火災の早期発見

火災の早期発見の発想・着眼点

火災が発生した場合には、早期に発見してまだ小さいうちに消火することが重要である(後藤ら 2006)。目視による発見方法に加えて、近年では、カメラ、GPS、スマートフォン、ヘリコプター及びドローン、並びに、GIS及び衛星画像等を活用した森林火災の早期発見システムの開発が進んでいる。

生育ステージでさがす

火災の早期発見のタイプと方法

(1)目視による発見

目視による山火事の発見は、実績のある火災検知方法であり、全体的な防火システムの要点である。一般的に、目視場所は視界が良い丘陵地などの高い地点に設置される。自然条件では適切な高さが得られない場合には、監視塔を建てることで視認性が改善される。植林地全体に目視ネットワークを構築することにより、火災を早期発見することができ、消火開始までの時間を短縮し、火災被害を抑え、消火コストを削減することができる(FAO 2002)。

(2)監視カメラの活用

富士通は、監視カメラがとらえた映像を画像処理し、森林火災を高速かつ高精度に検出する技術を開発。当技術により、森林火災の早期発見と異常事態の監視が期待できる。具体的には、監視カメラで半径5km先までの映像をリアルタイムで撮影し、離れた場所にある監視センターに無線で送信。専用のシステムで映像を分析し、クリアになった煙と炎の映像をもとに、その動き方や色、形状などをさらに詳細に解析し、森林火災かどうかを判定することができる(FUJITSU JOURNAL 2014)。

(3)赤外線カメラ、GPS・スマートフォンの活用

NEC・住友林業は、火災発生の検出から発生場所の特定、消火隊員の部隊運用までをトータルに支援する森林火災監視・即応システムを開発した。赤外線カメラにより異常な高温を自動的に検出し、その撮影位置情報と合わせて警報を発報することにより火災発生を早期に検出し消火隊員へ迅速かつ的確に指示する。また、GPSを用いた位置動態管理技術をスマートフォンに搭載し、消火隊員の活動状況をタイムリーに把握することにより、森林火災の被害軽減に貢献することができる(NEC・住友林業 2017)。

(4)ヘリコプターやドローンの活用

林野火災の被害範囲や消防活動を把握するための方法として上空からの映像情報を活用することが考えられる。夜間やヘリコプターでは危険な場所を考慮すると、画像の収集方法として無人航空機(UAVUnmanned Aerial Vehicles)、ドローンを活用した山火事の早期発見及び早期消火システムの開発が進んでいる(NNA ASIA 2017、消防庁及び林野庁 2007)。

(5)GIS及び衛星画像等の活用

GISや衛星画像等を活用することにより、山火事の早期発見システムの開発が進んでいる(消防庁及び林野庁 2007)。インドネシア環境林業省が開発したSIPONGI システムは、TERA/AQUANPP及びNOAA衛星の観測データを用いて、HotSpot、風速及び風向き等を準リアルタイムで検知・把握し、web上で一般公開するシステムである(インドネシア環境林業省 2015)。また、一般市民からの火災情報の通報をシステムに反映することもできる。なお、SIPONGI システムは、HotSpot の全体像を把握するためには非常に有用なシステムであるが、森林火災の防止に対しては、情報の更新頻度や正確な位置情報(地図の解像度)等の課題が指摘されている(JICA・シャボン玉せっけん2017)。

引用文献

FUJITSU JOURNAL (2014) 豊かな森林を消失から守れ!森林を監視し、火災をいち早く発見. http://journal.jp.fujitsu.com/2014/10/21/01/

NAA ASIA (2017) スペイン、森林火災の夜間監視にドローン導入へ. https://www.nna.jp/news/show/1625557

インドネシア環境林業省 (2015) SiPongi. Karhutla Monitoring Sistem. http://sipongi.menlhk.go.id/home/main

国際協力機構(JICA)、シャボン玉石けん株式会社 (2017) インドネシア国森林火災抑止に関する初期消火技術の導入案件化調査業務完了報告書. 117pp.http://open_jicareport.jica.go.jp/pdf/12287637.pdf

後藤義明、沢田治雄、吉武孝 (2006) 林野火災の延焼危険度と早期警戒システムの開発. 森林総合研究所平成18年度研究成果選集.https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2006/documents/p22-23.pdf

総務省消防庁・農林水産省林野庁 (2007) 広域的な林野火災の発生時における消防活動体制のあり方検討報告書. 184pp.http://www.bousaihaku.com/bousai_img/houkokusyo/rinya2/r2all.pdf

日本電気株式会社・住友林業株式会社 (2017) インドネシアで森林火災監視・即応システムを用いた火災対策支援サービス普及促進事業を開始.http://jpn.nec.com/press/201708/20170822_01.html

http://sfc.jp/information/news/2017/2017-08-22.html