森林再生テクニカルノート(TPPs)は、途上国の劣化が進んだ森林や開発後に放棄され荒廃した土地等において、効果的な森林の再生に大きく貢献する技術集です。
紙おむつなどに使われる超吸水性高分子材を土壌の保水材として利用し、乾燥地や半乾燥地における農林業の水管理に役立てようとするものである。林業が緑化関係では、植林に際して、超吸水性高分子材を土壌と混合することにより、乾季においても土壌を湿潤な状態に保ち、苗木の活着率を高めたり、苗木の成長を促進したり、給水量や頻度を減らしたりすることが期待される。
超吸水性高分子は英語でsuperabsorbent polymer (SAP)、Hydrogel等と呼ばれる。その吸水性を乾燥地の農業及び林業における土壌改良材としての利用が期待されている。SAPの原料は大半がアクリル酸やアクリルアミドが重合した高分子の石油化学製品である。1990年代は紙おむつと同じナトリウム(Na)型のSAPであったため根の成長阻害を起こすことがあったが、最近は植物用としてカリウムやカルシウム型に改良された製品が販売されている。SAPは農業や園芸での利用が多いが、林業用製品もあり、2000年以降、研究報告や製品の種類が大幅に増加している。土壌改良材としてのSAPは毒性がなく、環境中での安全性が確認されている。
SAPに蒸留水を加えると自重の数百倍の水を吸収する。ただし、土壌と混ぜた場合の吸収量は半減し、また塩分や肥料分を含む水の吸水量はさらに少なくなるので、蒸留水の場合の数分の一程度の保水機能と考えた方がよい。さらに、吸水と脱水を繰り返すと効果は低下していくので、長期的に安定した効果は期待できない。
SAP施用の効果は土壌によって異なり、粘土質の土壌よりも砂質の土壌の方が大きいという報告が多い1)。砂質土壌は保持できる有効水(植物が利用できる水)が少ないため、SAPによる保水効果が大きいと考えられる。また栽培試験の結果から、SAPが吸収した水分は大半が有効水とされる。SAPを施用した土壌は気相が減少し、透水性が低下する場合がある。排水の良すぎる砂質土壌にSAPを施用し、雨水または灌漑水の滞留を長くすることが期待される。SAP製品の違いや土壌等により分析結果が異なるので、実際の現場における有効性の判断が重要である。
SAPは多くの製品が販売されており、製品によって多少性状は異なるが、基本的な性質は変わらない。施用法は苗直下や苗の周辺に、粉体または加水状態で投入する。施用量は通常、土壌重量の1%以下で十分とする例が多い。製品の種類や植栽樹種、土壌の性質によって効果は異なるので、あらかじめ小規模な試行が推奨されている。
植林におけるSAP施用コストと効果の関係の報告はみあたらないが、産業植林でも利用されていると聞く。コストを考えると現実的には1ha当たり20~40kg程度とされ、SAPの単価が1㎏当たり3~10ドル程度なので数万円の追加コストが必要になる2)。
SAP利用技術の確立はまだ途上であるが、活着率や初期成長の向上など植え付け初期に効果を発揮する可能性がある。ただし、保水できる量には限界があるので、乾季が長い地域での適用には効果を期待しすぎない方がよい。今後、現場の実証的な試験事例の収集と分析が望まれる。