防火帯は必須であり、初期段階から計画されるべきである。防火帯によって植林地はブロック毎に分割される。様々な植林地によりブロックのサイズは異なるが、ひとブロックのサイズは25haが最適、最大でも30haと推奨している。防火帯は、道路、地形線(尾根・谷)、水路又は緑地帯により構成される(FA Cambodia and DANIDA 2005)。

防火帯は植林地内へのアクセスを確保する道路としても機能する。火災時には、防火帯を通って消火地点に到達し、消火活動を実施する。そのため車両が通行するために必要となる幅等を確保する必要がある(Leask and Smith 2011)。

図1.植林地における道路兼防火帯の配置例

防火帯のタイプ

推奨される防火帯の幅は、6m~30m以上まで様々であり、大きい幅の防火帯は防火効果が高い半面、維持管理が困難であるが、それでも火が超える場合もある(FA Cambodia and DANIDA 2005)。西オーストラリアの植林地の場合は、境界外側の防火帯の幅は15m、内側の防火帯の幅は少なくとも6mが推奨されている(Leask and Smith 2011)。

林野火災の自然焼け止まりは,地形からみると傾斜のきびしい稜線あるいは風下斜面であり、植生からみると針葉樹林から広葉樹林に変わる箇所に現われる(消防庁消防研究所 1988)。このように既存の自然立地条件を考慮して、又は、人工の道路等を活用して防火帯を設置し、必要に応じてその幅を広げることが推奨される。防火帯の種類としては、以下のタイプ分けができるが、造成・維持費用及び延焼防止効果を考慮すると、緑地帯や多目的及び生産的な防火帯が推奨される(FA Cambodia and DANIDA 2005)。

  1. 自然の防火帯・・・小川、河川、尾根(図2)及び谷等。
  2. 既存の人工防火帯・・・道路、歩道及び水田等。
  3. 既存の緑地帯・・・森林及び農地、特に湿った河川林。
  4. クリーン防火帯・・・除草又は耕作により植生を完全に除去する。チガヤが乾燥して茶色になって可燃性が高まる前に刈り取る。ただし、多大な労力を必要とし、非生産的であるため、恒久的な防火帯としては推奨できない。
  5. 火入れ防火帯・・・刈り取った草を防火帯の中央部に集めて焼却する。防火効果が高い。ただし、植林地内部への延焼に注意する必要がある(図3)。
  6. 緑の防火帯の造成・・・密植(1m×1m)して早期の林冠閉鎖を図り、最大の可燃物であるチガヤを被圧する。
  7. 生け垣防火帯の造成・・・乾季でも葉を落とさない常緑性の耐火性の強い樹種で生け垣を造成する。
  8. 多目的防火帯・・・防火帯において食料又は木材を生産する。
図2.尾根に造成された防火帯
図3.平地に造成された火入れ防火帯

引用文献

  1. Forestry Administration Cambodia and DANIDA (2005) Protection Against Fire, Appendix 5: Tending the plantation, in “Guidelines for site selection and tree planting in Cambodia”. Tree Seed Project : 74-75.
  2. http://www.treeseedfa.org/guidelines_site_eng.htm
  3. Leask J and Smith R (2011) Guidelines for Plantation Fire Protection. Bush Fire and Environmental Protection Branch. Department of Fire and Emergency Services, Western Australia. 32 pp.
  4. 消防庁消防研究所 (1988) 林野火災の飛火延焼に関する研究. 消防研究所研究資料第21号.