森林再生テクニカルノート(TPPs)は、途上国の劣化が進んだ森林や開発後に放棄され荒廃した土地等において、効果的な森林の再生に大きく貢献する技術集です。
乾燥地の多くでは、多量の潅水を行う手法で緑化が行われている。しかし、貴重な水を消費し永続的な管理の必要なこの手法では、自立した自然形成は望めない。そこで、根系を地中深くまで伸長させ効率よく土壌中の水分を吸収させることで、樹木が乾燥地でも自立して生存できる技術として「保育ブロック」を開発した。保育ブロックは、土や有機物を混ぜ合わせ筒状に成形した土壌ブロックであり、筒状の形状により植物の根を地中深くまで誘導することができる。また、粘土や肥料を配合することで、樹木に効率よく水分や養分を供給し、発芽や初期生長を保護し、根系の発達を促進させることができる(写真1)。
最も多く使用されている保育ブロックの形状は、高さ10~15㎝、外径7~9㎝、内径3㎝の筒状である(写真2)。使い方は、穴に種子を入れた保育ブロックを埋設する方法と、穴の中に播種・育苗し、苗木となったもの(保育ブロック苗;写真3)を植栽する方法がある。
年降水量が600㎜~800㎜の中国河南省の荒廃山地に、ヤマモモ(Prunus dviana (Carr.) Franch)を入れた保育ブロックの埋設とコノテガシワ(Playtcladus orientalis (L.) feanco)の保育ブロック苗の植栽を行った。この場所は、かつて20万本のコノテガシワのポット苗が植栽されたが、活着率は10%以下であった。
植栽後一切の水やりを行わなかったが、5年後には68.9%のヤマモモと、91.8%のコノテガシワが活着した。また、ヤマモモの平均樹高は223㎝、コノテガシワの平均樹高は172㎝まで生長し、針広混交林の造成に成功している(写真4)。
また、中国内モンゴル自治区での試験では、保育ブロック苗とポット苗の根系を比較したとき、ポット苗の根系が横方向に広がっていくに対し、保育ブロック苗の根系が縦方向に深く伸長していくことが確認されている(図1)。