森林再生テクニカルノート(TPPs)は、途上国の劣化が進んだ森林や開発後に放棄され荒廃した土地等において、効果的な森林の再生に大きく貢献する技術集です。
灌漑やマルチングと同じ効果をもつ装置が海外の2社から販売されている。Tree Tray®は植栽時に苗木を覆うように設置し、地面からの蒸発を抑えるマルチング効果と、雨を苗木の根元に集めるマイクロキャッチメントの効果を狙っている。これにくわえてWaterboxx®は貯水タンクが組み込まれ、底の穴から毎日灌水するので、水瓶灌漑と同様である。こちらは砂漠のような乾燥地用に開発され技術である。どちらもプラスチック素材の工業製品であり、コスト面から10回以上繰り返して使うことを推奨している。
Tree tray®は南アフリカ共和国のTree Trays社1)が販売している。オランダのGroasis社2)はwaterboxx®(growboxx®も関連製品)を販売している。前者のTree Trayの形状は長方形の箱型で、底がなく蓋はロート状にくぼみ、真ん中に穴がある。穴に植栽し、雨水や灌漑水を苗木の根元に集める。箱のふちを地面に埋め込み、装置内の地面から蒸発した水を再び地面に戻す。これにより周囲よりも湿潤な状態を維持し、苗木周囲の雑草の繁茂を防ぐ。
Groasisのwaterboxx®は貯水タンクが組み込まれ、装置に様々な工夫がなされている。植栽や設置方法にも細かな指示がある。外観は円形でTree Trayと同様、蓋に降った雨水や灌水を集めるが、いったん貯水タンク(16リットル)に貯める。タンクの底に導水のひもが付いていて、毎日約50ミリリットルの水が染み出る。
植え付け時には20~40リットル散水し、中央に苗木2本を植え、装置をかぶせる。タンクからの浸透水は徐々に下方に浸透し、地下数mにある湿った土層に達すると毛管現象で水が上がってくる。活着した苗の根が地下からの毛管水に達すると成長がよくなるので装置を外す。その間、半年から1年という。
乾燥地では灌漑により地下水位が上がると蒸発により塩類化する心配がある。waterboxx®はそれを避ける工夫や管理指示がある。装置底面で蒸発は遮断されるが、装置の周囲から蒸発するので、周囲は耕起して土壌の毛管を切り、地下水の上昇を抑える。中央の穴の苗木にも蒸発遮断のシートをつける。装置を外すときは麻布を苗木の周囲に敷き、土をかぶせて過剰な蒸発を防ぐよう指示されている。
水タンクの副次的な効果として、日中の高温や夜の低温を緩和する、苗木周囲の微気象を平準に保つ、強風や土壌侵食、ネズミなどによる食害等を防ぐ、などがある。
苗木の植え付け方も指定がある。枝や主軸を剪定して高さ10cm程度に刈りこみ、蒸散を防ぎつつ新しい葉の展開を待つ。根の方はポットの底を約3cmを切りとって、巻根を除去し、新たな直根の成長を促す。通常、3か月以内に直根が伸び活着するという。
ホームページのマニュアル3)には、植栽方法や管理について写真付きの解説がある。
ホームページによれば、Tree Trayは1個R158(約1440円、2018年1月)であるが、R87にディスカウントされている。Waterboxx®は1個USD20(約2220円、2018年1月)である。どちらも繰り返し10年程度は使えるので、コスト面から繰り返し使うことを推奨している。
使い捨ての装置ではないので、長期実施計画のある植林プロジェクトに適している。また、装置が設置されている間は、定期的な管理が必要である。
なお、Waterboxx®の原理を参考に、古タイヤで類似の装置を作る試みが発表された4)。実際の効果は不明であるが、安価でユニークな試みである。