森林再生テクニカルノート(TPPs)は、途上国の劣化が進んだ森林や開発後に放棄され荒廃した土地等において、効果的な森林の再生に大きく貢献する技術集です。
乾燥地、半乾燥地における特殊な植栽方法としてwater jar reservoir と呼ばれる方法がある。これは苗木への灌水方法として、小さな穴の開いた素焼きの水瓶(ポット)を植栽樹木のそばに埋め、点滴灌漑のように穴から染み出す水で灌水する方法である。本来、アグロフォレストリや農地の周囲に日陰木を植えるときなど、人が管理できる範囲に適用される。
植栽樹木の傍らに、深さが40~50cm、直径25~30cmの素焼きのポット(water jar reservoir)で、底の片側に小さな穴をあるものを埋め込む。ポットの口は地面から出しておき、ここから水を入れて徐々に水か染み出るように考案されたものである。
灌水用の穴は底から4cm程度の高さに空ける。穴のサイズは土壌や植栽地の条件により異なる。砂質土壌では小さく鉛筆の太さの半分程度、粘土質の土壌は鉛筆の太さ程度の穴を数個並べてあける。
本方法の利点としては次のようなことがあげられる。植栽木のまわりの土が固まったり、クラスト(地表が乾燥して硬くなる)ができたりすることがない。根系が常に湿潤な状態に保たれ、乾燥と湿潤を繰り返すことがなく、成長が持続する。土壌からの蒸散が起こらないので、灌水量を減らせる。初期の1,2年の成長は2倍近くになり、活着率も向上する。根はツボの周りに沿って下方に伸長する。
一方、欠点としては、以下の点である。植付けのコストが上がる。植栽作業に時間がかかる。素焼きのポットが壊れないよう、また、ポットが砂やごみで埋まらないように管理しなければならない。
ケニアの社会林業技術協力プロジェクトでは40~50cmに切断した塩ビパイプ(直径約5cm)を植栽木の根元近くに差し込んで、これに生活排水などを適宜に注入する方法や、空き瓶やペットボトルに水を入れ、植栽木の根元近くに逆さに押し込んで徐々に水がしみ出るようにするする方法などが考案された。前者はコストにやや問題はあるが、いずれの方法も、屋敷周りの植栽木の活着・成長促進に有効な方法であった2)。